

6月24日のブログで書いた日本人農家Yさんこと山下朝史さんが、雑誌「家庭画報」9月号に三つ星レストラン「トゥール・ジャルダン」の野菜を支えるパートナーとして紹介されている。
フランスの食文化は昨年、ユネスコ無形文化遺産に登録された。中でもこの「トゥール・ジャルダン」は1582年に創業し、数々の歴史を創ってきた最高級レストランである。フランス最高職人の称号を持つR氏(39歳)が昨年シェフに就任し、伝統的重厚なフランス料理に「ヤマシタの日本野菜」を取り入れて、創作料理を提供している。そのきっかけはやはり、とびきり美味しい「ヤマシタの蕪」だった様だ。フランスもヘルシー志向が強まっており、日本野菜の活躍が期待される。
詳しくは「家庭画報」9月号でご覧頂きたい。「ヤマシタの日本野菜」を使った芸術的な「ブーケサラダ」の写真が全画面で紹介されている。
9月も中旬に入り、各地で収穫が本格的に始まった。今年も気象災害でハウスはともかく、露地作中心の農家は表情が固い。減収を小幅に食い止め、相場高で収益を上げた人達もいる。しかし限度を超えた風害や水害など物理的被害は防ぎようが無かった。天災で作物が取れないと、気分が滅入り、消極的思考に陥りやすい。しかし、農業は元々天の恵みで成り立っている。天災は宿命と割り切り、収穫が終わったら頭を切り換えて来年の恵みに期待しよう。どうにもならないことをくよくよ考えていては、人生の浪費である。農業は時期を待てば必ず次の恵み、チャンスが巡ってくる有り難い生業である。
毎年秋になると、収量が上がっている農家から電話がかかってくる。特に回りより作柄が良いと、近所には話し辛い人もいて、私の様に情報を共有している者に喜びを伝えてくる。何が嬉しいかと言えば、作物が取れたことは勿論だが、自分が信念を持って取り組んできたことが正しかったという満足感である。1年や2年では「たまたま、マグレ・・・」とも言えるが、昨今の天候不順の中で連勝が続くと確信に変わってくる。
北海道渡島でトンネル栗南瓜(6㌶)を作っているBさんは、春先からの天候不順にも拘わらず、生育は少し遅れたが着果、肥大が順調に進み、5,6玉が2/3以上。糖度20度近くになり、今年も売り先から高い評価を受けている。出荷量は8月で7000箱を超えた。約10年前に取り組んだが、周辺の農家は鶏糞と化成肥料の施肥が殆どだった。「たかが南瓜にそんなに良い肥料を使って元が取れるの・・・?」という周囲の声を受け流し、格別おいしい南瓜を作ろうと、覚悟を決めた。堆肥もすべてやめ、スーパーランド(743)、ミネラルPKだけで作り続けている。周辺では今年も作柄が思わしくなく、困っているが「俺の南瓜は今年も調子がいい・・・」と、折りに付け電話をかけてくる。最近、美味しさがマスコミに取り上げられ、自宅前にある直売場の大繁盛を見て、今まで冷ややかだった人達が認める様になり、秘訣を聞きに来る様になった。
葉菜類、トマト、米の3品目で昨年、売り上げ目標6.000万円超を達成したCさんは、今年も快調。先週の電話では、7月末集計で昨年比+300万円超、8月もトマトの増収と市況高で月+350万円超と話していた。土作りは11年前に、堆肥を入れずにスーパーランドと根づくり名人のシンプル設計に統一した。次第に収量が上がるようになり、この数年続いている天候不順で、その真価を実感している。売り上げが絶好調なので「税務署が遊びに来るんだって・・・」と笑っていた。
先週、甲信地区の米農家から電話がかかってきた。春に米の収量と品質を上げたいと相談を頂いた方であった。状況を色々お聞きして、貴農場では肥料よりも「ホッとマック」が一番、コスト対効果が高いと思いますと伝えた。彼はアドバイス通り試して見た様だ。刈り取りを控えて、格段の着粒の良さに嬉しくなり電話してきた様だ。この頃になれば稲姿を見れば、大凡の収量は予想が付く。
しかし、土作りや管理に一生懸命努力しても、天災や生育トラブルで、結果の出ないことも多い。八ヶ岳山麓(長野、山梨県)は夏秋レタスと白菜の大産地であるが、この数年の異常高温、大雨の被害で意気が上がらない。気候変動で栽培環境が変化し、昔の様に高品質の夏秋野菜を安定して作る事が難しくなってきた可能性がある。北海道も同様であり、春先の低温、日照不足、大雨などで、玉葱、人参、馬鈴薯、南瓜などの代表的露地野菜は2年続きで大きな被害が出ている。
