

私は都市部に住み仕事柄、農村を歩いてきた。長年、農業の繁栄と衰退の現場を見てきた。衰退は地域により原因が異なるが、率直に言えば元気のない人は、自分の考えを持たず、主張せず、動かず、貴方任せの傾向が強く、時代の波に飲み込まれたと言いたい。地理的、自然条件が不利な地域はともかく、国、行政、組織に頼り切り、自分が経営者という自覚も欠如していた。「TTP?海外から安い農産物が入ってきて大変だ~どうしよう・・・」となる。しかし、現在は淘汰が進み、先見性のある農業人は既にこれをチャンスと見て「攻め」の体制に入っている。「今まで通り、何も考えない、行動しない」消極的な人達から、国際競争に勝てる農業人に視点を移さねばならない。
軸足を成長分野に置いて、先ず世界競争に勝ち、財源を確保することから始めないと何も出来ない。「俺たちも一生懸命働くから、競争力のある分野に稼いでもらい、もし天災や暴落で赤字が出た時は助けて下さい」という農業人もいる。歯を食いしばって働き、納税しているサラリーマンの中には優遇し過ぎるとの異論もあるが、食い物を心配している様では働けない。「お互い様・・・」保険と割り切って容認しお互いに頑張ろう。
販売サポートを始めてから、いつも気になるのは消費減である。消費減は都市部から始まっているから、昨年、あれこれ調べて書いた。この2年、農産物は相対的に不作で相場は高いが需要が伸びているという話しは聞かない。多くの仲卸は高すぎてモノが動かないとあきらめ顔だ。先日、デパートで対面販売している野菜ソムリエが、「4人に3人は価格優先」と話していた。デパート客がこんな調子だから量販店客は殆どが価格次第だろう。超円高が加わって企業は更に人件費を切り詰めている。消費環境の改善はいまのところ先が見えない。
大手輸出企業は国内生産に見切りを付けて再び海外移転が活発化している。周囲のサラリーマンの中には中国や東南アジア方面に海外勤務を命じられたという話しはよく聞く。先進国の大部分は内需が衰退トレンドにあり、今後も生き残りを賭けて成長市場への参入が続く。米国は先週、韓国とのFTAを批准し、5年後に両国はほぼ完全自由貿易となる。交渉が出遅れている日本は、主戦場米国、EUで関税、物流のハンディーを背負い、競合する産業は黄信号が点灯する。韓国内では日本と同様に大きな影響を受ける分野も多い。農業団体やバックとする野党の反対運動が盛り上がっている。失業率は上がり、貧富格差は日本とは比べものにならない位、広がっている。韓国は半導体や液晶テレビで世界を制覇し、今週のニュースでは高機能携帯電話でも米国アップル社を抜いたという。日本の看板だった電子産業は世界中で影が薄れ、欧米では忘れかけている。日本のドル箱的存在である自動車産業もFTA発効を機に、韓国車の切り崩しに直面する。
国際競争力が落ちれば日本の消費は更に縮み、安価な農産物しか売れなくなる。日本の農家は世界でも上位の生活レベルにあるが、消費者が弱っては維持も危ない。
TPP、FTA、EPAなど自由貿易は自分達の将来にとって毒にも薬にもなる。慎重姿勢も否定できないが、現状を考えれば、自由貿易で副作用は解毒しつつ、起死回生の薬効を期待したい。
政権が交代して約2ヶ月、相変わらず課題は山積みである。宿題ばかり増えるが、「財源」や複雑な利害が絡むので、処理が進まない。「どうする、どうする」と言っている間に次の宿題が出る。政治、行政の現場は頑張ってはいるが、調整が遅れ、改善しない状況に国民の苛立ちは募る。戦後長く続いた繁栄は既に峠を越え、将来不安で国民も企業もますます守りに入り、活気が出てこない。米国、EU等先進国も同様で、破竹の勢いを誇った新興国も先進国需要後退では減速である。リーマンショックは大規模な財政出動で少し持ち直したが、今度はそのツケがまわり、米国の巨大な財政赤字、EU内のデフォルト懸念が表面化し、先行きは予断を許さない。世界はリンクしているから、米国、EU、中国、日本などの主要国が連携して手を打たないと景気は回復しない。
最近、経済至上主義による格差社会の弊害が指摘され「幸福度指数」なるモノが登場、今までの価値観、生き方を見直そうという気運が一部に出ている。鎖国論とは言わないが自給自足の「内向き論」もある。生き方は各人の自由だから否定しないが、経済規模世界第三位の日本は消極的な道は歩めない。豊かな消費生活に浸り切り、巨額の債務を抱えた国が「内向き」を選択するとしたら、世界経済はパニックになるだろう。確かに身の回りには急激な社会変化に対応できず、精神的にも経済的にも困難な生活を強いられている人達が増えている。その原因の多くは、グルーバル化と過度の自由競争にある。職や人間の絆を失ってしまった人達が増えたのは否定できない。しかし、ここで弱気になり、負け犬になるわけにはいかない。自分達が作った借金は歯を食いしばって返済し、末代に残してはいけない。経済パニックを起こして、世界の何の罪もない人達に迷惑をかけてはいけない。みんなで奮起して頑張り、再生の道を歩まねばならない。特に若い世代には檄を飛ばしたい!
