

今夏の平均気温が観測史上最高と報道されている。冷涼地作物が多い北海道農業は深刻な影響が出ている。主要野菜3品の馬鈴薯、玉葱、南瓜は大雨と暑さで株が弱り、夜間の高温多湿で病害が多発、適期防除が後手に回り、品質や収量低下が起きている。
春から天候不順が続き、生育、収穫が遅れて、8月の出荷量は例年より大幅に減った。中でも馬鈴薯は不作で、相場は一時300円/kg(東京太田/高値)付近まで上昇、今日、8月31日も273円で高値に張り付いている。玉葱は昨年の8月末294円/kgより安い231円。南瓜も昨年の262円から210円に落ちている。スポット的な比較で正確性に欠けるが、生産者から「不作なのに何故安いの・・・」との声が聞こえる。
南瓜は樹が持たないので果実の日焼けを避けるため早切りし、傷まないうちに出荷を急ぐ事が予想される。9月に入ると品質の良くない南瓜が市場に溢れる恐れがある。消費者は猛暑が続き食欲減退、加熱調理が必要な南瓜の販売は涼しくならないと期待できないだろう。まさしく「収量減」「低品質」「消費減」のトリプルパンチだ。
しかし、相場の格言に「谷深ければ山また高し」というのがある。持ち堪えられなかった人が投げた(売った)後は、底を打って暴騰するという意味である。土をキチンと作り、根を張らせ、しっかり管理して育てた南瓜は、普通の南瓜より日持ちが良い。収穫後、きっちり乾燥させ、送風機で風を動かしながら最低温度7~8℃を目安に管理すれば、相場が上がってくるまで十分貯蔵できる。
今年の様な荒れ年は、基本をキチンと実行している生産者にはチャンスと思われたが、今夏の異常高温は耐久度の限度を超えてしまった可能性もある・・・
玉葱は高温多雨の年は貯蔵中に腐敗が進みやすい。畑の状況と過去の病気の発生状況を考慮して、将来の高値を期待せず、そこそこ価格ならば「見切り千両」。腐っては元も子もないから来年に期待したい。
馬鈴薯は大幅な減収が懸念されるが、価格である程度埋め合わせが付くかも知れない。大豊作、大暴落で精算金が残らない年よりはマシ・・・との考え方も出来る。
いずれにしても、トレンドとして地球は高温化に向かっている。従来の考えは通用しない可能性が高い。
異常な酷暑が続いて夏秋果菜の樹と根は、疲れ果てている。
高温時はこまめに潅水して地温を下げ、作物に水分を与えて衰弱させない様に留意し、涼しくなるのを待つ。今の時期にやるべき事は生育条件が回復してきた時に、如何にスタートダッシュをかけられるか準備することである。基本は環境悪化によって低下した作物の生命活動を活性化し、発根させ、成長環境を再整備することである。効果が期待できるのはイオン化ミネラルと酵素である。肥料分は活力を取り戻してから与える。
希有元素を含むイオン化ミネラル(ミネラルバランス)は発根、栄養成長、花芽分化、着果、肥大、着色など植物の生命活動を司る酵素を活性化させるので、弱った樹の草勢回復にお奨めしたい。今年の様にダメージが強い場合は、初回に反当2㍑、その後1週毎に1㍑を潅水に混合流し込む。樹に回復の兆しが見えてきたら養分として動物性アミノ酸(フィッシュソリブル)反当4kgを流し込む。これで、後半戦に収量を上げる基盤が整う。
酵素系を使う場合は「ハイパー酵素」反当4~5㍑を潅水に混合して流し込む。この時、原液1㍑当たり尿素0.3kgを混用するとなお良い。間隔は7~10日毎。
作物が弱ると病害虫が付きやすくなるので、亜熱帯植物発酵液「ネマコートS」500~1000液を葉面散布する。彼岸を過ぎると日長が短くなるので秋落ち対策として週に1回1000倍で散布する。
順調に生育している場合はあまり余分な事をする必要も無いが、ピンチに陥った場合は思い切って万全の対応策を実施した方がいい。みんながピンチな時にチャンスは大きい。
