

6月24日のブログで書いた日本人農家Yさんこと山下朝史さんが、雑誌「家庭画報」9月号に三つ星レストラン「トゥール・ジャルダン」の野菜を支えるパートナーとして紹介されている。
フランスの食文化は昨年、ユネスコ無形文化遺産に登録された。中でもこの「トゥール・ジャルダン」は1582年に創業し、数々の歴史を創ってきた最高級レストランである。フランス最高職人の称号を持つR氏(39歳)が昨年シェフに就任し、伝統的重厚なフランス料理に「ヤマシタの日本野菜」を取り入れて、創作料理を提供している。そのきっかけはやはり、とびきり美味しい「ヤマシタの蕪」だった様だ。フランスもヘルシー志向が強まっており、日本野菜の活躍が期待される。
詳しくは「家庭画報」9月号でご覧頂きたい。「ヤマシタの日本野菜」を使った芸術的な「ブーケサラダ」の写真が全画面で紹介されている。
9月も中旬に入り、各地で収穫が本格的に始まった。今年も気象災害でハウスはともかく、露地作中心の農家は表情が固い。減収を小幅に食い止め、相場高で収益を上げた人達もいる。しかし限度を超えた風害や水害など物理的被害は防ぎようが無かった。天災で作物が取れないと、気分が滅入り、消極的思考に陥りやすい。しかし、農業は元々天の恵みで成り立っている。天災は宿命と割り切り、収穫が終わったら頭を切り換えて来年の恵みに期待しよう。どうにもならないことをくよくよ考えていては、人生の浪費である。農業は時期を待てば必ず次の恵み、チャンスが巡ってくる有り難い生業である。
毎年秋になると、収量が上がっている農家から電話がかかってくる。特に回りより作柄が良いと、近所には話し辛い人もいて、私の様に情報を共有している者に喜びを伝えてくる。何が嬉しいかと言えば、作物が取れたことは勿論だが、自分が信念を持って取り組んできたことが正しかったという満足感である。1年や2年では「たまたま、マグレ・・・」とも言えるが、昨今の天候不順の中で連勝が続くと確信に変わってくる。
北海道渡島でトンネル栗南瓜(6㌶)を作っているBさんは、春先からの天候不順にも拘わらず、生育は少し遅れたが着果、肥大が順調に進み、5,6玉が2/3以上。糖度20度近くになり、今年も売り先から高い評価を受けている。出荷量は8月で7000箱を超えた。約10年前に取り組んだが、周辺の農家は鶏糞と化成肥料の施肥が殆どだった。「たかが南瓜にそんなに良い肥料を使って元が取れるの・・・?」という周囲の声を受け流し、格別おいしい南瓜を作ろうと、覚悟を決めた。堆肥もすべてやめ、スーパーランド(743)、ミネラルPKだけで作り続けている。周辺では今年も作柄が思わしくなく、困っているが「俺の南瓜は今年も調子がいい・・・」と、折りに付け電話をかけてくる。最近、美味しさがマスコミに取り上げられ、自宅前にある直売場の大繁盛を見て、今まで冷ややかだった人達が認める様になり、秘訣を聞きに来る様になった。
葉菜類、トマト、米の3品目で昨年、売り上げ目標6.000万円超を達成したCさんは、今年も快調。先週の電話では、7月末集計で昨年比+300万円超、8月もトマトの増収と市況高で月+350万円超と話していた。土作りは11年前に、堆肥を入れずにスーパーランドと根づくり名人のシンプル設計に統一した。次第に収量が上がるようになり、この数年続いている天候不順で、その真価を実感している。売り上げが絶好調なので「税務署が遊びに来るんだって・・・」と笑っていた。
先週、甲信地区の米農家から電話がかかってきた。春に米の収量と品質を上げたいと相談を頂いた方であった。状況を色々お聞きして、貴農場では肥料よりも「ホッとマック」が一番、コスト対効果が高いと思いますと伝えた。彼はアドバイス通り試して見た様だ。刈り取りを控えて、格段の着粒の良さに嬉しくなり電話してきた様だ。この頃になれば稲姿を見れば、大凡の収量は予想が付く。
しかし、土作りや管理に一生懸命努力しても、天災や生育トラブルで、結果の出ないことも多い。八ヶ岳山麓(長野、山梨県)は夏秋レタスと白菜の大産地であるが、この数年の異常高温、大雨の被害で意気が上がらない。気候変動で栽培環境が変化し、昔の様に高品質の夏秋野菜を安定して作る事が難しくなってきた可能性がある。北海道も同様であり、春先の低温、日照不足、大雨などで、玉葱、人参、馬鈴薯、南瓜などの代表的露地野菜は2年続きで大きな被害が出ている。