以前、日本企業の快進撃によって欧米では自動車や電機産業が大打撃を受けた。仕事を失った労働者が、あちこちで反日デモを繰り返し、日本車やテレビを焼き討ちした事件も起こった。しかし、日米欧政府は自由主義経済を基本とし、摩擦はあったが極端な政策を控え、ITやバイオ、宇宙など最先端産業を育て、危機脱出に成功した。自動車界の雄であったGMは、保守的な労働組合を擁していたため自己改革が遅れ、時代の波に飲み込まれ破綻した。デトロイトの街に大量の失業者が溢れたニュースはまだ頭から消えてはいない。自動車に限らず世界中のすべての業界が凌ぎを削り競争している。我が国も自由主義を標榜して発展してきたからには、今後もこの原則は変えられない。
再びTPP論議が高まっている。TPPについては農家の関心が強く、昨年夏から各方面に取材し、ブログで紹介してきた。TPP参加交渉はいよいよ来月、APEC開催迄に、結論を出さねばならない。与党内の一部は「中小企業や農林水産業への影響が大き過ぎる!」と交渉参加に反対している。専門家の中には、米国のTPP参加要請は来年秋の大統領選対策で、日本には殆ど利益は無いと言い切る人もいる。内容が少しずつ明らかになってきたが、米国の狙いは農産物解放要求にあることは論を待たない。日本のメリットは工業製品の関税撤廃であるが、為替操作(円高)で帳消しされる可能性もあると指摘する。米国農業は輸出増加で活気付き、大量の失業者が雇用の受け皿となり、一石二鳥のシナリオが描かれていると指摘する。確かに中国も韓国も参加しないから米国の農産物輸出先は日本に向けられる。これでは韓国が選択した二国間FTAでも良いのではと疑問を呈する。
いずれにしても、TPPだけが問題ではない。各国の経済活性化のためすべての分野に自由競争原理を取り入れてお互いに経済成長を目指そうという流れである。FTA、ATPも自由競争原理は変わらない。
3月のブログで1月に訪ねたノルマンディーのオーガニック(BIO)「ハローウィン農場」について紹介した。訪ねた時期が冬で作物は無く、農場の概略を聞くにとどまった。やはり、作物の生育している時期に現場を見なくては理解出来ない。こんな思いで5月2日、再び農場を訪ねた。
新緑のノルマンディーは目を見張るほど美しい!白いマロニエ、紫色のリラの花・・・春を待ちわびていた生命が一斉に動き出した感がある。
今回は「ハローウィン農場」のマダムに案内して頂いた。
マダムは弁護士、地方議会議員の肩書きを持つインテリ女性。日本に3年近く滞在された経験があり、日本語も少し話す。自然界の営みについて大変勉強されており、この分野にも詳しい。理論的でチャレンジ精神旺盛だ。
「この仕事は奥が深く、知れば知るほど興味が湧く」と、案内に熱がこもる。
農場は有機農業と言うより、自然農業に近いが、放任栽培ではない。観察や科学的根拠に基づいて人工的に多様な環境を作り、自然界の営みを創る。それぞれの環境に対応して生物の多様化が進み、全体の共存関係が築かれている。
農園の周辺には推定500種類以上の植物が共存しているが、食用は50種類位。作物を大面積植えると生物バランスが崩れて病害虫が増える。これを農薬ではなく、自然界のバランスの中でコントロールしている。
マダムに農場が目指している未来像について聞いてみた。
通常、食の安全や環境問題の観点からオーガニックを目指す人が多いです。私は将来、予測される人類の食糧危機に対応できる「最も効率的な農業」がオーガニックだと思います。オーガニックは単位面積当たりの収量が少ないと言うのが従来の共通認識ですが、私はその考えは間違いだと思っています。オーガニック農家をもっと増やすには、政策的な食の安全や環境保全だけでは限界があります。現在の化学農業より省資材型(低コスト)で、しかも品質や収量が上がり、農家の収益向上に結びつかなければなりません。
最大のポイントは化学資材を使わないで、自然界のあらゆる要素、土、太陽、雨、風、微生物、植物、昆虫、動物などを総合的に利用して作物の能力を最大限に引き出せば、高収量を実現できると考えています。従来の化学肥料、農薬、遺伝子組み換え種子等を使った農業は環境破壊が進んで、ボツボツ限界でしょう。循環可能な自然力を総動員して単位面積当たりの収量を現状より増やすことが私の目標です。まだスタートして5年目、試行錯誤中ですがご案内しましょう。
ここは元々、乾燥しやすい場所で、雨が少ないと作物が良く育ちません。乾燥地は生息できる植物や昆虫の種類や数が限られます。作物を植えると生態系が狂い思わぬ虫害に見舞われます。作物を作っても効率が良くないので、池を掘って環境改善を図りました。園内には山から注ぐ小川も流れていますが、予想通り全く異なった生物が住み始めました。水が流れている川と静止している池では微妙に異なります。ここでは藻(アオコ)が大量発生し、定期的に取り除いて乾燥させると大変いい肥料になります。また、葦類は他のハーブ類と発酵させると虫や病気除けになります。蛙やトンボも育ち、虫を食べてくれます。乾燥地に水を用意してあげただけで多様な生命が育つことを実感しました。
果樹園の傾斜地にも雨水の水道を調べて、溜池を掘りました。しかし、水が直ぐに無くなってしまい、ここはまだ成功したとは言えません。もう少し考えないと・・・(笑い)
単位面積当たりの収量を上げるため、生育の早いモノとゆっくり生育する作物を混植しています。これは生育の早い葉菜と生育の遅いエシャロットの組み合わせです。混植のもう一つの目的は害虫対策です。
果樹園は100種類近く植えていますが、成育中の樹木の高さを考えてバラバラに植えています。この方が単位面積当たりの収穫量が多くなり、虫も付きにくくなります。
どの圃場も、畝毎に作物が異なります
両側は背丈のあるグリーンピース、中央部は大根、人参の混植です。
この植物はアブラムシが好んで集まり、ビッシリ付きます。アブラムシが増えるとそれを食べる天敵のテントウムシが増えます。頃合いを見てテントウムシを捕って他の作物に移します。移転作業が終わったらこの株は焼却します。あちこちに植えておけばアブラムシの被害は殆どありません。
害虫対策植物はカモミールやミントなどの混植も効果があります。葦などの発酵液も良いです。
畝間には亜麻の滓や落葉樹のチップを敷き詰めて、草の生育を抑えています。根の保護や乾燥防止にも効果があります。プラスチックフィルムは使いません。
どうしたら単位面積当たりの収量を最大に出来るか試行錯誤した結果、この円形、盛り土に行き着きました。この形は平面より植え付け面積が増え、栽植本数が増やせます。緯度が高いので夏の日照時間が長く、太陽の位置も高いので日照が十分確保できます。作業もしやすいです。
当然、植える作物は諸条件を考えて植えますから、まだら模様になります。
マダムの意気込みは凄い!
