

北海道の量販関係者は、道内消費はどん底が続いているから、これ以上は落ちないだろうと自嘲気味に語る。昨年の高値から単価はそこそこで維持しているから今の所、売り上げは目標には届いていないがそれ程悪くはないようだ。夏秋野菜の道外出荷は、産地、消費地共に変動要因が大きすぎて、その時でないと見積書が書けないという。
東京の販売関係者Sさんは「放射性物質」問題が重荷で、先行きは読めない。様子を見ながら商売してゆくしかないと言う。特に関東圏の野菜産地に再び基準値以上の「放射能検出」ニュースが流れたら・・・と警戒する。
近所の量販店は年金支給日、給料日後を除けば相変わらず、活気がない。一方、駅構内で地場野菜を中心に販売している青果会社は「毎日お買い得」で繁盛している。地元産が中心だから鮮度も良い。葉物、果菜類、果実類が店に山積みになっている。小規模こだわりは、店舗、引き売り、宅配も増え、競争が激しくなってきた。「売れない」環境でどう売るか・・・あの手この手の模索が続いている。
自動車産業(トヨタ)回復で中京圏は以前の活気を取り戻しつつある。名古屋駅前のグルメ街はサラリーマン客で繁盛している。この一角はB級グルメ街と呼ぶ人もいるが、安くて美味しい店が多い。
量販店は相変わらず、熾烈な価格競争の実態は変わっていない。何処でこんなに安く仕入れるのかと思う野菜が特売で並ぶ。渥美、知多、岐阜、長野など周辺には産地が多い。東京、大阪で余った野菜が名古屋に集まり、処分されるという裏話もあるが市場価格は確かに安い様だ。市場買いで相場の安い時の「安売り」は理解できるが、生産者と値決め契約している競合店は厳しい。担当者の話では、トマトの様に味で差別化できる商品も売価を下げて売る。競合店がそれ以上安くても味が良いことを知っているお客様は、喜んで買ってくれるから売れ残らない。青果はロスを出さないことが鉄則と言い、この方針は曲げていない。
JAS有機野菜など「安全、美味しい」がコンセプトの店舗責任者は、この所の不況で「安心、安全」は神通力が後退、客足が2割落ちたと言う。通常量販店でも安全イメージの看板として有機野菜を置く店が増え、専門店は有機にプラスする別のコンセプトが求められている。プラスキーワードはこの店にしか売っていないオリジナル商品。毎回チョビチョビではなく、1回にまとめて買って頂く割安提案が売り上げを伸ばしていると言う。箱売りのフルーツトマトなどは可能性がある?
都内でホテルや高級レストランに野菜を卸している業者は、6月に入って4月、5月の最悪期は脱したと話す。都心の高級レストランは(金)(土)の週末は忙しいが、ウィークデーは厳しい。病み上がり、まだ本調子ではない。
博多で8年ぶりにお会いした業者に最近の傾向を聞いてみた。
「状況は8年前とは様変わりしています。当時はシェフ達が、美味しくて珍しい物があったら何でも紹介して下さいという時代でした。実際、高価な食材でも使ってくれました。ところが今は、経営権が外資に移ったホテルが増え、殆どが見積もりです。品質はあまり関係なく価格優先です。トマトは普通のトマトでOKという感じですね・・・。全部のホテルとは言いませんが、メニュー単価から食材単価が決まり、徹底的に詰められますから厳しいです。もっとも、最近の宿泊客は街で夕食を楽しむことが定着していますから、朝食用か結婚式や会合などの需要がメインです。ホテルと言っても提供単価が高く設定できませんからお互いに大変です。和食は見積なしで食材にこだわる料理人が多いのでまだ張り合いはあります。博多は屋台文化の街ですが、屋台が規制され家賃の安い路地裏?でイタリアンやフレンチ、スペイン料理店などが増えています。彼らはコストよりも料理人のプライドにかけて食材にこだわるから、付き合うのが楽しいですよ」
小生は博多の路地裏?レストランのファンで、九州の帰りに必ず博多に立ち寄る。前回は和食、前々回はスペイン料理。ビックリするレベルの高さと勘定の安さは食を大切にする「博多っ子」の心意気が支えている。
中流から中の下階層に移行する社会では当然、低価格品が求められる。対応できなければ海外農産物に市場を奪われる可能性がある。
一般品、高付加価値農業のどちらを選択したら良いかは生産者の「経営資源」により異なる。一般品生産の大多数JA出荷者や大規模生産者は低コスト大量物流の傘下に入り、安定した販売先確保を優先すべきである。需要減少の中で更に自由貿易で海外農産物と戦うには、先行して販路を押さえ、情報を取り入込みながら速やかに対応して行くことが不可欠である。
数量確保と安定供給力が劣る一般品個人生産者は早めに統合して農業法人、出荷組合(グループ)を組織し、生産、物流両面で効率を上げ競争力を強化しなければならない。
個性的高付加価値農業に転進する場合は、事前に栽培、販売両面から十分検討し、競争力があることを確認してから取り組まないと、途中で方針がぐらつき成功に結びつかない倍がある。
今後、日本農業が世界を相手に戦える分野は「個性的高付加価値農業」である。目先ではなく、じっくり腰を据えて多角的に検討して取り組みたい。
伝統野菜など「美味しい野菜」の品目開発、定義付け、規格化と販路サポートを目指しているNPO創立者A氏が昨年理事長を退任され、メールを頂いた。A氏によれば創立当初(十数年前)に販路として想定していた量販店や外食企業を取り巻く環境が激変してしまい、建前はともかく、流通側の本音が「価格最優先」に切り替わり、テーマへの関心が薄れてしまったと書いている。初期のセミナーには量販店、外食、物流関係企業が多数出席し関心の高さが窺えたが、最近ではこの分野の人達は殆ど姿を見せない。この傾向は流通業界の中でも特に「味」にこだわってきたた大手小売業Sホールディングスカリスマ経営者が「時代は価格優先に変化した」とのコメントと連動している。