気候変動の根本的な対策は無理だが、被害の軽減は作物や品種の再検討と圃場の整備で可能である。
収穫が終わったら、来年に備えて土を休ませねばならない。しかし、予定していた収入が得られないと、裏作でカバーしたくなる。この場合は「畑のおかず」を反当10袋くらい入れて、地力の低下を防ぎながら作る。裏作だから取り敢えず取れれば良いと化成肥料だけで作ると、表作の生育に影響が出やすくなる。土は正直である。
緑肥を蒔く期間があれば、数年に1回位蒔くと、水捌けや根張りが良くなり、種類を選べば線虫害も軽減可能だ。
また、土壌病が発生した圃場は、連作を避けなければならない。軽度の場合は微生物資材で対応可能なケースもある。止む得ず化学農薬でリセット(土壌消毒)する場合は、リセット後、微生物資材や「畑のおかず」などぼかし肥料を投入して、多様な微生物を増やすことが必須である。無菌状態にしておくと、再度、病原菌がはびこる。
微生物資材として、カルスNCR、ラクトバチルス菌(いずれも嫌気性菌主体)をお奨めする。
http://www.e-yasai.com/materials/ncr.pdf
http://www.e-yasai.com/materials/rakuto.pdf
但し、多発している土壌では、一旦、リセットしないと効果は期待できない。
いずれにしても土壌病発生リスクがある圃場は地力が低下している可能性があるから、畑のおかず」や嫌気性菌を使って基本的な土作りをお奨めする。
果菜類のハウス土壌病の場合は病名によっては、接木が基本となる。詳細は種苗会社に相談するとよい。
経営が厳しい中で、的確な資材を選択するのは迷う。特に前年に病気が出たり、収量が上がらなかったり、相場が安かったりすると、余計に決断が鈍る。農業はある意味では博打であるが、原因を冷静に分析して秋~春までに的確な対応策を打てば収益は改善する。収穫物、茎や蔓、株元、根部(残渣)には生育履歴が記録されているから、良く観察して、来年の課題を整理しておきたい。春になると記憶が薄れ「まあ、いいか」と同じ事を繰り返す人が多い・・・
8月2日にマルマンディー青トマトを紹介したが、前回収穫品は本来の特長が出ていなかった。再度、試作者Tさんに樹を仕立て直してもらい、水を控えて栽培してもらった。果形は120㌘程度の小玉となったが玉揃いは良い。
肝心の食味だが、そのまま食べても美味しくない。調理法により特長が出るので、プロの調理師に渡してメニューを考えてもらった。薄切りスライスして食べると食感が良いことは解るが、実際に自分でスライスしてみると、包丁の切れ味が良くないのでパリパリ感が出ない。手元にある付け合わせ食材、調味料も限られるから、ここはプロの出番である。依頼したのは寿司屋の二代目、イタリアンなども手掛ける創作料理大好き人間。新鮮な魚貝を使った海鮮サラダ、カルパッチョは定番として、自作の燻製、寿司飯ドリア、地元産ソースを使ったお稲荷さんなどユニークなメニューが常連客の舌を捉えている。
彼が最初に作ってきたのは定石通りモツァレラチーズ添え。ポイントは鋭利な包丁で薄くスライスし、味付けはオリーブオイル(カルフォルニア産)、塩、胡椒でシンプルに仕上げた。モツァレラチーズとの相性は抜群で、青トマトのシャキシャキ感と上品な酸味と香りはマルマンディー特有なモノだ。味付けがオリーブオイルに塩、胡椒と言うのもさっぱり感があって、お客さん達に大好評であった。もっとも、画像の様にちょっとした小鉢、少量なのがいい。
普通のサラダに添えても良いが、生ハム青トマトサンドイッチは個性が出て良いと言う。
ここは寿司屋だから、本命は和風・・・「糠漬け」だ!果肉が厚くしっかりしていて、ゼリーが少ないので漬け物に合う。試作に用意したトマトは、お客様のリクエストで直ぐに無くなってしまった。