実施している事は日本でも昔から行われていた事が多く、特段、珍しいことではない。効率、コスト優先の日本の農家から見れば「?」が付く。しかしハローウィン農場が目指している「単位面積当たりの収量増」への努力は評価に値する。実現できるかどうかは別にして、国の支援から「自立」への道を探る姿勢が素晴らしい。
円形土盛り方式には新鮮みを感じた。効率追究の日本人には考え付かない。マダムに「この形はパリの街(広場を中心とした円形放射状、渦巻き型)の様に美的感覚で作ったのですか」と聞いたら、「いや、理論的に考えたらこの形しかありません!」と自信満々に語っていた。
しかし、我々にはどう考えても手作業ばかりで効率を無視した農業に見える。これで飯(パン)が食えるのだろうか・・・マダムは、固定客が増えて、週で約100個の宅配を確保しているというから、一応の目処は付いている感じだ。売店の販売も順調な様だ。1月には貯蔵野菜や加工瓶詰め品の在庫がギッシリ並んでいたが殆ど売り切れていた。ご主人は前回、「現状は厳しいです」と話していた。10年単位の仕事として捉え、今後、新植した果樹類が収入に加わってくるから経営は安定するとも語っていた。
数キロ先の山の向こうは効率を追求している大規模農業地帯。こちらは人間、環境重視のオーガニック農業・・・豊かな緑と修道院のある良好な環境に恵まれた「ハローウィン農場」は、訪れる人々の心を癒し、ここで採れた野菜や果物は明日への鋭気を養うことだろう。。
フランス人は「食」と「バカンス」にお金を使う。残念ながら日本人は「食」も「バカンス」も使わなくなってきた。いや、使えなくなってきたのかも知れない。
フランスに行っても個人農家を訪ねる機会はなかなか無い。(2)で書いた日本人農家Yさんは当時パリに住んでいた知人に紹介して頂いたが、典型的なフランス人農家にお会いしてみたいと考えていた。その土地に生まれ、育ち、そして農業を続けている土着農家にである。
「どんな環境」?「どんな考え」?「どんな農業」?「どんな生活」?・・・直接会って聞いてみたい。この思いを1月に訪仏した折り、案内して頂いた留学生H/A子さんに伝えておいた。
3月上旬、A子さんから「知り合いの村長さんのお宅で『どぶろく』を造る事になったので一緒に行きましょう!村長は170㌶の農地を持ち、小麦などを作っているから、いろいろお話しが聞けると思います」。願ったり叶ったり!チャンス到来である。
5月1日(日)、車でパリを出発、広大な農地が広がるシャンパン街道を東進、昼前に村長宅に着いた。

回りは殆ど麦畑(画像上)・・・所々に菜種畑(画像左)と土が露出した圃場が見える。畝が作ってあるからホワイトアスパラ?かも知れない。
村長宅はここで代々農業を営んでいる名門。村の発展と環境問題に特別関心が深い。
作物は殆ど麦、トウモロコシ、菜種で170㌶経営している。政策的に保護されているので、生活は皆さん豊かだ。しかし、村長は「このままではいけない」と考えている。何故ならば、現状はもう機械化も収量増も限界に近い。メインの小麦は品質向上で収入増が期待できるか尋ねたら、品質価格差は余りない。天候により左右されるので難しいと答えた。収量平均は1㌶7㌧で北海道平均よりは多い。パリ近郊の地力のある土地では9~10㌧取れる所もあるという。これ以上収量を追究すると、残留硝酸窒素や病害虫多発による農薬汚染など環境リスクが高まる。遺伝子組み換え品種導入を別にすれば、現状の収量で、環境負荷は限界に近いだろう。
フランスの大型農業の将来については1月に訪ねたF教授のインタビューで指摘されておられたように、穀物農業は新興国との競争が厳しくなる。私の推測であるが、村長は村の将来像を描きつつ、大型農業一本槍から複数の道を模索し始めた様に見えた。冗談とも本気とも聞こえたが、日本から珍しい野菜のタネを持ってきて、自分の土地で作ってみないかと度々話していた。売る方はパリに知り合いのシェフが沢山いるから心配ないと・・・
流石、村長!チャレンジ精神旺盛である。当方も興味ある話である。
今、取り組んでいるのは自家製「マスタード」の製造、販売だ。2週間に1回、2.000個作って販売している。こだわりを聞いたらビネガー(酢)にあるという。自家栽培のからしの実と、村で採取した蜂蜜を発酵させて作ったビネガーを和える。奥行きのある味で、日本で販売されているマスタード(西洋からし)とは異なる。パリには老舗のマスタード専門店があり、フランス料理には重要な香辛料である。肉料理にお洒落なスプーンやミニカップに添えられて出る。
壁面にはツタが這わされ、風格のある佇まい。
フランス人は古いモノに価値を見出し、大切に保存している。村長は古い建物や景観の保存運動に、熱心に取り組んでいる。
フランス人好みの濃いローズ色の壁面は良き時代の雰囲気を漂わせる。
先代達はここでシャンパンやワインを飲みながら、充実した時間を過ごしたのだろう・・・
緯度の高いパリ周辺は冬が長く、底冷えして寒さが厳しい。
大きな薪暖炉が設えられている。
年代物の絵やグラスが並ぶ。
村長は若い頃から大のビール党らしい。ヨーロッパ中から名品を買い集め、近所の人達を相手にこのカウンターでビールバーを開いていた。
「こんな風にね・・・」とボーズ。
A子さんの提案で村長とフランス産「どぶろく」を仕込んだ。勿論、フランスには米麹は無いから、島根県出雲の酒蔵から取り寄せて送った。気温が上がると美味しい「どぶろく」が造れないので室温の安定した地下室で仕込みした。
瓶は運良く、地下室で見つけたと言う。昔、豚の塩漬けに使っていた瓶らしい。
予想以上に香り豊かで切れ味の良い「どぶろく」に仕上がった。
村長は3日位前が飲み頃だったかも・・・と言っていたが、充分に満足できる出来映えであった。
招かれた友人達が思い思いに食材を持ち寄ってパーティーの準備が始まった。男性達も参加して、お喋りを楽しみながら料理を作っていた。
今が旬のホワイトアスパラ、魚介類を使ったあっさりイタリアン系?料理、サラダなど・・・塩味が少しきついが、ハーブやスパイスの使い方は流石センスがいい!
お洒落で別荘の雰囲気!