「美味しい野菜」の需要拡大に期待して集まった関係者は10年の歳月を経て変質した消費環境に無力感が漂う・・・・
安価、大量販売を基本とする量販店や外食企業の多くが、「美味しい」よりも「安い」を優先する中で、今後、伝統野菜や高付加価値農産物分野をどう組み立て直すかが問われる。
地方都市を中心に「地産地消」の流れが起こり、朝市(マルシェ)、直売場、食のイベントなどが盛んになっている。しかし、大多数の消費者、大規模専業農家は縁が薄く、経済的インパクトは極めて限定的である。
消費地で「食」の崩壊が進行していることは度々取り上げられている。農水省の統計によれば一人当たりの年間野菜消費量は昭和50年の約111kgから右肩下がりで最近は93kgと約16%も減少している。高齢化が進み、食と健康の情報が満ち溢れている日本で野菜摂取の重要性は十分を認識されている筈だが、消費の実態はお寒い限りである・・・
家庭で調理する時間がない、面倒だからと取り敢えず外食、簡易食、惣菜、弁当、野菜ジュース、サプリメント・・・に需要が移っている。
利便性重視社会は最早、止められない。「美味しい野菜」「簡単に食べられる」二つセットの切り口で考えないと消費者はついてこない。。「美味しいモノを作れば・・・」と関係者が考えている程、現実は甘くはないだろう。
量販店のコストカットで商品説明の出来る店員は殆ど見かけられなくなってから久しい。価格最優先になっている環境では「美味しい野菜」の提案は難しい。料理番組やネットなど情報源はあるが、本当に美味しい野菜料理の材料入手手段は限られる。
究極はやはり「人間の伝達力」である。一時「野菜のソムリエ」が話題になったが、活躍場所は今の所少ない。今年は異常気象で価格が高いが、平年価格では販促に人件費(マネキン)をかけたら採算が採れない。しかし、敢えてマネキン販売に踏み込み、「美味しくて、簡単調理のミニ青梗菜」で新規顧客を開拓した取引先がある。
ミニ青梗菜は特別目新しい野菜ではない。店頭に置いても目的客以外は買い物カゴに入れない。当然、売り上げは固定化し伸びない。この商品のポイントは「簡単調理!美味しい黄緑野菜」。マネキンが店頭で約30秒熱湯ボイルし、試食させる。「手軽さ、美味しさ、黄緑野菜=健康」イメージが受けて新規顧客を掘り起こしている。客層は若年~お年寄りまで幅広いという。
1店舗の試験販売から始めたが、野菜の売り上げが低迷する中で着実な販売増が社内のネットワーク(パソコン)上で注目され、当初関心を示さなかった店からも次々とマネキンの派遣要請があり、リピーター顧客が育っている。
当初、美味しいから絶対売れると読んでいたが実際は苦戦、試行錯誤の連続で、この方法に辿り着くまで約4年の歳月が流れた。気が付けば昔、ブランド南瓜を育てたモデルに戻っただけのこと・・・この商品は周年で販売しているから、マネキン代は一時的なコスト「高くはない・・・」と言う。
一例を書いたが、従来のコストカット思考では何処まで行っても価格競争だけ。ツケは流通から生産者、業界全体に回り、利が残らず活気を失う。
「安い」だけでは世界競争には勝てないから生産~流通関係者の連携した知恵が試されている。
産地については別途書く。
⑥まで今後の農業経営を考える上での一助として消費地で起きていることを書いた。今回書いていて感じたことは日本の農業問題は生産地よりも消費地に大きな社会変化が起きているにも拘わらず、政策が後手に回っている現実だ。低所得者が増えうる中「質的に豊かな食生活」を政策として目指さないと利便性と低価格に支配され、固有の食文化とそれを支える農業は崩壊する。
古い話で恐縮だが40数年前、初めて渡米した時に見た光景は、朝からファーストフード店で珈琲やコーラを片手にハンバーガー、ホットドック、フライドチキンなどを食べ、ソフトクリームやアイスクリームをペロリと平らげ、ファミレスでは分厚いステーキ、ハンバーグ、巨大なエビや蟹、山盛りのサラダなどを事なげもなく食べ尽くすアメリカ人の姿であった。その頃日本は、ご飯に味噌汁、沢庵、焼き魚、卵料理などを主婦が台所で作り、家族が顔を合わせて朝食を取っていた。デザートといえばミカンやリンゴ、柿などを食べていた。いつの間にか食べ物は洋風化し、ファーストフード社会になった。都心や郊外の駅前、構内には大手外食企業が運営するハンバーガー、フライドチキン、サンドイッチ、パスタ、牛丼、ラーメン、うどん、蕎麦、弁当、おむすび、カレー、夜は居酒屋・・・考えられる食べ物は殆ど用意されている。こんなにファーストフード産業の発達した国は世界でも日本しか無いだろう。
消費者の意識改革
便利、安価と引き替えに日本の家庭は食卓に求心力を失い、家族の団欒、絆が希薄になってしまった。近頃頻発している自暴自棄事件、高齢者行方不明事件など、以前の日本では希であった。この現象は急激に起こっているのではなく、社会変化によって親子、夫婦、隣人、友人などの絆が弱まり、人間としての存在感が薄れて起きている。
先日テレビで直木賞女流作家K氏がフランスバスクの食と旅番組の中で、家族や友人であることを象徴する言葉は顔を合わせたら先ず「お腹が空いていないか・・・」と尋ねることだと話していた。相手を思いやる最高の言葉は「食」であると言う。