高温対策については 作物別実例→果菜類→トマトの頁に少し書いた。北海道では6月から予期せぬ異常高温が襲い、まだ遮光材の準備をしていなかったため、大きなダメージを受けた人もいる。盆を過ぎても未だ30℃を超す真夏日があり、収量、品質低下に歯止めがかかっていない。
岐阜県飛騨の農業法人Aは数年前からトマトハウスの高温対策に取り組んでいる。助成金が出て色々試したが、本格的に導入すると資金や手間がかり、収益が低迷している時に導入は厳しい。自分の手持ち「経営資源」をチェックして、注目したのが豊富な冷たい山水。ハウス内で水をミスト状に高圧噴射して気化熱を奪い室温を下げる方式は通常のハウスでは効果が期待できる。しかし当地は雨除け簡易(解放)ハウスが多く効果が限定的。そこで考えたのが空気の冷却をハウス外の上空で行い、対流、つまり微風を起こさせる方法。ハウスの上空4~5mの位置(画像参照)に2m間隔で冷水を噴射させる。細かいミストを作るには高圧ポンプや配管が必要だが、手持ちの潅水用低圧ポンプとチューブで十分対応できる。上空空気層の一部が気化熱で冷やされると収縮し下降するので対流、つまり微風が起こる。昼間、太陽熱で高温になった土壌からの輻射熱で夜になっても作物周辺に熱が籠もりやすい。対流で上空の冷えた空気が降りてきて空気を動かし温度を下げる。
最初はおまじない・・・みたいに見えたが、今年の様な高温が続くと「御利益」があるとF社長は自信を深めている。噴射口の間隔は4~5m間隔でも効果がありそうだ。
来年は土中に熱交換パイプを敷いて春先は温水を流して地温を確保、夏は冷水を流して土中冷房し、長期安定収穫を目指す。
春先の低温、日照不足で出遅れ、異常高温、ゲリラ豪雨など気象災害に次々と見舞われている。特に盆前からの猛暑は作物の生育や農家の経営に大きな影響が出ている。市況が堅調なのが救いだが、前半に予定していた収入に届かない生産者も多い。
しかし、中には異常気象に備えて、手堅く対策を立て、ダメージを最小限に食い止めている生産者もいる。
移植する果菜類に共通して大切なのは、定植初期の根張りダッシュである。
若手トマト生産者Fさんは、早く成長させようと定植後のハウス夜温を高めに管理してきた。反収12トン(通常は9トン程度)取りを狙って、今年から定植直前に苗床の温度を下げ、地温の上がった日に定植、活着したらハウスの夜温を低く管理した。(但し霜に注意し、夜風が吹き込まない様にする)普通に考えると夜温を下げることは勇気がいるが、経験上、トマトではこの方法で好結果を出している生産者を見ているので奨めてみた。先週電話があり、今年は天候不順に拘わらず昨年以上に調子が良いという。ただ苗床の温度を下げすぎたので下段の果形が乱れた。それ以降の着果、果形は見事で、肥大も順調、課題の12トン収穫、秀品率向上も射程内。初期から夜間は低温気味にすると光合成された物質が樹体よりも根張りに向かい、しっかりした土台を作って、日照が多くなり成長ステージに入ると十分な吸肥力、吸水力を確保できる。果実肥大期は、夜温が低めの方が樹体から果実に養分が転流しやすく、葉がコンパクト、立ち葉となり、日照不足に強くなる。どの位の夜温に管理するかは、作型や条件が異なるので一概には言い難いが、イメージとして頭に入れておくと役立つ。
「夏の夜は涼しい環境でゆっくり休ませる」
しかし、今夏は夜になっても高温が続いているから、日が落ちてからも循環ファンを回して放熱する心遣いが必要だ。
秋になって気温が下がってきたら、夜温を下げすぎると割れの発生が多くなるので、昼間は換気を十分に行い、夜はハウスを閉めて、寒暖差を少なくする配慮が必要となる。