いよいよランチパーティーが始まった。先ず、型通りシャンパンが抜かれ『乾杯!』。すぐ隣がシャンパンの産地、シャンパーニュで兎に角美味しい。
絶好の天気、楽しい雰囲気も加わってあっと言う間にボトルが空く・・・シャンパン、白、赤と続いて、宴たけなわ。
残念ながら私はフランス語が解らないが、皆さん相当なお喋り好きだ。
柔道愛好家Jさんは「フランス人はみんなお腹が出ているが、僕はこんなにスマートだ!」とシャツ脱いで肉体美を自慢していた。皆さん、気さくで愉快な人達だ。
フランスは食事が終盤に近づくとチーズが用意される。
この日もチーズの仕事をしているというMさんが十数種類のチーズを持ってきた。大変美味しいが、満腹に近く、あまり食べ慣れていないので彼らの様に沢山は食べられない。ナイフで適当な大きさに切って、ワインを楽しむのが流儀だ。
チーズの種類によってワインの味わいが微妙に変わる。
奥さんやお子さん達も一緒に来たが、別のテーブルで食事をしていた。フランス人は躾けが厳しく、子供達が電車内や食事中に大声を出したり、走ったりすると直ぐ注意される。何処に行っても静かでマナーがいい。
レディーファーストは当然徹底しているが、ついつい日本流の地がでてしまい、恥ずかしい思いをする。
子供は色白でお洒落。お人形さんのように可愛い。
短い時間ではあったが、フランス農家の生活の一端を知ることが出来た。日本の農村と比べれば、他人の事は余り気にせず、マイペース派が多い。都会人と比べ実直で素朴なことは日本人と変わらない。ゴルフ場は沢山あるが、パチンコ屋や温泉施設など庶民の娯楽施設は見かけない。フランス人の娯楽は映画で、映画のTV番組は早朝から深夜まで非常に多い。高速道路、鉄道など交通インフラはよく整備されている。買い物、旅行などは何処にでも気軽に行けるが、自宅で気の合う仲間が集まって気ままに料理を作り飲むのが日常の楽しみ方なのだろう。昔の日本もこういう風景が見られた。今は便利になりすぎて居酒屋や焼き肉チェーンなどがあちこちに出来、「自宅で・・・」と言うのは敬遠される。高齢化や個人主義の高まりで農家の集まりが減っているが、お互いにもう少しコミュニケーションの機会を作り、刺激し合って意欲を高めたい。
パリにあるミシュラン「三つ星レストラン」と言えば、世界の富豪や著名人が利用する最高級レストランである。ここで使われる食材は、世界最高峰と言える。
パリ西部にあるノルマンディーは、豊かな農業地帯で、お洒落な農家の建物が点在する。霧に包まれた先には広大な穀倉地帯が広がる。この高台に世界最高峰レストランに野菜を納めている痛快な日本人農家Yさんが住んでいる。初めて訪ねたのは2004年1月。その時の様子はe-yasai.com「NEWS」で紹介したことがある。
Yさんは30数年前パリに渡り、盆栽を作って生計を立てていた。その頃は日本の絶頂期で日系企業の支店や営業所が次々と進出、盆栽がフランス人にも受け入れられて繁盛していた。ところがバブル崩壊で次々と日本人が引き揚げ、盆栽に見切りを付けた。次に取り組んだのは「おいしい日本野菜」。日本に帰国する度に種苗会社を訪ね、種子を手に入れてフランスに戻った。住宅付きで農地(約20㌃)を借り、小さなハウスを建てた。自然循環型有機農業を目指し、鶏糞堆肥を作るため地鶏を飼った(圃場画像手前)。当時約50種類もの野菜を試験し、土壌と気候に合う野菜を模索した。大根、人参、小蕪、聖護院大根、牛蒡、里芋、枝豆、トマト・・・色々なタネを蒔いて育ててみた。2004年に訪ねた時の状況を少し書く。
ハウスを覗いて強烈な印象が残っているのはこの塩ビ菅である。1月の寒さの中で牛蒡の双葉が力強く芽吹いていた。「なんで塩ビ菅?」咄嗟には理解出来なかったが彼の説明を聞いて納得した。この地は緯度が高く、雪が少ないので土が凍結し、5月下旬にならないと土が乾かない。土質も重く、とても牛蒡を作る環境には無い。しかし、日本の野菜に牛蒡は欠かせないと考え、長い塩ビ菅に細かく砕いた土を詰め、タネを蒔いた。太さはともかく、香り豊かな美味しい牛蒡が育った。
(土)(日)を利用して自分の作った野菜を使ってレストランを開こうと目玉になる野菜を考えた。時期は夏、フランスには枝豆は無いなと思い、タネを蒔いた。しかし、生育が悪く、莢が付かない。色々調べた末、ここの土には根粒菌がいないことを知った。そこで北海道から根粒菌を取り寄せ、タネに塗して蒔いた。効果は絶大、見事な美味しい枝豆が育った。彼はレストランの人気メニューと言っていた。
秋に収穫した大豆は日本料理店の湯葉や豆腐の材料として売った。彼が作った自家製味噌も試食させて頂いた。
伝統的な和食(煮物)には、里芋は欠かせない。多分、フランスで作っているのはここだけだろう。
訪ねたのはスタートしてまだ3~4年経った頃と思うが、大きな試練が待ち受けていたと言う。パリの街は駐在員や日本人観光客が減り続け、売り先の日本食レストランの閉鎖が相次いだ。市場流通や宅配もトライしたが、パリの交通渋滞は仕事にならず、継続は致命的と映った。日本の様に気軽に宅配便が使える便利社会ではない。
いろいろ作って行く中で「小蕪」がシャンゼリゼ-通り裏で日本人が経営するフレンチレストランで評判になった。あちこちから注文が舞いこみ、美味しい物を作れば必ず売れると自信を持った。しかし、この時点では採算の採れる販売方法については未解決であった。
それから、7年の歳月が流れた。
農園の回りの風景も畑の様子も殆ど変わっていなかった。ビニールハウスと鶏舎は以前より少し広くなっていたが昔のままの雰囲気だ。笑顔で迎えてくれたYさん(画像中央)は相変わらず若々しくお元気そうだ。
早速、質問してみた。
予約半年待ち、1年待ちとか言われるパリの三つ星レストランには関心はあるが一度も縁はない。こう言う場所に出入りできる客は稀な人達であり、非日常的な世界である。但し、チャンスを作れば、常人でも客としては行ける。しかし、ここに食材を納めようとするには常人では不可能である。品質の秀逸性は当然のこととして、食材を作る人にカリスマ性、オーラがなければ無理である。
Yさんのトマトにオーラがあるのは理屈、講釈ではなく、彼の盆栽師としての経験と感性が関係している。盆栽の事はよく解らないが、毎日樹と対話しつつ、折り合いを付けながら自分の描いた姿に導いて行く・・・彼のトマトは正にこの一期一会の世界で育てられている。私が知る限りでは北海道のTさんがいる。敢えて書かないが、農家哲学が共通している。
話に夢中になってトマトの画像を撮るのを忘れてしまった。
未だ50cm位で、特別な樹ではなかった。
それにしても、一度Yさんのトマトは食べてみたい!