子供の頃、母は訪問客があると先ず食事していくことを勧めた。飯を炊き、あり合わせの漬け物や野菜、卵料理など質素ながら「自家製の食」でもてなした。飽食と言われ久しいが、何時の時代も人間を結びつける原点は生きることに欠かせない「食」であり、国家間でも最高の儀式は最後の「晩餐会」と決まっている。「食」を粗末にした家庭や国家は滅びる。
最近、いろいろな人達が「農」を論じるが、その前に自分達の「食」を考えてから「農」を論じてもらいたい。
国民一人一人が「食」の大切さを認識すれば、巨大資本つまり「世界最安値」農産物の支配はある程度食い止められる。日本は貿易立国を前提としなければ衰退する。農産物の市場開放は好むと好まないとに拘わらず必須だ。既に韓国などと比べて「農」の足枷で自由貿易の対応が出遅れ、今後の産業競争力の低下が懸念されている。
生産者の意識改革
韓国はEU間でFTA(多国間自由貿易協定)締結が決まり、段階的に関税が撤廃され自由貿易時代に入る。韓国は日本や中国に対抗するため、産業も農業も競争力のあるモノに特化、集中投資して、弱いモノは捨てた。農業は労働生産性の高い施設園芸に莫大な予算を投入し、一部の農産物は過剰生産に陥ったが、ノウハウや機材、資材産業は今や日本を凌ぐ。ただ、積極的に市場開放したため、外資が国内企業を制圧した面もあるが、成長する中国を始めアジア圏の市場を開拓し、既に日本より優位に立っている。勿論、彼らが国内で目指しているモノは徹底した工業化農業、低コスト、大量生産方式である。競争力のある農業を育てれば、そのノウハウを持って成長する新興国に進出できる。日本の生産者が視察に行って、規模の大きさや熱気に驚くのは、韓国に世界標準のダイナニズムが起きているからである。
秋本番、韓国ではキムチを漬け込むシーズンを迎えた。今夏の異常高温で白菜の生育が悪く、中国から緊急輸入したが、中国産白菜では伝統の韓国キムチが出来ず、困っているというニュースがあった。中国製のパック入り漬け物を安いからと言って食べていた国は情けない・・・もっとも韓国でも中国製のキムチもどきが出回っているようだが。
狭い国土の殆どがゼロメートル以下のオランダは世界に冠たる通商国家、農業大国だ。チューリップ、バラ、ガーベラなど花卉類やパプリカ、トマトなど施設園芸が盛んで、EU域内はもとより世界中に輸出されている。花卉類は世界流通の中心地の一つと言われ巨大な市場がある。お馴染みのパプリカは日本に相当量輸出されていたが、最近は輸送のハンディーもありい韓国にシェアを奪われた。
何処の国の生産者も熾烈な競争が続いている。
私が暮らす街は安価なモノは沢山あるが、美味しい食材を手に入れるのは苦労する。八百屋、魚屋、肉屋などの専門店は安値競争に負けてほとんど姿を消した。都心か中核都市にある高級量販店かデパ地下へ行かねばならない。しかし、車では混むし、駐車で苦労する。電車で行けば荷物が重いから中高年には、足が重い。一時、味や新鮮さを売りにした野菜直売場が増えたが、スーパー、JA直売場などが次々に参入、安値競争に巻き込まれ、農家の高齢化も進んで農家の直売場は姿を消した。
最近、美味しいモノを売る店として注目しているのは、比較的若い世代が立ち上げている「小規模こだわり食品店」だ。残留農薬騒ぎで「自然食品店」などと称する「安全性」を売りにした店が増えたが、今度は「ブランド、伝統の味、本物の味」など「美味しさ」を売りとした店が客の支持を集めている。
彼らはネットや宅配便を駆使して全国の銘産品、こだわり食品を仕入れ、地元の農家とも組んで「地産野菜」を販売している。キーワードは「国産→美味いモノ限定→1箱単位仕入れ→1個バラ売り→欠品あり」である。肉は冷凍品だが、黒豚、地鶏など、産地、生産者に拘り冷凍でも美味く、いつでも安心して食べられる。ハム、ソーセージ、卵、牛乳、チーズ、バター、魚肉製品、豆腐、醤油、塩、油・・・地ビールや地酒、地方の昔懐かしいお菓子など気ままに置いている。食に凝る輩には思わずニンマリする商品に出会うこともある。少数客が対象だから商品は常時あるわけではない。電話予約しておけば、閉店してから配達してくれる。高齢者や勤めに出ている客には利便性が良く好評だ。日持ちがしない商品は、注文がまとまってから仕入れて販売するのでロスは少ない。本当に美味しいモノを食べたい客は我が儘を言わず入荷するまで待つ。
野菜や果実類は化学肥料、化学農薬不使用栽培または特別栽培。一般的に見栄えは良くないが味は確かである。費用のかかるJAS認証は取得していないが、生産者と店の信頼関係ででお客は充分納得できる。現在市販されている葡萄(巨峰など)は殆どがホルモン処理した種なしであるが、ここで売られているモノは味にこだわって昔風?濃厚味の種付き葡萄である。今や種付きは市場で敬遠され出荷が少なく、探すのに苦労する。こだわり生産者の直売、ネット販売、生協共同購入などでしか入手できない。ネットでは量を買う必要があるが、ここでは少量計り売りが可能、一房単位で買える。リンゴや梨は1個売り。価格は多少高いが、デパ地下に買いに行くよりは安い。
ヨーロッパの都市は量販店もあるが、デパ地下の様な専門店が入っている建物の中にこだわり品がある。地方では朝市や老舗食料品店があり、それぞれ独自の食文化を守っている。小規模な店が多いが自慢の品が並んでいる。店主や店員の商品知識が豊富で、食材の講釈、調理法などを教えてくれるので、買う意欲も湧く。
日本も価格競争だけではなく、この様な「食を楽しむ」インフラ、「こだわり食品店」がもっと復活すると、生産者も作り甲斐があり、購買意欲も湧く。