8月13日の日経新聞によると、野村ホールディングスが農業ビジネスに進出し、自社農場を経営する一方、自治体や地方企業に資金を貸し付け、農業の専門家(大学教授など)に委託してコンサルティング業務(有料)を始めるという。従来、JAが組合員である農家に類似の業務を提供しているが、こちらは投資元も投資先も利潤を追求を目的とする民間企業であることが注目である。
現状の農家金融は殆どJAの手中あるが、最近、地方金融機関も地場産業や小売業が低迷、融資先が細り、殆ど手の付いていない農業分野に食指を伸ばしている。
マスメディアを始め世間では「農業は有望!」という認識が広まりつつあり、農業関係の仕事と話すと「将来性があって良いね・・・」と羨ましがられる事がある。食糧不安、穀物や野菜高騰、所得保障方式の導入など部分的なニュースを見ての反応だ。
しかし、全国的に季節を問わず、日照不足やゲリラ豪雨、異常低温、異常高温が繰り返され、農業を直撃している。気象予報士に言わせれば「異常気象という言葉は無い。それが普通の天候だ」ということになるが、実感として従来では考えられない気象災害のリスクが高まっている。世界のニュースを見ていてもこの状況を否定する人は少数だろう。
どんな事業をしてもリスクはあるが、残念ながら最近の農業は気象災害の多発とデフレ圧力でハイリスク、ローリターン傾向に陥っている。夏秋野菜は今が稼ぎ時だが、産地の東北、北海道では記録的な日照不足、大雨、異常高温などで地区によっては厳しい秋となりそうだ。従来の家族経営ならば我慢して何とか年を越せるが、多額の資金を借りて機械や設備に投資し、人件費を使う農業は今後のリスク管理に一考を要する。
農業から脳業へとパソコンのキーボードを叩いて理論とデーターで組み立ててみても、予期せぬ破天荒な自然の洗礼には到底勝てない。農家は先ず、自分の持っている経営資源をどう活用し、競争力を確保するかが最重要課題であり、資金を投じるのは課題をある程度クリアーしてからでも遅くはない。
農業ビジネスに参入した企業のM&A(買収、売却)撤退が盛んになっている。これらは企業の投資資金か投資家から集めた資金だから参入も早いが撤退も早い。多くの場合、失敗してもダメージは少ない。借入金(融資)は自己責任で返済しなければならないから呉々も慎重な対応を要する。
企業の農業進出が鮮明になれば、当然個人農家に影響が及んでくる。法人化して独立経営を目指すか何処かの傘下に入るか、判断が迫られる。
マーケットは既に更に低コスト大量生産、物流競争に向かっている。野村の試みはこれらの再構築を見据えた対応とも読める。
販売を始めて20数年経つ「栗マロン」南瓜が今週、日本テレビ系で幻の南瓜として紹介された。翌日、番組に出演した生産者Kさんから「注文が1日で1000箱近くに達した」と喜びの電話を頂いた。彼が作り始めてから10数年になるが、北海道で一番早く出荷される良食味栗南瓜として高評価が定着し、都内の著名デパート、高級量販店、生協等の定番商品となっている。
当地森町は活火山駒ヶ岳山麓にあり、水捌けのよい火山灰土壌と温暖な気候に恵まれ、元来、美味しい南瓜が出来る条件下にある。Kさんは日本一の良食味南瓜を作ろうと堆肥は一切入れず、元肥に「スーパーランド743」6袋「ミネラルPK」1袋だけで栽培している。しかも、ずっと連作しているが、連作障害の気配は全くない。最近は地力が付いてスーパーランドを減らし気味にしているが玉太りはいい。
肥料を生産している宮崎県で口蹄疫が発生した時には、「家族が肥料の供給は大丈夫か聞いてみて・・・」と言われてわざわざ確認の電話を頂いた。
異常気象でトラブルが多発している中、着果しなければ早起きして花粉を採取し、手交配する並々ならぬ努力が漸く報われてきた。家の前で経営している直売場もこのところ「味」で客が付き、大繁盛している。