中国と一口に言っても広大な国土、多様な気候、多民族、世界最大14億の人口、社会主義と資本主義の同居、所得格差・・・・巨大すぎてどれが本当の中国なのか掴みつらい。今回訪ねた河南省は中国の主要民族、漢民族が殆どで、歴史的、文化的にも代表的な中国と言って良い。
中国と日本は近代~現在に至るまで日中戦争を経て数々の摩擦が続いてきた。経済的に相互互恵関係にあるとは言え、一般的に日本人が中国人に抱くイメージは厳しく、警戒感は消えない。特に競争力の弱い農業や中小企業の多い地方は、この傾向が強い。
ところが、この半年間に起きた事件で、事態は急変した。ハイテク産業から農業、中小企業、観光、運輸業、小売業・・・気が付けば今や中国を抜きにしては語れない、いや大袈裟に言えば、成り立たない業種が出てきた。尖閣問題以降、ハイテク産業に欠かせないレアアースの大幅輸出削減、中国人観光客が激減、どんなに努力しても、物やお客さんが来なければ経営が成り立たない。農業も中国人労働者が来てくれなければ縮小せざるを得ない生産者もいる・・・日本で生産している電子部品が無ければ中国の多くの自動車は完成しない。経済はもう国境を越え、少なくともアジア地域はEU経済圏と同様に、相互依存関係が深化、拡大しているのである。
日本とは政治体制も文化も異なる中国に、違和感を持つのは仕方がない。お互い様である。しかし、歴史的にこれ程、結びつきの深い国は他に無い。漢字文化を共有し、宗教、思想、文学、技術面でも大きな影響を受けてきた。本来は最も相互理解しやすい関係にある。貿易相手国として世界最大となり、もうお互いに切っても切れない関係となっている。今回の事件でこのことが証明された。
河南省の方々とお会いし、一緒に酒を飲み、食べ、語り、彼らの本質が少し理解できた。彼らは、地方都市の20~30歳後半の若手だが、40年くらい前の日本人と共通した点がある。上昇社会が故、将来に希望を持ち、意欲に溢れている。努力すればリターンがある。以前描いていた社会主義のイメージはここには無い。指導的な立場にある方々も日本と比べて格段に若い。歓迎会に出席して頂いた知事さんは38歳だという。
反日デモなどの映像を見て「中国は反日的」、「危ない」と思う日本人も多いが、14億人の中にはその類の人達も確かにいる。内陸、山岳農村部では日本がどういう国なのか知らない人達も多いと思う。しかし、親日家も多く、日本人を尊敬し、日本に憧れている人も多い。特に若者達は「日本に行ってみたい」と話す。私は10回近く中国を訪ねているが、「反日」で嫌な思いをしたことは一度もない。確かに政治的場面では、それぞれ国内事情、国益を抱えているから、いつも仲良しと言うわけにいかない。中国は人権、言論の自由、格差問題、一部役人の腐敗など国民の不満が溜まりやすい。ガス抜きの目的で、外交は厳しい対応する場面が多い。これは中国に限らず、世界共通だ。
「賄賂社会」というイメージも抜けない。確かにその類の話しはよく耳にする。何処までが賄賂なのかは解らないが、歴史的に権力者に「貢ぎ物」を差し出し、便宜を図ってもらう図式は何処にでも存在する。日本では「心付け」「餞別」「歳暮」「中元」などお礼の習慣がある。お礼の習慣がエスカレートして、裁量権を持つ人が暗に要求する「賄賂」に変質した。日本では贈収賄事件は、次第に法規制が厳しくなり減った。民間企業では「コンプライアンス」(法令遵守)が浸透し、地位を利用した取引は影を潜めた。しかし、未だに無くならないのは人間の性であり、ある程度は仕方がない。ネット社会になり内部告発などで支配層の不正が暴かれ、アジアや中東、アフリカでは政権打倒、民主化運動が相次いでいる。中国は国際機関に加盟し「国際標準」つまり「法治社会」を目指し、次第に改革が進んでいる。悪質な贈収賄事件では極刑もある。ただ、何千年も続いてきた伝統、文化の人治社会が短期間で変わることはない。日本でも以前は「人治社会」特有の縁故入学や縁故就職が半ば公然と行われていたが、今はあまり聞かない。
身内や友人、知人、お隣さんを大切にする「義理、人情」は、日本人の美徳でもあったが、次第に希薄になってきた。明治以来、西洋から民主主義、議会政治を学び、更に敗戦後、個人主義、男女平等、公平。バブル崩壊後は情報開示、透明性など「法治社会」に移行してきた。既にほぼ世界標準に到達した日本人が義理、人情の影が残る「人治社会」に違和感を持つのは不思議では無い。中国は改革解放を始めてまだ30年位である。急激な経済発展で、各所に歪みが起きていることは確かだが、日本と同様に試行錯誤しながら世界標準になって行くだろう。そう捉えれば、いちいち目くじら立てて批判することはない。隣人として相互理解を深めて行く事が大切である。
彼らと政治の話しもした。国民の大多数は、政治体制に不満を持ちながらも、経済的に豊かになったことを実感していると言う。経済的に失敗したと言われる毛沢東時代より遙かに豊かになった改革、解放路線が支持されているのは当然である。米国基準で言えば、言論や政治システムに問題があると指摘されるが中国の実情から考えれば、米国基準だけでは安定した国運営が出来ないことも確かだ。政治への不満は何時の時代にも、何処の国にもある。地球上20数%の人間が住む国を一つの政府がコントロールするのは、有史以来初めてである。
他国のことを批判するのは簡単だが、少子高齢化、国民生活の質低下、財政悪化、競争力低下、政治不信、打つ手が限られる日本の将来をもっと真剣に考えたい。
中国とはじっくり本質を見極めながら、相互に補完し、発展できる関係を作らねばならない。
震災前までは日本からアジア向けに高品質農産物を輸出し、国内農業を元気にする道筋を立てていた。しかし、原発事故でその筋書きは崩れた。原発事故は当分終息する見込みは無い。
従来通り内需に頼れば、デフレトレンドを睨みながら、下降社会への道を歩まねばならない。震災復興費の発生で農家所得保障の先行きは怪しい。子供手当も国民の反対論が根強く、子育て世帯の家計は厳しい。増え続ける高齢者が頼みの綱としている年金は、支給額が減少傾向で、先行きは心細い。
もうここまで来たら、農業もアジア圏の成長に相乗りする以外になさそうだ。アジア圏で、最も速効的、インパクトのある国はやはり中国である。今回レポートした様に、世界経済ショックを乗り越えて成長が続いている。バブルと言われ続けながらまだまだ、消費(内需)の懐は深い。主力のモノ作りは世界経済の影響を受けやすいが、人件費が上がっているとは言え、既に将来は南アジアに生産移転を睨み、したたかに先手を打っている。活力、競争力は健在である。
問題は、足元の日本だ。
高度成長、バブル期を経験し、GDP世界2位という過去の栄光と驕りから抜け出せない。得意だった産業は敗退が続いている。異論は多いだろうが農業も他の産業と同様に、グローバル化を進め、需要の伸びるアジア圏に将来の成長を見いだす時期に来ている。