若い人の引き売りが駅前などでチラホラ見受けられる。春に川崎市にある若手Mさん(32歳)が経営する「八百屋」を訪ねた。生ゴミのリサイクルボランティアで農家との付き合いが始まり、農業の最大の問題は作ることよりも売ること、つまり収入が不安定であることを知った。収穫した野菜を軽トラックに積み、団地、マンションなどで2年間引き売りして、販売のコツを覚えた。2年前、顧客の紹介でマンション1階に店舗を借り開業した。基本は地元農家から直接仕入れ販売するいわゆる「地産地消」。順調に顧客が増え、種類も色々な要望が多くなり、一部は市場で仕入れている。冷蔵庫は持たず、日持ちのしないモノはその日に売り切る。農家の収穫量が多く売れ残りそうな時は、登録客に電話して協力を依頼する。
それも限度があるので売れ残り野菜を調理して、小規模レストラン、惣菜売り場も併設する準備を進めていた。地元の旬の食材を使い、個性的料理を提供する店が出来たら注目されそうだ。
「八百屋」の経営は順調で、1日の来店客は平均80人、家族を養うのには困らない収入という。農家は運賃、段ボール箱、市場手数料がかからないので、喜んでいるという。
日本に低所得者層が増えると巨大資本の大量生産、低価格商品が競争力を増す。品質、外観、サービスに煩い日本の消費者が低価格品にシフトせざるを得ない現実は彼らにはチャンスと映る。
ただ、欧米勢と言っても資本の話で、商品を作るのは「世界最安値」地域」、必ずしも自国とは限らない。売る場所に国境はなく、投資先、利益を求めて資金が世界を駆け巡る。。日本の小売業大手セブン・アイHは中国を中心にアジア圏に進出し、既に1万5.000店を展開している。8月の国内量販店売上高は、猛暑の追い風を受けても下げ止まらず、失業率が高止まりする欧米同様、新興国、アジアに成長を求めざるを得ない
欧米から見れば、日本は消費が下降線を辿っているとはいえ世界に冠たる消費大国。展開次第ではまだまだ利益を稼ぐ余地があると映る。円高で、彼らに心地よい追い風が吹いている。
消費地の現実
世界の小売業が日本に進出していることは、地方に住む農家は実感に乏しい。他人事と思えるかも知れない。東京都下に住む私でさえ頭では理解できても、自分の生活にどう関わってくるかはピンとこない。
しかし、よく周りを見れば変化は着々と起きている。近所にある西友は看板をウォルマート(米国)に書き換える日も近い。280円弁当など得意とする低価格路線が好調で不振が続いた業績はこの不況で上向きに転じ、業界の注目を集めている。以前の西友は「完熟屋」「食の幸」ブランドなど、野菜を含めて魅力的な食材が並んでいた。しかし、郊外住宅地として発展したこの街は、年金生活者や所得減で住宅ローンが重荷のサラリーマン世帯が増え、こだわり商品が次第に姿を消した。野菜など生鮮売り場は縮小され、惣菜や加工品が増えたのは言うまでもない。年中無休、食品売り場24時間営業、つまり365日昼夜を問わず休まない店と化した。「余分なモノ?は置かず、回転の良い安価な売れ筋商品に絞る」企業として当然だが、業績向上最優先が支配する・・・
聞いた話では客の多くはその日の予算内で計算しながら買い物カゴに入れレジに並ぶ。店内滞在時間15分程度の早業だ。客の楽しみはお買い得商品を見付けることくらいか?・・・
「喉元過ぎれば熱さを忘れる」と言う諺がある。過去の経験をしっかり見つめ、目先に流されることなく、将来に向けて何が大切かじっくり考え行動したい。それが将来起こるかも知れない経済や食糧危機に対する最大の防御だ。
多国籍食品
大手量販店で販売している一部の商品は、ネットで栽培履歴、トレサビリティーが確認できるが、アクセスする人は1%未満、公開している事に意味があると大手量販バイヤーから聞いた。
忙しい時代に利便性に優れた加工調理品が伸びているが、一体、原材料が何処で作られているのか調べてみた。冷凍加工調理品「エビドリア」の材料原産地表示(下記)を見て一瞬「エー!」と目を疑った。
僅か200㌘程度の食品にこれだけ多国籍食材が使われている現実は、自動車や家電など工業製品と同じである。低コスト追求で「世界最安値」地域から部品を調達し、大量生産する構図が食品にも常態化している。我々が意識しない、気が付かない間に企業の「世界最安値」戦略に組み込まれている。主食の米に限らずあらゆる食材の足元がこういう形で浸蝕されているのだ。
これは一部の格安外食レストランチェーンにも共通する。
世界の巨大小売業が参戦する「スーパー最終戦争」で日本の社会に何が残るのであろうか・・・
中国、タイ、ブルガリア、マケドニア、ハンガリー、カナダ、オーストラリア、マレーシア、ブラジル、パプアニューギニア、フィリピン、ニュージーランドなど海外12ヶ国の原材料が使われている。日本産は濃縮乳、食塩、発酵調味料、ナチュラルチーズ、玉葱と表示されている。
秋たけなわ、「食のイベント」が各地で盛んなのは心強い。日本の食文化」を一つ一つ子供達に伝える努力が「日本の食と農」を守る。政治や学校教育だけに任せるのではなく、先ずは日常の食生活から見直そう。立派な政策、教育論を展開しても、土台が腐っていては何の足しにもならない。
戦後、GHQ(米国占領軍)主導で食生活改善運動が実施され、輸入農畜産物が急増し、日本人の体格は格段に向上した。安い農産物を輸入したお蔭で農村の労働力を工業製品生産に振り向け、日本が得た経済的利益は大きかった。反面、洋食化が行き過ぎ、高カロリー食が原因で肥満や成人病が増え、国内農業が衰退したデメリットも指摘されている。初期はアメリカ農産物だったが、現在は世界中の農産物が国内に溢れる。一方、巨大穀物メジャーに操られ、数年前には日本は手も足も出ない穀物暴騰を経験した。