トマトの糖度を上げる手段として塩分ストレスを加えて脱水症状を起こさせる方法がある。熊本県八代海沿岸の干拓地で行われている所謂「塩トマト」である。
この原理を応用して北海道上川農業試験場が開発したのがポット栽培塩水潅水方式である。元来、水稲の育苗ハウスの後作で収入が上げられないかというテーマで開発された方式だが、簡便でコストもそれ程かからないので有望である。
画像の様に直径21cmのポリポットに育苗培土を入れ定植する。長段収穫せず、1~2段でピンチ、短期収穫し、次のポット苗を用意しておいて収穫後直ぐに入れ替える。潅水チューブで液肥(化学肥料)と0.1%の塩水を流して育てる。
北海道空知で実験している高糖度トマト生産者Oさんは「潅水が十分出来るので尻腐れの心配は少ないが、食味はあまり期待できないので糖度9~10度位を目標に作らないと厳しいかも・・」と話していた。尻腐れのリスクから解放され、8度以上の高糖度に仕上がれば、急速に普及する可能性を秘めている。
一般的な土耕栽培で水分ストレスを与えて糖度を上げる方式で、壁に突き当たるのが尻腐れや焼け症の発生である。このトラブルが少なくなれば収益は確実に向上するが、今の所、防ぐ決め手に欠ける。主因はカルシウム欠乏だが、カルシウムは水に溶けにくく樹体内の移動速度が遅いので、根の吸収に頼ると水分不足の状態では一寸の油断が欠乏症に直結し、成り玉の多くが収穫不能になる。速効性イオン化カルシウム(ママミアップAM-55)を葉面散布すると予防効果が期待できるが、常時散布していないと効果が限定的となり、あまり頻繁に散布すると葉が固くなり、栄養成長の妨げになる場合がある。
根からの養水分吸収を安定させ、コントロールするには土壌(大地)と培地を遮断し、潅水で適量の養水分を補給する方式が実施されている。イチゴ栽培では立ち作業の省力化が図れるので、各種方式の普及が進んだ。
トマトでは遮根シート方式、樽やポット、バック(袋)に培土を入れて、潅水チューブで養水分を供給する方式が実用化されている。しかし、養液は殆ど化学肥料が使われ一般的に味が劣ると言われている。本来の土耕栽培に近い状態で育てた高糖度、良食味トマトができないか・・・2007年からチャレンジしている。
群馬県高冷地でトマト観光農園を経営しているSさんが樽栽培を2年試験したが、土耕より味が劣るので「もう諦めた・・・」というので試験ハウス1棟を拝借して実験を始めた。
培土は従来使用していたココピートを使い、良食味を実現するため動物性ぼかし肥料(スーパーランド673と根づくり名人)を混合して培土を作った。少量の培地内で細根を沢山張らせ、水の腐敗を防ぎ根酸、ガスを吸着浄化するために熱帯植物炭(ホットマック)を使用した。少量の培地で安定して養分を供給し、草勢を維持、収量を上げるには、最大どの位の肥料分が混入可能かテストした。肥料養分は
① 培土に混入する元肥
② 底部に置き肥
③ 中心部の筒に置き肥
以上3通りを組み合わせて反当窒素成分量5/8/12/15/20kgで実験した。目的はどの位の施用量まで根がガスや濃度障害に耐えられるかを知るためだが、反当換算で窒素20kg入れても何ら障害が起こらないこと、正常に生育し草勢バランスも良いことを確認した。
2年目はトマト本来の味を引き出し、培地水分を安定させるため、ココピートをやめヤシガラ堆肥をベースに山土を混用し、低温下の初期生育を確保するため若干の化学肥料を添加、反当換算窒素成分量20kgで培地を作った。潅水は土の持つ希有元素を補うため岩石抽出ミネラル「ミネラルバランス」を2週間に1回、草勢を見ながらカツオ発酵エキス「フィッシュソリブル」を混用した。結果はお客様(観光客)から従来の土耕栽培より格段に美味しいとの評価を頂いた。ただし、夏の高温対策が不十分だったため、樽の温度が上がり、9月に入ると根が弱って長期収穫は出来なかった。