日本がリーダーシップを取って、資金、優秀な技術と人材を投入し、アジア圏で農業再構築を図らねばならない。既に中国を始め、アジア圏には日系量販店やコンビニ、外食関連企業が続々進出し、販売インフラは拡大している。農業資材、機材関連企業も既に進出している。残るは農業人(ソフト)の進出である。
農業を海外で展開するには、どの様な問題があるかは現地で走りながら検証し、解決して行かねばならない。日本の産業競争力が落ちたのは、「内籠もり」(島国根性)、「腰の重い体質」が原因と指摘されている。世界競争では先ず、機先を制し、すべての条件を探り組み立てることが重要である。リタイヤした中高年層にはマネイジメントを含めて優秀な人材が多く、出番はある。若人もアジアで活躍できるようになりたい。
今秋から、今回訪ねた河南省、同様の条件下にある遼寧省などの企業と連携し、イチゴやミニトマトの高品質栽培実証試験に取り組む。これらの地域は土壌、気候、水利に恵まれ、経済発展で高品質品の消費が増える。日本企業の滞在者が増えており、日本文化への関心も高まるだろう。具体策はこれから詰めるが、中国国内、香港、台湾などが販売ターゲット。決して簡単ではないが、将来の方向性として今から取り組まなければならない。
国内農業は、トレンドとして農家戸数も需要も減る。流通の統合が進み、更にコストダウンが求められる。安易、過剰な投資を避け、現行モデルの改善とフットワーク軽さで収益向上を図りたい。組織に入り、力を合わせて安定供給で勝負するか、自らオリジナルの農業を切り開いて世に問うか・・・二者択一である。
河南省農業局の話しでは現在36万棟、0.2㌶平均で7.6万㌶(メロン、スイカを除く)の農業用ハウスがある。主に胡瓜、トマト類、ピーマン、青梗菜、イチゴ、花卉などが作られている。当地のハウスは10㌃あたり平均625.000円の設備費がかかる。国の支援策が手厚いため、急速に増えた。
沿海部の都市化によって農地が失われ、それを補う目的と、穀物中心の低所得農業から高付加価値農業への転換を目指して、ハウス栽培が盛んになった。バラバラに多種類の作物を作らず、日本の指定産地事業の様に特定品目大産地政策が進んでいる。
この地域は大規模な農業会社が多数立ち上がり、大きな変化を遂げている。その早さは、日本と比較すれ在来線と新幹線ほどの違いがある。農業会社を5社訪ねたが、いずれも周囲が麦畑で、従来の穀物農業からの転換であることが窺える。
ハウスは単棟、連棟各種有る。標準的な面積は単棟1ムー(0.66反)で、何十棟も立ち並ぶ姿は壮観である。ハウス所有面積は1社あたり1.5~2.0㌶という。
育苗ハウスを除いて殆ど無加温。春先は夜間の冷え込みが厳しいので、保温対策は随所に工夫が見られる。
気温が下がる前に稻藁で編んだコモで屋根を覆い保温、朝方巻き上げる。大変手間がかかるので、最近は簡易巻き上げ機が普及し始めた。
コモの保温効果は大きく、3℃も違いがでると言う。
耐用年数は2年くらいで、使用後は堆肥になる。プラスチック保温シートもあるが、価格が高いのであまり普及していない。
ハウスの北側は保温と畜熱のため、ブロックや煉瓦、土壁で作られ更に外側は分厚く土盛りしてある。
天井部と南面だけがビニールフィルムで覆われており、入り口も煉瓦やブロック壁で作られ、熱が逃げないように狭いトンネルから出入りする。保温には万全を期している。
この方式は河南省が発祥地だと言うが、山東省や浙江省など沿海部で早く普及してしまったと農業局F氏は苦笑していた。
広大な農地と豊かな労働力がある中国だから可能な省エネル策だが、これを見る度に日本ももっと省エネの工夫をすべきと思う。
各棟の出入り口毎に物置兼作業小屋が付いていて、昼食や休憩場所など多目的に使われている。日本とは異なり、住宅と遠く離れた場所に建てられているからだ。
鉄材が高価なためパイプは細く肉薄。強度を補うため内部は竹製の補強材で組み上げられている。
現状はまだ鉄材よりも竹や手間賃の方が安い。
天井は竹竿などで解放でき、十分な換気が可能である。
必要に応じて圃場に太陽光線や雨水が当てられるのは好都合。
潅水はハウス脇に掘った井戸から汲み上げる。
この会社は人手があるのですべて手作業の様だ。
2月定植で6月頃まで胡瓜を作り、抑制トマトに植え替える。連作を避けるため、このパターンは維持している。胡瓜は天津胡瓜で、非常においしい。
中国で言う「無公害野菜」つまり日本の特別栽培に似た取り組みをしている。肥料は鶏糞堆肥と化成肥料の組み合わせ。農薬は殆ど使わない。
通常、反当換算で鶏糞堆肥20~30㎡、N-P-K化成成分量で10kg程度を元肥として使う。鶏糞堆肥は1㎡300円程度で手に入る。追肥は通期で20回位、葉面散布を行う。
収量は時期により異なるが、無加温のこのハウス(約50㌃)で2日に1回収穫で2000~2500kg/回程度という(反当換算400~500kg)
何処で聞いても病害虫は少ないという。日照量が多く、空気が乾燥している、連作を避け、施肥量が少ない、人手があるので日常的に病害虫予防目的の葉面散布(種類は多い)を行っているなどが理由として考えられる。
出荷時間になると農民達が軽トラックや荷車付きバイクに積んで集まってくる。
立派な出荷場が整備されている会社もあるが、この会社は露天で行っていた。降雨が少ないので、問題はない様だ。
段ボール箱が高価なので、日本の様に包装にコストをかけない。荒選してポリ袋に入れ、段ボール箱に満杯詰めし、ポリバンドで縛ってトラックに乗せ出荷する。
この会社はマカオの業者と契約しているようだ。季節により多少価格は変動するが、経営が成り立つ価格で取引されている。
余分なコストをかけない点は徹底している。
ハウスの一角に計量機があり、担当者が伝票を切っていた。日本の出荷組合のような雰囲気であるが、設備は質素である。
ここで日々の技術相談、情報交換が行われる。
トマトは中国でも人気が高く、消費が多い。大玉、ミニトマトが多く、ミニトマトはデザートとしても使われている。イタリア系の品種が多く、果肉は固い。一般的に日本の様に糖度は高くない。
■ハウス2.0㌶を経営しているH社長の話
①病害虫は・・・
胡瓜は気温の低い春~初夏に作るので、特別問題は無い。トマトはウィルス(黄化葉巻病)が発生して困っている。昨年は半分くらいが感染して、収量が激減した。ネットや捕虫テープで対応しているが効果は薄いね。これから収穫シーズンに入るが、心配だね・・・
②土壌病は・・・
今の所、心配ない。
③経営上の問題点は・・・
規模を拡大したら、以前のように儲からないね・・・(笑い)