先日、神奈川県三浦半島にある公立中学校の先生から「食育」など現場の様子をお聞きした。しかし、食育などを語るには程遠い現実があるように思えた。彼の話では子供より親、特に母親の「子供溺愛」にどう対応するかが一番の課題と指摘した。以前からそう言う話は聞いてはいたが私の想定を超えていた。両親が離婚している生徒は約3人に1人、経済的にも精神的にもかなり不安定な教育環境である。全国でも離婚率上位の北海道でこの話をしたら「農家は1/3。サラリーマンは1/2に近い」と指摘された。数値的な裏付けはないが、多くの離婚世帯の生活、教育環境は相当厳しいと推測される。こういう人達は「世界最安値」食材を好むと好まないとに関わらず選択するしかない。
以前は量販店でも買い物が結構楽しかった。旬の魚菜が並び、種類も多く、店であれこれ会話しながら商品を選らんだ。子供達もその中で自然と食への関心を培った。学校で「食育」の時間などなかったが、教わらなくても生活の中で身に付けた。しかし、今の子供や親達にはその様な時間的ゆとりは無い。利便性、経済性、合理性だけの無味乾燥な環境になってしまった。人間として大切な「ゆとり」をいつの間にか失った。
商品棚には高品質や個性を語るポップなどは殆ど無い。大量生産された食品が主力となり、整然と並べられている。ビールなどの飲料はどこがどう違うのか判断に困るほど種類が多い。買い物目線が価格重視なのでお買い得を強調するポップ以外は不要だ。高品質、個性的商品を求める客はここには来ない。
大手量販店は、中小を呑み込んで統合、更に拡大路線を走る。
しかし、最終的に世界の巨人と対峙しなければならない。自分自身も世界の潮流に巻き込まれ、呑み込まれるかも知れない。
自由資本主義経済を標榜する日本で生きるには、弱肉強食のルールは仕方がない。戦うか軍門に下るか二者択一だ。その中でオーナー経営を続け、独自の戦いをしている元気な量販店がある。
① 昔ながらの八百屋方式
先日、関西を基盤とし、大阪を1ブロックとした量販店(十数店舗)仕入れ担当者を訪ねてみた。
殆どの量販店が合理化最優先、本部で大量一括安価仕入れを目指すが、それとは一線を画す地元密着型量販店だ。昔、何処かにあったスーパーを思い起こし、不思議な新鮮味を感じた。
(最近のお客様の変化は・・・)
来店者数には大きな変化はないが、品質と価格に対する目は厳しくなっている。
(どう対応しているか・・・)
当店は本部から調達するモノもあるが、大部分はその日の状況に合わせて市場で仕入れる。大手量販店は産地から週決めでまとめ仕入れし、センターから各店舗に配送するが、自分は八百屋の原点、地元客の顔を見て商売している。当たり前の話だが、安い時は沢山仕入れて山盛りにして割安で売る。高い時は小口に分けて買いやすい価格で売る。勿論、天候や気温、曜日、イベントなど毎日変化する要素を織り込んで仕入れる。売り場にアクセントが付けられるのでお客さんも来店する楽しみがあると思う。週決めで産直契約すると商品も販売の仕方も弾力性が無くなるから、毎日、市場とお客さんの顔を見ながら品揃えする。だから日によっては「ごめんなさい」(欠品)もある。
(今、一番売りたい野菜は・・・)
普通の野菜は売れる数量分だけ市場で仕入れた方がリスク(ロス)が少なく、現状ではメリットがある。今夏の様に供給が不安定になると揃えるのに苦労するが、それが自分の仕事だから・・・。
レギュラー品はとにかく価格優先。如何に安く仕入れて安く売るかだ。しかし、最近、流れが少し変わってきた。
「沢山は要らないが美味しいモノを少し欲しい。高くてもいいよ・・・」という消費者が増えてきた。健康に役立つ成分が多い機能性野菜も売れている。皆さん、テレビなどを見て勉強しているから、揃えておかないとね・・・(笑い)
人気があるのは美味しいトマト。簡単に食べられて機能性成分が多く、保存もきくから、今の消費者にピッタリ。美味しければ多少高くても買ってくれる。
市場では安定しておいしいトマトを仕入れられないから、宅配便で供給してもらえれば定番商品で売りたいね。基本的にこの地域は庶民の街だから、市場にあるモノで十分間に合う。
無理をしないで仕入れたモノを確実に売り切って採算を取るのが大切だと思う。
② 極上品を安く売るスーパー
3年前、知人の紹介で訪ねた愛知県東部にあるスーパー(6店舗)は何の変哲もない地方都市スーパーだが、店で売っているモノは正に一流品ばかり!・・・。スーパーと言うより本部長が自ら語る様に市場の雰囲気だ。平日の開店30分前に店に着いたが、既に入り口には50人位の行列が出来ていた。「特売でもあるの?・・・」と聞いたら毎日長い列が出来ると言うのだ。消費不況の中で、開店前に長蛇の列とは珍しい光景である。
野菜は殆どが地元生産者を厳選して契約で作っている。品種の選定から作り方まで話し合って、お客様に喜んで食べて頂ける野菜を作る。鮮度が重要なスイートコーンなどは朝方、産地まで担当者が取りに行き、アイスボックスに氷詰め(氷温)して店まで運ぶ懲り様だ。同業他社バイヤーの話では、ここで売られている野菜は日本を代表する高級スーパーに負けないと言い切る。
帰りに店内を見せて頂いたが、まさしく市場の様相だ。商品はコンテナに入れられ、余分な包装は一切省いてある。一般スーパーは棚に立体的に商品を並べるが、ここでは何処からでも商品を見渡せる様に土間近くの低い位置に置いている。昼過ぎの時間帯だったが店内は既にごった返しており、活気に溢れていた。お客も多いが、店員が多いのに驚く。本部長の話では徹底した対面販売なので、通常スーパーの倍以上配置しており、商品知識が豊富なベテラン揃いという。コストカットに逆行する風景だが、単位面積当たりの売上高は、通常量販の5~6倍というから納得である。