気候変動の根本的な対策は無理だが、被害の軽減は作物や品種の再検討と圃場の整備で可能である。
収穫が終わったら、来年に備えて土を休ませねばならない。しかし、予定していた収入が得られないと、裏作でカバーしたくなる。この場合は「畑のおかず」を反当10袋くらい入れて、地力の低下を防ぎながら作る。裏作だから取り敢えず取れれば良いと化成肥料だけで作ると、表作の生育に影響が出やすくなる。土は正直である。
緑肥を蒔く期間があれば、数年に1回位蒔くと、水捌けや根張りが良くなり、種類を選べば線虫害も軽減可能だ。
また、土壌病が発生した圃場は、連作を避けなければならない。軽度の場合は微生物資材で対応可能なケースもある。止む得ず化学農薬でリセット(土壌消毒)する場合は、リセット後、微生物資材や「畑のおかず」などぼかし肥料を投入して、多様な微生物を増やすことが必須である。無菌状態にしておくと、再度、病原菌がはびこる。
微生物資材として、カルスNCR、ラクトバチルス菌(いずれも嫌気性菌主体)をお奨めする。
http://www.e-yasai.com/materials/ncr.pdf
http://www.e-yasai.com/materials/rakuto.pdf
但し、多発している土壌では、一旦、リセットしないと効果は期待できない。
いずれにしても土壌病発生リスクがある圃場は地力が低下している可能性があるから、畑のおかず」や嫌気性菌を使って基本的な土作りをお奨めする。
果菜類のハウス土壌病の場合は病名によっては、接木が基本となる。詳細は種苗会社に相談するとよい。
経営が厳しい中で、的確な資材を選択するのは迷う。特に前年に病気が出たり、収量が上がらなかったり、相場が安かったりすると、余計に決断が鈍る。農業はある意味では博打であるが、原因を冷静に分析して秋~春までに的確な対応策を打てば収益は改善する。収穫物、茎や蔓、株元、根部(残渣)には生育履歴が記録されているから、良く観察して、来年の課題を整理しておきたい。春になると記憶が薄れ「まあ、いいか」と同じ事を繰り返す人が多い・・・
8月2日にマルマンディー青トマトを紹介したが、前回収穫品は本来の特長が出ていなかった。再度、試作者Tさんに樹を仕立て直してもらい、水を控えて栽培してもらった。果形は120㌘程度の小玉となったが玉揃いは良い。
肝心の食味だが、そのまま食べても美味しくない。調理法により特長が出るので、プロの調理師に渡してメニューを考えてもらった。薄切りスライスして食べると食感が良いことは解るが、実際に自分でスライスしてみると、包丁の切れ味が良くないのでパリパリ感が出ない。手元にある付け合わせ食材、調味料も限られるから、ここはプロの出番である。依頼したのは寿司屋の二代目、イタリアンなども手掛ける創作料理大好き人間。新鮮な魚貝を使った海鮮サラダ、カルパッチョは定番として、自作の燻製、寿司飯ドリア、地元産ソースを使ったお稲荷さんなどユニークなメニューが常連客の舌を捉えている。
彼が最初に作ってきたのは定石通りモツァレラチーズ添え。ポイントは鋭利な包丁で薄くスライスし、味付けはオリーブオイル(カルフォルニア産)、塩、胡椒でシンプルに仕上げた。モツァレラチーズとの相性は抜群で、青トマトのシャキシャキ感と上品な酸味と香りはマルマンディー特有なモノだ。味付けがオリーブオイルに塩、胡椒と言うのもさっぱり感があって、お客さん達に大好評であった。もっとも、画像の様にちょっとした小鉢、少量なのがいい。
普通のサラダに添えても良いが、生ハム青トマトサンドイッチは個性が出て良いと言う。
ここは寿司屋だから、本命は和風・・・「糠漬け」だ!果肉が厚くしっかりしていて、ゼリーが少ないので漬け物に合う。試作に用意したトマトは、お客様のリクエストで直ぐに無くなってしまった。
上品な酸味とほのかな甘み、歯応えを楽しむトマトだが、鋭利な包丁を持っていないと本来のシャキシャキ感が楽しめないので、レストラン等の業務用として期待できる。