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フランス「農と食」(2) 三つ星レストランと日本人農家

パリにあるミシュラン「三つ星レストラン」と言えば、世界の富豪や著名人が利用する最高級レストランである。ここで使われる食材は、世界最高峰と言える。
パリ西部にあるノルマンディーは、豊かな農業地帯で、お洒落な農家の建物が点在する。霧に包まれた先には広大な穀倉地帯が広がる。この高台に世界最高峰レストランに野菜を納めている痛快な日本人農家Yさんが住んでいる。初めて訪ねたのは2004年1月。その時の様子はe-yasai.com「NEWS」で紹介したことがある。

ノルマンディー

Yさんは30数年前パリに渡り、盆栽を作って生計を立てていた。その頃は日本の絶頂期で日系企業の支店や営業所が次々と進出、盆栽がフランス人にも受け入れられて繁盛していた。ところがバブル崩壊で次々と日本人が引き揚げ、盆栽に見切りを付けた。次に取り組んだのは「おいしい日本野菜」。日本に帰国する度に種苗会社を訪ね、種子を手に入れてフランスに戻った。住宅付きで農地(約20㌃)を借り、小さなハウスを建てた。自然循環型有機農業を目指し、鶏糞堆肥を作るため地鶏を飼った(圃場画像手前)。当時約50種類もの野菜を試験し、土壌と気候に合う野菜を模索した。大根、人参、小蕪、聖護院大根、牛蒡、里芋、枝豆、トマト・・・色々なタネを蒔いて育ててみた。2004年に訪ねた時の状況を少し書く。

牛蒡栽培用塩ビ菅

【牛蒡】

ハウスを覗いて強烈な印象が残っているのはこの塩ビ菅である。1月の寒さの中で牛蒡の双葉が力強く芽吹いていた。「なんで塩ビ菅?」咄嗟には理解出来なかったが彼の説明を聞いて納得した。この地は緯度が高く、雪が少ないので土が凍結し、5月下旬にならないと土が乾かない。土質も重く、とても牛蒡を作る環境には無い。しかし、日本の野菜に牛蒡は欠かせないと考え、長い塩ビ菅に細かく砕いた土を詰め、タネを蒔いた。太さはともかく、香り豊かな美味しい牛蒡が育った。

枝豆

【枝豆】

(土)(日)を利用して自分の作った野菜を使ってレストランを開こうと目玉になる野菜を考えた。時期は夏、フランスには枝豆は無いなと思い、タネを蒔いた。しかし、生育が悪く、莢が付かない。色々調べた末、ここの土には根粒菌がいないことを知った。そこで北海道から根粒菌を取り寄せ、タネに塗して蒔いた。効果は絶大、見事な美味しい枝豆が育った。彼はレストランの人気メニューと言っていた。
秋に収穫した大豆は日本料理店の湯葉や豆腐の材料として売った。彼が作った自家製味噌も試食させて頂いた。

里芋

【里芋】

伝統的な和食(煮物)には、里芋は欠かせない。多分、フランスで作っているのはここだけだろう。

訪ねたのはスタートしてまだ3~4年経った頃と思うが、大きな試練が待ち受けていたと言う。パリの街は駐在員や日本人観光客が減り続け、売り先の日本食レストランの閉鎖が相次いだ。市場流通や宅配もトライしたが、パリの交通渋滞は仕事にならず、継続は致命的と映った。日本の様に気軽に宅配便が使える便利社会ではない。
いろいろ作って行く中で「小蕪」がシャンゼリゼ-通り裏で日本人が経営するフレンチレストランで評判になった。あちこちから注文が舞いこみ、美味しい物を作れば必ず売れると自信を持った。しかし、この時点では採算の採れる販売方法については未解決であった。

それから、7年の歳月が流れた。

ノルマンディー豊かな農業地帯

農園の回りの風景も畑の様子も殆ど変わっていなかった。ビニールハウスと鶏舎は以前より少し広くなっていたが昔のままの雰囲気だ。笑顔で迎えてくれたYさん(画像中央)は相変わらず若々しくお元気そうだ。
早速、質問してみた。