上品な酸味とほのかな甘み、歯応えを楽しむトマトだが、鋭利な包丁を持っていないと本来のシャキシャキ感が楽しめないので、レストラン等の業務用として期待できる。
トマトは世界中で食べられているが、未熟果は無色素グリーン、熟すと品種により赤、オレンジ、黄色、紫色などに変わる。熟す段階で香り、風味、食味(酸度、糖度)、食感が微妙に変化し、調理人はそれぞれの特徴を生かして色々な用途に使う。
フランスワインの名産地、ボルドー地区南東部マルマンド市周辺を原産地とする青トマトがあると種苗会社から聞いて、早速、昨年秋から試作を始めた。栽培は原産地の地中海性気候に近い、愛媛県宇和島市のNさんにお願いし、種子を送った。残念ながら3株しか発芽しなかったが脇芽を摘んで100株近くに増やした。この青トマトの特徴は下記の通りであるが、ある程度熟してから食べる日本のトマトとは異なり、いわば未熟果の青臭さとガリガリ感を楽しむマニアックトマトである。
イタリアンやフレンチシェフの間では知られた存在らしく、興味を示す調理人も少なくない。
【特徴】
① 果形は比較的大型でリブ(凹凸の筋)があり、果形は不揃い。
② 果肉は肉厚で香りが良いのが特長。果実内の種子量が少なく、サラダの他、加熱調理用にも好適。オリジナルなソースやジャムなどにも適す。
③ ヨーロッパではスペイン、フランス、イタリアの地中海沿岸部で栽培されており、スペイン、イタリア料理には無くてはならない食材である。
④ 果実が未熟な時期に収穫して食べることで、マルマンディートマトの香りと風味、食感が楽しめる。
⑤ この特徴的な香りと風味はクロロフィルに由来するもので、熟してしまうと失われてしまう。
⑥ 食べ方は薄切りして、モツァレラチーズなどと一緒に食べるのが一般的。
秋に播種したが、株を増やすために日数がかかり、4月末から収穫できるようになった。しかし、どの熟度で収穫したら良いのか解らないので熟度を3段階に分けて送ってもらった。専門家の意見を聞いてみたが、どの熟度も全く特徴が無く不評であった。原因はミニトマトを栽培しているハウスの片隅に植えたため、水分コントロールが出来ず栄養成長気味になり、水っぽい普通のトマトになってしまった。やはり、地中海性気候のようにサンサンと太陽が照り、乾燥していないと香り豊かな本来のマルマンディートマトは出来ない様だ。種苗会社に聞いてみたら、1玉100~150㌘程度に仕上げないと特徴が出ないという。気を取り直して一旦、果実や葉を整理して仕立て直した。1果重量120㌘に仕上げるにはフルーツトマト並みの水分管理が要求されるが、Nさんは諦めずに再チャレンジしている。
お盆過ぎには見通しが付いてくると思うが、どんなモノが出来るかは全く解らない。
このトマトに興味のある方はご連絡お待ちしております。
フランスの農業を語るにはやはりワインについて書かねばならない。
フランスワイン生産量はイタリアに次いで世界第2位で重要な輸出産業である。しかし、葡萄の栽培や販売面で大きな変化が起きている。主要産地として西北部のボルドー、東部のブルゴーニュなどが知られているが、葡萄は水捌けと日当たりの良い南段斜面で昼夜の寒暖差が大きい場所が適地とされる。ところが、地球の温暖化で南部の地中海方面は高温障害リスクが高まり、適地では無くなってきたとの指摘がある。気象学者の予測では、2050年頃には平均気温が2℃以上上昇するというから、高品質ワインを標榜するフランスにとっては大問題である。一方、販売面では新大陸(オーストラリア、ニュージーランド、南米、北米)で安価で美味しいワインが台頭し、中ランク以下の産地は競合し、厳しい。若者のビール指向でワイン離れが進み、一人当たりの消費量は右肩下がり、この50年で半減している。ダブルパンチを受けて競争力の弱い低品質産地は高品質品種への改稙や減反が進められている。
しかし、フランスはワイン王国!高級品は健在である。中でも「シャンパン」(発泡ワイン)は、フランス独自のブランド(AOC:原産地呼称統制法)で保護されている。イタリアの「スプマンテ」、ドイツの「ゼクト」、スペインの「カヴァ」なども発泡ワインであるが、知名度、ブランド力において到底、世界に及ばない。