販売価格は契約で安定しているが、資材費や人件費が上がっている。特に深刻なのは人件費の高騰。面積が多いので作業員を沢山雇用している。市内の建設ブームで人が集まらない。3年前は1日50元(750円)で来てくれたが、今は70元でも来ない。一般の建設労働者は100元以上が相場だから、うちもその位出さないと来ないね・・・。100元(1.500円)も払っていたら採算が採れないよ。
④対策は・・・
中国はインフレで毎年、資材費や人件費が上がって行くが、食べ物はスライドして上がらない。仕方ないから一般企業のように、合理化して生産性を上げるしかない。
肥料や葉面散布材などに投資して、確実に収益が上がる技術が欲しい。トマトでこんな病気が出ていては儲からないよね・・・(苦笑)
⑤他の作物は・・・
セルリ、長ネギ、青梗菜、ほうれん草などを作っている。セルリ、長ネギは移植。葉物はタネをバラ撒きして、大きくなった株を間引き収穫する。手間仕事で人件費に食われるから、大規模には出来ない。
人気商品で栽培意欲は強い。日本品種のような大玉、高糖度品種はまだ普及していない。現在栽培されている品種は、輸送や日持ちに重点を置いた四季成り系の固い品種が多い。
知人に依頼して大連(遼寧省)の市場に入荷しているイチゴを調べてもらった。最近、中国産品種でも日本種と交配したと思われる高品質大玉イチゴが出始めているという。(品種名は未確認)。
中国も所得が向上し、食の洋風化が進んでいるので、イチゴの需要は伸びそうだ。
現状は味も見栄えもまだ日本には及ばない。
まとまった産地はない。
ポピュラーな野菜で色々な種類が作られている。
中国人は花好きで、観葉植物を含めて、全国的に栽培されている。タイやベトナム方面からの輸入も多い。特にバラや胡蝶蘭に人気がある。
ここの会社では試作程度の規模。
ナツメは河南省特産の果実で、ブランド品である。
通常、天日乾燥し、そのままドライフルーツとして食べる。
薬効成分があると言われ、薬膳料理や粥、菓子などにも使われている。
樹木は木工製品に使われている。
ナツメは少し長い丸果形で、独特の風味があり、甘酸っぱい味がする。
フランスの農業が二極化していることは、Dr。F教授のインタビューでも指摘されていた。大規模生産者のイメージはほぼ描けたが、中山間地農業についてはワインや畜産品情報はあるが、生産者の実態はあまり知られていない。数年前からアルザス(東部)やバスク(西部)など中山間地を訪ねているが、意欲的に高付加価値農業に取り組んでいる生産者には巡り会えなかった。
1月中旬、農業大学院留学生H/A子さんの取り計らいで、パリの西方車で2時間弱の距離にあるノルマンディー地方の有有機(BIO)農家
Ferme biologique du Bec Hellouin
Charles HERVE-GRUYERさんを訪ねた。
■果樹類・・・約14㌶に100種類余の苗木を植えている。
■野菜など・・・約2㌶の農地で葉菜、果菜、根菜類など多種類を栽培している。
自然循環生態系の中で作っているので生物の多様化が保たれ、虫害問題は殆どありません。
ただ、夏になると大西洋の湿気が上がってくるので、カビ類の病気が発生しやすくなります。
究極は自然農法を目指していますので、日本の故福岡正信氏や岡田茂吉氏などの考え方に関心があります。
国の支援がありますが、やはり農業は換金するまで時間がかかりますので大変です。自立するには一歩一歩の積み重ねが必要です。
以下、画像で紹介する(2011/1/13撮影)
周囲を小高い山で囲まれ、緑豊かな盆地の中にある。
緯度は北海道より高いが、冬でもそれ程寒くはない。1月というのに雪は無く、周囲は青々していた。
洒落たデザインの古い建物が昔の面影を伝えている。
人は殆ど歩いておらず、ひっそりしている。
殆どの屋根が麦藁葺きで苔むしている。冬、温かく夏は涼しいエコ住宅だ。この国では古いモノほど価値があるとされ、新しい建物は見当たらない。
華やかなパリと比べたら別世界である。
木質天然素材が多用されているためか、非常に居心地が良い。
昼間は忙しいので、お言葉に甘えて昼食をご馳走になりながら、お話しを伺った。
(ご夫妻の手作りメニュー)
■パン
天然酵母発酵、薪釜で焼き上げた自家製パン。表面の一部が黒く焦げていたが、ほのかに薪煙の香りがし、味、食感共にしっかりしていて美味しかった。
自慢の手作りジャムも美味に華を添えた。
■サラダ
BIOリーフミックス野菜にチーズ、香辛料入り自家製ドレッシング添え。メリハリのある味が素晴らしい。
■レンズ豆の煮込み
レンズ豆をワインやトマトなどとじっくり煮込んだコクのある逸品!
■赤ワイン
嬉しいことにこの国では昼食でもワインは付きもの。BIO自家製で非常に口当たりがよく、注がれるままにグビグビ・・・後は自分で好きなだけ飲んで下さいとボトルを手元に持ってきてくれた。フランス人は酒に関して特別気が利く(笑い)
農場内には山から清流が流れ込み、多様な生物を育んでいる。BIOの原点はここにある。
絵になる風景だ。
エコにこだわって、燃料は薪も使っている。
回りには豊かな森林があり、間伐材が豊富に出るのだろう。
園内の一部は柵を張って、地鶏や動物を放し飼いしている。贅沢な空間である。
畜力を使っていた時代の色々な農機具が保存されている。これは脱粒機?石車を馬か牛に引かせていたのだろうか・・古き時代がしのばれる。
子供達に何気なく見せて、農の歴史を学ばせている。
古い建物の内部を改装していた。恵まれた自然環境の中で「食と農」「自然」の大切さを親子で学ぶ場所を作っていた。
外から覗かせて頂いたがテーブルや椅子も天然木でお洒落。妥協を許さないC/Hさんの心意気が窺える。
生育期間の長い野菜は大型連棟ハウスで育苗してから定植する。
1月というのに、もう新芽が芽吹いていた。
1アールくらいに土手で区切られている。ここは効率化とは無縁の世界。
色々な野菜が仲良く育つ場所である。
南瓜、馬鈴薯、玉葱、エシャロット、蕪、人参、ニンニクなどが売られている。冬なので葉物類は少ない。
ジャム類、ビネガー類、蜂蜜などの加工品も多い。
秋には果実、木の実などが勢揃いし、賑わう。

(注)Ferme biologique du Bec Hellouinの詳細については下記URLを参照して下さい。
http://www.fermedubec.com/laFerme.htm
フランス語なので、日本語翻訳サイトhttp://www.excite.co.jp/world/を使うと便利です。
日本の有機農業は勇気農業と言われ、色々な意味でリスクが高い。新規就農者の中には理想に燃えて「有機」に走る人も多いが、経営的に成功している農家は限られる。先週、北海道のベテラン(20数年継続)JAS有機農家Sさんを訪ねたが、近年の異常気象で経営は厳しいと話していた。
厳しくとも、自分の信念や有機栽培という心地よい金看板を外すことが出来ず、頑張っている人も多い。