主要野菜は生産者直接仕入れ、業界の常識より低い掛け率で売るから、他店より相当割安だという。建物や宣伝費、包材費は最小限に抑え、「美味しいモノをより安く」が徹底している。
生鮮品は野菜、果実だけではなく肉、乳製品、海産物など殆ど揃えているが、ドライ商(加工品)は少なめである。
外観は立派でも中身は月並みの店が多くなる中、久々に中身の濃い店を見せて頂いた。
③ 実質本位で躍進するスーパー
今年の始め、知人の要請で札幌市内にある高品質・低価格をコンセプトとするスーパーで、「野菜の硝酸含有」について話をさせて頂いた。この店は駅構内などの空きスパースを利用して生鮮小規模スーパーからスタート、現在、10数店舗を展開している注目の繁盛店である。徹底的に実質本位を貫き、品質は良いが外観、形状に難がある規格外品を生産者や漁港から調達し、市価より相当安い価格で販売している。魚や肉はパックされているが、一般野菜や果実は段ボール箱のまま並べ、1個または1袋単位で売られている。
ただの「安物店」と思い勝ちだが、Y社長は中身に拘り、美味しいモノしか店に出さない。JAS認証野菜も置いているので「売れるの?」と聞いたら「最近、美味しいだけでは駄目、安全性に関心を持つお客が増えている。JAS野菜は正直言って回転が良くないから、店の看板として置いている。利益が出なくても赤字を出さなければOKかな・・・」と話していた。「安全性」をチェックしたいお客が増えているので、各店長を中心に時々、勉強会を開いている。商品の品質、価格だけではなく積極的にお客と対話する姿勢が売り上げを伸ばす秘訣と話していた。
コストカットや売り上げノルマに追われ、疲れている社員が多い中で、勉強会後の懇親会でも意気軒昂、大いに盛り上がっていた。
欧米勢を迎え撃つ国内勢は加工品分野ではOEM(相手先ブランド)でメーカーに直接商品を発注し、卸など中間業者を省いて店頭価格を引き下げてきた。しかし、採算低下でOEM生産を中止したメーカーや卸などの巻き返しが激しく、価格差が縮小、OEM見直しが始まっている。いずれにしても欧米勢が持ち込む「世界最安値」の圧力は続く。
量販や商社は農産物の自社生産に乗り出す?・・・
最近、量販店や外食、業務用(給食や総菜野菜)のユーザーが、自社または提携農場と組んで、自社生産に乗り出すとの報道が流れている。株価サプライズの面もあり、すべてが真剣に取り組んでいるとは思えないが、既に実績を上げている企業もある。食材の安定調達は企業の命運に関わるから将来の農の姿を考えれば、選択肢として当然考えられる。商社などサプライヤーも、間接的な形で自社生産に動いている。現状は意図する調達価格と実際の生産価格との溝は埋まっていない。新方式のインフラ開発などを含めて低コスト生産に目処が付けば、単価の高い果菜類などは資金を投入する可能性はある。しかし、農産物生産は他に比べてハイリスク、ローリターンで資本効率が良くない。競争激化に苦しむ小売業が積極的に取り組むとは考えにくい。
貯蔵の出来る馬鈴薯、玉葱などは系統はともかく、資本力のある商社が産地業者を買収、統合し、大量に集荷して冷蔵貯蔵している。規格別に青果、加工に分けて採算向上を図り、安定供給体制を確立、優位に立っている。加工玉葱は相場によっては安価な輸入品と併用してコストを引き下げが可能だから大手は有利である。
残留農薬問題が出た時、「国産玉葱でなければ・・・」と加工業者が一斉に買い漁った。しかし、価格差が余りにも大きく、製品(ハンバーグなど)に価格転嫁できる状況でもなく、国産品シフトは1~2年で終息した。ただ、この事件を契機に、国産品使用にこだわって差別化を図っている企業もあるが、極少数派だ。青果販売が減少して業務用、加工用のシェイは拡大傾向にある。加工品は最終製品の競争が激しいため、この分野への国産品拡販は暴落した時以外は難しい。馬鈴薯は土付きは輸入禁止になっているので取り敢えず安泰である。
ジュース用人参なども契約栽培されているが、以前程の需要は無い。おでん用、刺身のツマ、おろし用大根などは、単価が上がっていない。魅力はないが、裏作に作るモノが無いから仕方なく作っている。大規模生産者が多いが、作らないとその時期の安定収入が見込めず、経営が成り立たないと言う。
漬物用は中国からの輸入にブレーキがかかっているので、数量は減ったが安定している。
産直は、異常気象、相場の乱高下で難しい局面に立たされている。
産直は消費が旺盛で総じて作柄、相場が安定していた時代は、双方にメリットがあった。しかし、生産者は異常気象多発で減収が相次ぎ、相場が高騰する中、従来の取り決め条件変更機運が出ている。一方、買い方は、相場が下がると競争激化で特売してでも数量を捌かねばならず値下げ要請をせざるを得ない。従って品目によっては、見直しが議論になる。結局、双方とも市場価格連動、レンジ設定の方向に向かって行かざるを得ない。しかし、当然思惑は逆方向で、異常気象が続くことを前提に考えると値決めは難しい決断となる。双方の知恵、信頼関係が試される。
今の消費者は過剰になった時、価格を下げても生鮮品は必要数量以上に買わない。全量はともかく、ある程度、価格ヘッジ(値決め)して売り場を確保しておくことが必要と思う。高値が出ると「損した!」と思い勝ちだが、逆に安値になった時に「損しない」方法も考えて起きたい。
個性的、高付加価値農産物は?
