

2.EU共通農業政策とフランス
フランスでは耕地面積が国土の2/3を占めるのですが、農家経営体あたりの経営面積は作物によってかなり差異があります。平均すると30~40haと言われていますが、シャンパーニュなどの良質なブドウを作る農家や家族経営の有機栽培農家では5ha 以下、穀物農家で200ha以上、羊牧業だと500ha以上の耕地を所有する経営体も少なくないです。
保護貿易を基本としたPAC(EU共通農業政策)加盟国の中でフランスは、最も多額の補助金を受け取ってきた国です。これまでの補助政策は生産農家の総収量ではなく耕作面積によって割当額が変わる、つまり耕地面積が広いほど沢山の補助金が直接農家へ支払われる仕組みになっていました。結果としてフランスではEUから支払われる補助金の80%が全体の僅か20%の農業経営体に支払われるという矛盾が生じていました。
統合後、順調に発展し続けてきたEU圏の経済は、リーマンショックを節目に成長が鈍化し、新たな成長先(貿易相手国)を求めなければ持続的成長できない状態に陥ってしまいました。フランスの得意産業は原子力発電、航空機、高速鉄道、上下水道などのインフラ事業ですが、この分野の成長先はいわゆる新興国(ブラジル、ロシア、インド、中国など)で、基本的には農業国です。インフラ製品を売り込めば当然自由貿易を要求され、大規模生産者は新興国の安価な農産物と戦わなければなりません。
そのような背景に後押しを受けて、EUでは2005年からPAC(EU共通農業政策)の大幅な改革が始まりました。まずはかつて価格保障型であった補助金の支給制度を所得保障型のシステムに変更。補助金も単に耕作中の農地面積に基づいて定額を支給という訳ではなく、農業の手法に関して環境に配慮しているかということも要件に加わるようになりました。これによってパリ周辺農村に多く見られる穀物農家など、これまでPACによる補助金の恩恵によって多いに潤ってきた農家たちは今、新たな経営方針を見直すべく岐路に立たされています。
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