C/Hさんの農場を訪ねて感じたことは、周辺環境そのものが有機つまり自然で、人工的な手を加えて農業をしていない点である。小川は流れるままに曲がり、1枚の畑は小面積で形は統一されていない。昔、そのままに、人間と畜力で自然と向き合ってきた資産がそこにはある。ここが日本ならば多分、先ず小川をまっすぐに直しコンクリートで固め、耕地整理して農道を作り機械化を進め、農薬を多用して効率化を図っていたであろう。今頃は、自然という資産を使い果たし、化学物質の消耗戦農業になっていたのだろう。
同じノルマンディーでも山の向こうは広大な農地、産業化農業の代表的地域である。二極化が同居している。
C/Hさんの有機農業は、恵まれた自然環境だからこそ成り立つ。誰でも出来る訳ではないが、その取り組み方は徹底している。直売場は当然として、将来の顧客、リピーターを育てる努力は素晴らしい。
5歳の可愛いお嬢さんがいるが、子供からお年寄りまで「農」「食」「遊び」をテーマに、動物まで飼って「楽しさ」を提供していることには感服した。「BIO」という価値だけではなく「人間力」「感性」の価値を感じた。
3. 二極化が進むフランスの農業経営スタイル
現在フランスに見られる農業経営には2つのタイプが見受けられます。
1つ目は近代型の生産量を重視した合理的、工業的な農業。テクノロジーの発展を基軸としたこの農業モデルは基本的にEUや世界の市場をターゲットにした生産を行っており、持続可能な農業発展などの課題に対しても技術的な解決策に委ねる傾向にあります。
基本的に生産効率は良いのですが国際的な市場価格変動に左右され出来高の良い年と悪い年の差が激しいのが難点です。近年ではこのような産業化した農業者達を基準に経営される農協が増えてきています。
2つ目は『百姓農業』と言われる小規模零細ながら、品質面で優れた農産物の生産を続けてきた、もしくは地域市場をターゲットとしてきた農家です。農作物の品質や食料の安全安心に対して関心が高まりつつある今日ではこのような近郊都市の消費者を対象とした流通ルート(AMAP、マルシェでの直売)を有効利用してきた生産者達の方が比較的安定した収入効率良く獲得できているという調査結果も出されています。彼らは常に消費者と直接接し、消費者の声に対して敏感に対応してきたということも強みの一つになっているようです。このような近郊農業の発展は新たな雇用機会の創出にも繋がるでしょう。
また市民農園やコミュニティガーデンの利用に対する需要の高まりや、これらを利用した地方自治体の緑地化政策の広まり等も近年の新たな動きとして注目されています。
一方では政府側も、AOC、AOP、BIO(有機農産物)やラベルルージュなど、産地や品質の高さと安全性を保障する認証マークを取得した農産物の生産や有機農家を目指す新規就農者の育成等の推奨を積極的に謳っています。しかし実際これらの動きに割り当てられた予算は需要側からみれば圧倒的に足りておりず、補助金制度等が新たに作られても政策的な制限が多く利用し辛い場合が多いです。近年では、地方自治体等が主となってこのような動きを財政的、政策的に支えているケースが増えてきているようですが、まだまだ現実はかなり厳しい状態にあるようです。
私は今年51歳になりましたが、子供の頃、ヴァカンスは必ず祖父母の住んでいた田舎で過ごしました。私だけでなく、フランスの都会で育った私と同年代の者の大半は子供の頃、田舎、農村に滞在してヴァカンスを楽しみました。農村の風景、食べ物や農作業の様子など、私達がそこで見たもの、経験したこと、このような五感を通した記憶がフランス人の農村好き、更には美食家な一面を支えてきたのかもしれません。『食』に対する市民(国民)の姿勢がその地域(または国)の文化形成に対して与える影響は非常に大きいです。そのような点から見ると、『百姓農業』を続ける者たちが産直や地産地消による販売システムを上手く利用してクウォリティーの高い農産物の生産を続けていくのは、非常に重要なことだと思っています。
(通訳・編集)服部麻子氏
【コメント】
国内でTPP論議が高まってきた。「賛成」、「反対」それぞれの立場から期待と不安が渦巻いている。将来の日本の生き方を決めるテーマであるから、枠組みに入るか入らないかは十分議論して決めればよい。
昨夜、農業生産法人の勉強会でF教授の話しを紹介した。生産者達は色々な情報が入り乱れて頭の中が混乱していたが、これで将来の方向性が少し整理できたと話していた。確かに規模や環境、歴史、国民性は異なるが、自由化先輩国フランスで起きたことは、やがて日本にも起こるだろうと言うことは理解できた様だ。
彼らは「日本は今の所、技術も信頼性も優れているから、積極的に高付加価値品を作って、海外に打って出よう!」と盛り上がっていた。
TPP論議を契機に、積極的な生産者が各地で雄叫びを上げれば、日本の農はまだまだ活性化する。
2.EU共通農業政策とフランス
フランスでは耕地面積が国土の2/3を占めるのですが、農家経営体あたりの経営面積は作物によってかなり差異があります。平均すると30~40haと言われていますが、シャンパーニュなどの良質なブドウを作る農家や家族経営の有機栽培農家では5ha 以下、穀物農家で200ha以上、羊牧業だと500ha以上の耕地を所有する経営体も少なくないです。
保護貿易を基本としたPAC(EU共通農業政策)加盟国の中でフランスは、最も多額の補助金を受け取ってきた国です。これまでの補助政策は生産農家の総収量ではなく耕作面積によって割当額が変わる、つまり耕地面積が広いほど沢山の補助金が直接農家へ支払われる仕組みになっていました。結果としてフランスではEUから支払われる補助金の80%が全体の僅か20%の農業経営体に支払われるという矛盾が生じていました。
統合後、順調に発展し続けてきたEU圏の経済は、リーマンショックを節目に成長が鈍化し、新たな成長先(貿易相手国)を求めなければ持続的成長できない状態に陥ってしまいました。フランスの得意産業は原子力発電、航空機、高速鉄道、上下水道などのインフラ事業ですが、この分野の成長先はいわゆる新興国(ブラジル、ロシア、インド、中国など)で、基本的には農業国です。インフラ製品を売り込めば当然自由貿易を要求され、大規模生産者は新興国の安価な農産物と戦わなければなりません。
そのような背景に後押しを受けて、EUでは2005年からPAC(EU共通農業政策)の大幅な改革が始まりました。まずはかつて価格保障型であった補助金の支給制度を所得保障型のシステムに変更。補助金も単に耕作中の農地面積に基づいて定額を支給という訳ではなく、農業の手法に関して環境に配慮しているかということも要件に加わるようになりました。これによってパリ周辺農村に多く見られる穀物農家など、これまでPACによる補助金の恩恵によって多いに潤ってきた農家たちは今、新たな経営方針を見直すべく岐路に立たされています。