相場に左右されない経営を目指して、オリジナル商品や「安心・安全」指向に沿った差別化農産物が増えた。しかし、明確な安全性の証明や品質格差がない限り、ブランド産地は別にして相場より有利に販売することが厳しくなっている。JAS有機野菜は量販店でも扱う様になり、慣行栽培との価格差も縮小している。売り場では看板商品的な意味合いが強く、固定客数は伸び悩み、販売量も頭打ち傾向が見える。ただ、通販や有機野菜をコンセプトトとしたレストラン(業務用)の需要は底堅い(専門仲卸の話)
売り上げ重視経営で、手間がかかり販売ロスの出るニッチ商品は大手量販店では縮小傾向にある。一般的に調達側は大量、安価、確実調達を最優先し、レギュラー品の供給に勝るJAや大規模生産法人の出番が拡大している。
所得格差拡大社会に入って、生産者は明確な高付加価値を更に追求するか、大量・安価・安定供給に軸足を置くか二者択一を迫られている。
時代と共に消費者世代が変わり、買い物の仕方、中身、考え方も変わる。
核家族、単身、個食化で購入単位が小口化し、消費者の利便性は向上した。しかしが、供給側のコストは上昇している。収入減で生活が厳しくなり、兎に角安く買いたい・・・子育て中の若手主婦は教育費などに将来不安を抱え1円でも安く買い、貯金に回したい・・・こんな思いの主婦達が仲間を集めて「まとめ買い」する光景が見られる。私の住む街から20km位離れた所に開業した大型激安ショッピングセンターは(土)(日)には交通渋滞が起こる程、人気を集めている。入会金は4000円、決済はクレジットカードだから取り敢えず現金が無くても買い物が出来る。ただ、販売単位がアメリカ的に大きいから、日本人には少し腰が引ける面もある。
そこで、生協の「共同購入」をモデルに隣人、友人、知人等と組み、車に同乗して店に乗り込む。購入は段ボール箱単位、食肉、魚などはブロック単位で「まとめ買い」し、持ち帰って山分けする。この世代はネット、メール、携帯などITを駆使して情報や仲間を集めることはお手の物だ。年金暮らしの中高年層も多い様だ。
十数年前、注目された会員制大型激安量販店は、あまり話題にならなくなったが、不況の波に乗ってまた復活してきた。
従来型量販店は、近隣ライバル店のチラシをチェックするだけでなく、IT主婦達のニーズを取り込んで提案する必要に迫られる。既にネットスーパー、コンビニが立ち上がり、パソコン、携帯端末で注文すれば夕方までに配達してもらえる地域も出ている。IT化はネット通販だけではなく、在来型小売業にも変化を迫る。
欧米勢との価格戦争は当面、ドライ製品(瓶、缶、箱、袋物)加工品が中心と思われるが、商売に聖域はない。当然生鮮農産物も俎上に上る。既に輸入生鮮農産物は多種にわたり、一部の国を除いて違和感は薄い。
彼らにはM&Aというツールがあり、国内農業関連企業を買収すれば生産直売も可能である。インフラ、人材、技術などの獲得は、今の状況下では比較的容易と思われる。各地で立ち上がっている農業法人を買収または経営支援、資金提供して育てる手もある。
投資家が農業に進出することを良とするか否とするかは論議が分かれる。しかし、現実は就農者が減少し、耕作放棄地が急増している事実を見れば、企業経営可能な農地に、民間の力(頭脳と資金)を注入して、生産~販売まで効率的に行う農システムが選択肢としてある。現状は旧態依然とした柵の中で、それぞれの思惑で多数の組織、人間が介在し、非効率、高コストな供給を続けている様に見える。従来の日本型では活力ある農業は望むべくも無いだろう。先日、経済団体の長が「農業には長年、莫大な国家予算が注ぎ込まれて来た。しかし、いつまで経っても競争力がつかない。やり方に問題がある」とコメントしていた。然りである。
10年前、中国福建省の山奥でブロッコリーなど野菜の大規模栽培をしている公司の農場を訪ねた事がある。彼らは香港で上場し資金を集め、売り場(スーパー)を整備し、米、果樹、野菜、畜産製品、キノコなどを周年供給できる自社農場を作り、全国展開の準備を始めていた。畜産で出る畜糞や処理残渣を原料にする有機肥料会社まで設立していた。所謂、一気通貫型経営で、大変興味深かった。その後、訪ねていないが、株式資料を見ると、株価は上昇トレンドで業績は伸びている様だ。
日本にも一気通貫型を目指した企業があるが、色々な規制や柵から抜けきれず、断念した。期待できるのは柵のない新規チャレンジャーである。少し景気が良くなると、農業ビジネスチャレンジャーが立ち上がるが、多くは栽培、販売両面で行き詰まり、資金が続かなくなって断念するケースが多い。
短期的利益を追求する外人投資家が、魅力の少ない日本の農に投資することは考えにくい。それよりも、成長が期待できる新興国に投資し、従来通り日本に持ち込むことを選択するだろう。
長期化するデフレと円高を背景に、世界の巨大小売業が続々上陸。価格戦争は最終戦へ突入・・・
8月の日経ビジネスお盆特集で「スーパー最終戦争」と題して、日本の小売業勢力図が大きく塗り変わると書いている。農産物の大半は量販店を経由して売られているから、その動向に無関心ではいられない。