2010年、北海道で樽栽培高糖度トマトに挑戦している農業法人A社長から、現状では良い結果が出ないと相談され、群馬の例をベースに取り組んだ。培地はポット苗用培土に「バランス684」「根づくり名人」「ホットマック」を混用、潅水にミネラルバランスを混入した。
スタートから食味の優れた高糖度トマトが取れたが、異常高温対策をしていなかったため道内を襲った季節外れの高温(34℃)で根が弱り、水を絞っているため尻腐れが多発、7月中旬に抑制栽培に植え替えた。8度程度の糖度確保と良食味が確認できたので、後半に期待している。樽部分をシルバーシートで覆い培地の温度上昇を防ぐ一方、尻腐れ防止、糖度向上のためイオン化カルシウムミストの定期散布と「いそしおにがり」の潅水も併用している。
品種に合った気候、土壌など基本的な条件が揃わないと競争力のあるおいしいトマトの安定生産は出来ない。しかし、最近は土壌にこだわらず、人工培土養液栽培で育て、水分、塩分ストレスを与えて高糖度を実現する試みが盛んになっている。
一般論としておいしいトマトはエキス分が濃厚で、糖度が高い事が条件となる。完熟させればこの状態にある程度近づくが、日持ちがしない。色が出始める前にエキス分が濃厚になり糖度が上がる事が望ましい。トマトは多くの場合、多段連続収穫するから栄養生長+生殖成長を同時進行させねばならないから養水分管理が最も重要になる。水分が多いとエキス分、糖度が上がらないから基本的には適度な乾燥状態に維持出来る土作りが求められる。
また栄養成長を司る窒素と生殖成長を司る燐酸、加里、カルシウムなど微量要素の補給タイミングは、樹の状態を見ながら行うのが理想ではあるが、この技術を極めるには経験が必要なので、先ず養分バランスの良い土作りと根張り、潅水技術をマスターすることが肝要である。
どの位のレベルがおいしいトマトかと問われると一概に答えにくいが、産地を歩き、店で売っているトマトを食べていると大体、そのレベルが分かる。高糖度を目的に作っているトマトは多くの場合潅水を控えているので、エキス分は濃厚だが果皮は硬い。塩分ストレスを与えている塩トマトもその傾向があるが、ミネラル感があるので前者より美味しく感じる。好みの個人差もあるが、食べる時に程よく色が乗ってエキス分が濃厚になっていて、適度に酸味を感じるモノがおいしい。収穫後、熟成させることにより強い酸が抜けアミノ酸が多くなり、まろやかで美味しくなる。近頃、低温輸送流行であるが、本来は常温で輸送中に熟成させた方が味は良くなる。栽培法から言えば時間をかけて十分に光合成をさせ、ゆっくり生育、熟させたモノが美味しい。夏の高温期は直ぐに着色してしまうから、本当においしいトマトを作るには標高の高い高冷地で作らねばならない。
北日本を中心に水田転作で夏秋トマト産地が増えたが、基本的な水捌けや土質を考慮しないでハウスを建てた生産者は、安定して高品質トマトを作ることは厳しい。特に近年、想像を絶する集中豪雨が発生し、地形によっては暗渠から水が逆流し、浸水する例が出ている。本格的に高糖度を狙うには「水捌け」「土質」を再チェックしないと、収益は上がらない。
水を切った場合、ハウス内で生育差が目立つ圃場は向かない。生育差の原因は土地の傾斜、土質、保水性のバラツキ、潅水チューブの圧力差、雨水や地下水の染み込みなど様々である。これらを解決するには時間とコストがかかるから、コスト対効果を慎重に検討した方がよい。土台が出来ていないのに、無理をしてハードルを高く設定しても結果は得られない。供選はともかく、個選売りでは食味で評価されるから身の丈にあったポジションで問題点を解決しながら、土台を整備しつつハードルを上げて行くことをお奨めする。高糖度トマトを何とか作れる様になるには5年、10年作っても天候によっては失敗するリスクが付きまとう。