ノルマンディー日本野菜農家1 ノルマンディー日本野菜農家2 ノルマンディー日本野菜農家3 ノルマンディー日本野菜農家4 ノルマンディー日本野菜農家5 ノルマンディー日本野菜農家6 ノルマンディー日本野菜農家7
■昔と殆ど変わっていないですね?
変わらないですよ。ハウスが少し増えたけど全部で1.000㎡(1反歩)です。
■作っているモノは?
見たとおりです。色々な野菜をチョコチョコですよ。30種類位はあるね。
■作り方、考え方は?
変わらないです。鶏を飼って、鶏糞で堆肥を作り、化学肥料、農薬は使わない。有機農業で安全、美味しいがコンセプトです。
■看板商品の小蕪は?
今は看板商品ではありませんが、相変わらず評判は良いです。食べてみますか・・・
(試食した同行者から驚嘆の声!)
■凄い!何でこんなに美味しい小蕪が出来る?
私にもよく解らない。特別なことは何もしていない。日本から持ってきたこのタネが、ここの気候風土にピッタリ合っているのでしょう。固すぎず軟らかすぎず、生で食べても非常にジューシーで、上品な甘みとコクがある。冬は果肉が締まってスープで煮込んだら最高の味になる!高級レストランのあるシェフは、この味はここの小蕪しか持っていないと言い切ります。
■トマトはどうなりました?
それが・・・研究を重ねて今は「三つ星レストラン」のシェフ達に認められて8店に限定して納めています。他店からも注文が殺到していて3年待っても順番が来ませんよ・・・(笑い)。
「割り増し価格で買うから・・・」と言う店もありますが、そんなことをしたら信用を無くすので絶対しません。
■注文があるのに、何故面積を増やさないの?
いや、そんな簡単にできるトマトなら、パリの「檜舞台」には立てません。1玉1玉職人技で作るので、管理できる本数は限られます。人を雇っては採算が採れません・・・
■品種は当初と変わりませんか?
種苗会社は次から次へと色々な交配種を作ってくるが、味が良くなった例は無いね・・・(笑い)
T社の元祖「高糖度品種」を超えるモノははまだ見つからない。
■格別美味しい秘密は管理ですか?
その通りです。うちはシェフ仲間から「野菜のオートクチュール」と言われています。(オートクチュールはパリの高級仕立て服、オーダーメイド品)
トマトは調理目的によりシェフの好みが微妙に変わります。具体的に言えば熟度ですが、着果日から計算して収穫日が決まります。標準的な日数は80日、常温追熟4日です。当然、温度や日照などで変わりますから、私のアナログ的感覚で最終判断します。
■思うようにコントロール出来ますか?
出来ません・・・ですから、取引する前に最高責任者から「白紙委任状」を書いてもらいます(笑い)
■経営的には如何ですか?
驚くかも知れませんが、たった1.000㎡で贅沢をしなければ家族で充分食べて行けますよ。農業はそんなに儲かる商売ではないからコツコツ楽しみながらですよ。フランスは税金が高いから無理して儲けても残らないしね・・・(笑い)
老後は年金を積んでいるから大丈夫です。皆さんに喜んで食べて頂き、人生を楽しめれば最高です!

【コメント】

予約半年待ち、1年待ちとか言われるパリの三つ星レストランには関心はあるが一度も縁はない。こう言う場所に出入りできる客は稀な人達であり、非日常的な世界である。但し、チャンスを作れば、常人でも客としては行ける。しかし、ここに食材を納めようとするには常人では不可能である。品質の秀逸性は当然のこととして、食材を作る人にカリスマ性、オーラがなければ無理である。
Yさんのトマトにオーラがあるのは理屈、講釈ではなく、彼の盆栽師としての経験と感性が関係している。盆栽の事はよく解らないが、毎日樹と対話しつつ、折り合いを付けながら自分の描いた姿に導いて行く・・・彼のトマトは正にこの一期一会の世界で育てられている。私が知る限りでは北海道のTさんがいる。敢えて書かないが、農家哲学が共通している。
話に夢中になってトマトの画像を撮るのを忘れてしまった。
未だ50cm位で、特別な樹ではなかった。
それにしても、一度Yさんのトマトは食べてみたい!

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