記事の冒頭に、この10年間で激変した北海道内量販店の興亡が生々しく書かれている。日本の小売業2強、イオンとイトーヨーカ堂が後退し、地場資本のアークス(前年対比+6.6%)とコープさっぽろ(同+2.3%)が、売上高1、2位を占めた。地場2社は、札幌周辺や地方で消費不況に苦しむ中小量販店を買収、統合し、巨大化路線を走る。一方、国内2強は不採算店となった店舗のリストラを急ぎ、収益改善を図っている。この好守の差が売上高に表れている様だ。札幌の高級量販店だった札幌東急ストアー(20数店舗)が昨年10月末、アークスに売却され、長年親しまれた東急の文字がスーパーから消えた。
道内4強の戦いは、これからが本番。西友を傘下に収める世界一の巨艦ウォルマートの本格参入で更に激闘が予想される。消費縮小の中で何処かが脱落、飲み込まれて再編が進む。
これは北海道に限った事ではない。今まで余り目立たなかった欧米勢は首都圏を中心に上陸、拡大体勢を整えている。10年前、仏国のカルフール(世界第2位)が首都圏に開店し話題になった。しかし販売手法が消費者の支持を得られず、撤退した。但し、カルフールは中国を始め他のアジア圏では絶好調である。
「日本の消費者は品質、サービス(包装、レジ待ち時間など)に厳しい」「まとめ買いは余りしない」「日本人は特殊な消費者。欧米流販売法は通用しない」・・・というのが当時の通説であった。
時は流れ、それから6年余・・・
気が付けば、小売業世界売上高上位10社中4社、つまり米国・ウォルマート(世界第1位/日本国内372店舗)を始め、独・メトロ(同3位/6店舗)、英国・テスコ(同4位/149店舗)、米国・コストコ(同8位/9店舗)が上陸、日本勢・セブンアイ(14位)、イオン(17位)などの顧客獲得を虎視眈々と狙う。
日本の量販店売上高は1979年の約17兆円から下降、2009年には約13兆円、25%近く減少した。2008年にリーマンショック(世界同時不況)が起こり、消費減は更に鮮明になった。以前の総中流社会から中の下、更に米国並の貧困率を記録し、貧富格差拡大に向かっている。景気が後退すると食料品が削られ、低価格指向が強まる。
品質や安全性に煩い日本の消費者も収入減には勝てず、リーマンショックを機に価格重視に傾き、激安を武器とする欧米勢に強力な順風が吹き始めた。欧米勢は巨大な資本力をバックに「世界最安値」の調達先で商品を作り、日本の直営店で大量販売する。その価格破壊力について、記事で詳しく述べている。輸入品のみならず消費が縮む国産定番品も生き残りを賭けるメーカーは形振り構わず彼らの戦列に加わっている。大量生産によるコストダウンと流通コスト削減、省けるモノはすべて省く超低価格路線は、日本の既存勢力に大きなプレッシャーをかけている。
全国的に野菜の直売場が増え、首都圏周辺では量販店の売り上げに多少影響しているという話もある。早くから店内に産直野菜コーナーを設け、生産者の取り込みを図って、成功している量販店もある。高速道路の土、日割引や消費者の安全、節約指向も追い風になって個人をはじめJA、道の駅、その他自治体が運営する施設など、直売場人気は衰えていない。旅行社とタイアップして観光バスのコースに組み込み、ツアー客を丸ごと取り込んで成功している直売場もある。
先日、日本で最大級と言われている平成19年春に開業した福岡県糸島市にある直売場『伊都菜彩』を訪ねてみた。糸島市は
訪ねた日は連休前の土曜日夕方、既に来場者のピークは過ぎていたため、広大な駐車場は空いていた。案内してくれたYさんの話では(土)(日)15時頃までは駐車場所確保に苦労する程、混雑するという。建物正面左側は花木鉢物や洋蘭など園芸品売り場になっており、家族や友達と飲み物や軽食を楽しめるスペースが用意されている。中央から右側にかけて地元産野菜、果物、肉類、魚、生花など所狭しと並べられ、売り場面積は1.270㎡もある。
野菜や果実は量販店と同じようにパックして売られているが、通常は市場に出せない規格外品が多いという。しかし、今年は野菜が不作で高いので並ぶ数量が限られ、早目に売り切れてしまう。
魚売り場では2ヶ所ある漁港から朝方揚がった新鮮な魚貝類が並べられ、食欲をそそる。希望に応じて20人近くいる漁協のスタッフが刺身や切り身に下してくれるから、丸ごと一匹買っても安心という。鮮度が良くて安いから福岡方面から買い付けに来る飲食店関係者も多いという。肉類も糸島牛の産地だけに割安。
地元産生鮮品、加工品、総菜に限定しているため、消費者から鮮度、安心感、割安感が評価され、支持されている。販売、金銭管理はJAが行っており、生産者は手間がかからず、経営改善に役立っていることは確かだ。
全国的に直売場は近隣の住民は勿論、ゴルフ場や観光地帰りの客、リタイヤした中高年層がドライブ方々美味しくて安価な野菜の買い出しに来ていることは間違いない。満足度の高い店には固定客が付き、米、野菜、漬け物、自家製味噌まで、まとめ買いして帰る人もいるという。乱立気味だが、対面販売等の工夫次第でこの分野はまだまだ伸びる可能性がある。