乾きが良くない圃場は基本的には向かないが、春先の地温を上げて水分の蒸散を促し、根張りを良くするにはホットマック(熱帯植物炭)を散布する。しかし、栽培途中で土中から水が染みこむ圃場は、手の打ちようがない。ハウスの間にビニールシートを引いている例もあるが、近年のゲリラ豪雨にはお手上げである。
土作り、施肥の要点は、堆肥、化学肥料を控え、じっくり肥効の動物有機ぼかし肥料を通常より多く施用し、根張りをよくして少量の土壌水分でも養分が安定して吸収できる環境を作る。カルシウム、ミネラルの補給は腐植化したフミン酸カルシウム(根づくり名人)、サンゴ要源などが良い。その他、更に食味を上げる海藻肥料も使われている。水分のコントロールを間違えると元も子もないので、基本的な資材でコントロール技術をしっかり磨くことが収益性向上の基本である。
高糖度第一主義で作った果皮の固いトマトではなく、子供の頃かぶりついて食べたあの「食感」「酸味」「旨み」「香り」・・・を切り口としたトマトを、北海道ニセコ高原で作り、7月下旬から出荷を始めた。今年はお盆前まで夜温が高かったため糖度は5.5~6.0度だったが、お盆を過ぎると夜温が急激に下がってくるので6.5~7.0度程度に上がり、格別旨くなる。
トマトの美味しさは、糖度(甘み)、酸度(酸み)、食味(旨み)、肉質(食感)などで評価される。
生食用では、数値が計りやすく、誰にでも説明しやすい糖度が云々される。酸度、食味、肉質は各人の好みもあるから、先ず「糖度」である。「食味」が良ければ糖度は・・・」という意見もあるが、実際の商談では食味は曖昧なので相手が会社組織では通用しにくい。
サイズ別に「大玉」~「中玉」~「ミニ」の順で糖度が上げやすい。難しいのは大玉高糖度で、8度以上を「フルーツトマト」と呼んで別格扱いになる。7度台は普通の栽培でも条件が良ければ到達できる水準だが、8度ラインを常時維持するには高度なコントロール技術が必要で、その良否が収益性を大きく左右する。
「何故大玉品種で8度以上なのか?・・・」とあるホテルの料理人に尋ねたことがある。答えは同じ糖度8度でも中玉、ミニでは本来のトマトのコク、食味、食感が劣る。7度台では殆どお客様へのインパクトが無いという。「甘み」だけではなく「酸み」「旨み」「食感」のバランスが大切と言うことだ。スペシャル料理のトマトソースやサラダに使うのは、未熟青トマトで高糖度、高酸度のモノが欲しいという料理人もいる。しかし一般農家は、特殊モノでは商売にならない。癖のあるトマトが腕の良い料理人の手にかかると、感動の味になることは分かる。銭金を別にすれば、こういうトマトも道楽と割り切れば作るのも楽しい・・・
経営視点で考えれば、如何にシンプル、低コストな作り方で収量を上げるか、手間をかけても良食味、高糖度を目指すかの二極化になる。一般論として、トマトは収量を重視すれば味が犠牲になり、良食味、高糖度を優先すれば収量が落ちる。需要減少、価格下降社会でどのポジションを目指すか判断を迫られている。
元来、コスト高で、構造的に需要が下降している日本では、単に収量だけを追求しても未来はないだろう。しかし、多くの生産者は価格が上がらないから収量でカバーしようと考えている。ブランド産地はともかく普通の供選産地は特にこの傾向が強まっていることは、自ら墓穴を掘る可能性がある。反面、トマト栽培に進出している企業の多くは、高糖度、高付加価値を目指している。本来は、逆だと思うが・・・
品種の選択で高糖度トマトが作れれば答えは簡単ではある。
(大玉)
大玉~中玉系を交配し、高糖度品種の開発が進んでいるが、私の知る限りでは決定打は出ていない。作物である以上、その年の気候や栽培時期、土壌、肥培管理などの条件が大きく係わるから一概に品種の優劣が判断できない。高糖度を狙うには多くの場合、水切り、塩分ストレスを加えるので、着果、生理障害(尻腐れ、焼け)、割れ、耐病性、一果重、商品化率、収量などクリアーしなければならない項目が多い。
北海道の高糖度トマトは(T-93)が多いが、ハウス桃太郎、桃太郎ファイト、エイト、麗夏などもある。熊本県内干拓地の塩トマトは品種に拘らず、一般品種で作っている。
地域や時期によっては、糖度は上げにくいが食味の良いファースト系を好む生産者もおり、品種はまちまちである。聞くところによれば、静岡、愛知、高知などはマル秘?の品種があるというし、群馬県も高糖度品種の育種に力を入れている。
日持ちの良い堅い品種を樹成り完熟させて糖度、食味を上げる方法も増えている。流通側では、販売ロスの少ない堅いトマトを歓迎する傾向にあり、消費者もその方向に慣らされつつあり、余り味のない堅いトマトをドレッシングをかけて食べる。しかし、堅いトマトではなく、昔の様にゼリー部分が多く、糖度はそこそこ、食味、食感が良いリバイバル品種も復活している。関東の一部量販店では通年で昔味トマトを契約栽培している様だ。大規模生産には耐病性があり、日持ちの良い堅い品種、消費地に近く完熟収穫、即日または翌日販売可能な量販店、直売場は良食味、良食感品種がいい。
(中玉)
輸入を含めて品種が揃ってきた。低温期の栽培は成熟期間が長いので比較的、糖度や味が乗りやすく安定するが、高温期に入ると品質維持が難しくなる。その為か特定ブランド品はともかく全体的に中玉に対する消費者のイメージはブレている。中玉品種の普及スタート時点で糖度の低い加熱調理用トマトが店頭に並び、そのまま生で食べた消費者の不評を買い、評価を下げた点は否めない。生食用品種の糖度も低く、バラツキも多かった。中玉の時代が来ると期待されたが、その割に販売は伸びていない。加熱調理用品種を地道に作っている産地もあるが、道半ばである。日本では消費者の生食~調理用のポジションが定まっていない。
2009年から熊本でラブリー40、北海道でシンディースィートを栽培し、中玉品種のリレー販売を始めた。冷涼な北海道と言っても7月下旬~8月上旬の高温期は品質低下リスクが大きい。そのため標高の高い富良野市麓郷で試作を始めた。結果はまだ出ていないが、シンディースイートはあまり水を絞らなくても糖度9度前後に上がり、食味、食感も優れている。高温対策をすれば高糖度、良食味トマトとして拡販の余地が十分にあると思う。
(ミニ)
高糖度品種が揃っており、作り方を間違えなければ糖度は8~9度位は乗る。収量もあり、味のバラツキも少なく、品種上の課題は割れの発生以外は少ない。高糖度(11~12度)、低酸度をコンセプトとした「トマトベリー」も各地で作られる様になり、品種の選択肢は広がった。欲を言えば更なる食味と食感の改善だが、特に果皮が硬く口に残ると食味、食感を害する。果皮が柔らかく、残りにくい品種「恋まる」を熊本、北海道で試作し、2009年からリレー販売を始めた。草勢管理の仕方で品質がブレやすい欠点があるので生産者を限定して作っている。糖度9~11度程度になり、酸味バランス、食感についても消費者から好評を得ている。栽培法を工夫しないと収量は落ちる。
最近、人気が出てきたアイコは、初期から草勢を穏やかに作れば、高糖度(8~10度)、良食味で収量も期待できる。熟すと蔕が取れやすいので、樹熟させて全部蔕無しで販売することも選択肢である。