最近、日本でも美味しいシャンパンが店頭に並ぶようになったがワインと比べれば相当高価である。以前は高嶺の花。庶民の結婚式などで乾杯に使われたシャンパンはお世辞にも美味しいとは言えず・・・今、思えば全く別物、「シャンパンもどき」だった可能性が高い。本物のシャンパンは確かに美味しい。
高級シャンパンが注目され始めたのはバブル絶頂期。銀座のクラブや高級レストランで成金紳士や芸能人が1本20万、30万、いや尾ひれが付いて50万とかいう「ドンペリ」(ドン・ペリーニヨン)が登場してからだ。殆どの日本人は「ドンペリ」???であった。今でこそテレビなどマスコミに登場する機会が多いから庶民にも知られるようになった。しかし、実際に口にした人は極少数だろう。特別なプレミアムが付は別にして、赤ワインは「ロマネコンティー」、シャンパンは「ドンペリ」が最高級品と称されている。
価格はピンキリだが地元ランスで€126、ミュンヘンで€138、パリで€170の値札が付いていた。
「ドンペリ」の里はフランス北東部シャンパーニュの中心地、ランスにある。話しのタネに世界的な銘酒を育んでいる現場を訪ねなければなるまい。
ランスは歴史的にも重要な街で、有名な「ランス・ノートルダム大聖堂」や、フランスで活躍した著名な日本人画家、藤田嗣治画伯の眠る協会(礼拝堂)がある。パリからシャンパン街道と呼ばれている高速道路で2時間弱、鉄道で45分程度で行ける。シャンパン富豪達の邸宅や三つ星レストラン、五つ星ホテルなどもあり、如何にもリッチな雰囲気が漂う。
大聖堂広場前にはシャンパン専門店があり、ビンテージ2002年の銘柄が並んでいた。蘊蓄を語られたら、好き者は財布が空になる。
1743年に創業したモエ・エ・シャンドン社が経営するシャンパン博物館。ここでシャンパンの由来や製造、発酵、熟成などの講釈が聞ける。1500エーカー(600㌶)もの葡萄畑を所有し、毎年200万ケース以上のシャンパンを出荷している。
玄関を入ると巨大な発酵タンク(展示用)が目に飛び込む。
収穫された葡萄は搾られてタンクで一次発酵させ、シロップ(砂糖)、炭酸ガスなどと共に瓶に詰められ二次発酵させる。
普通のシャンパンは色々な年の原料が混ぜられるが「ドンペリ」はビンテージ年ワインに限定して作られる。
エレベーターで40~50m降りると、連結型電気自動車が待っていて、貯蔵庫を案内してくれた。ここは石灰岩の岩盤を格子状に洞窟が掘られ、年間を通じて室温と湿度が一定に保たれている。ここで7~8年間じっくり眠りにつく。
シャンパンは白葡萄シャルドネ種、黒葡萄ピノ・ノワール種など8品種をブレンドして作る。
この会社では1500エーカー(600㌶)の葡萄畑を持つ。
ワイン用葡萄は樹が若くては良い味や香りが出ないとされる。一般的に石灰岩土壌、ミネラル分が豊富で肥沃でない土壌が適する。品種にもよるが本来の特徴は数十年生にならないと出ないと言われている。
この株は何十年生か解らないが世界最高級品を作る樹にふさわしい。貫禄がある。
シャンパンは「ドンペリ」が一番美味しいかどうかは、色々飲んでいる訳ではないから解らない。左の画像は1811年に創立されたペリエルジェ社の2002年ヴィンテージである。アネモネをモチーフとしたデザインで中身もボトルも芸術的な逸品である。このヴィンテージ年の様子を同梱冊子から引用させて頂く。人間の技よりも、自然の技であることを記している
2002年、それはコントラストのある豊かな年
「シャンパーニュ造りにおいては、その気候条件が大いに影響しています。2002年もその例に漏れてはいません。温暖な春から割合に湿度の高かった8月にかけて、この年もブドウの生育に必要なものが自然環境から与えられます。さらに9月は乾燥し、日中は太陽が照り、また、夜温は冷え込みがありました。つまりこのコントラストが、素晴らしいブドウができるために理想的な方程式なのです」
ランスに行ったら立ち寄りたいのがレオナール・フジタの礼拝堂である。藤田嗣治は1886年生まれ、パリで活躍した著名な画家。フランスに帰化し、本人の遺志により、このランス礼拝堂に埋葬されている。
シャンパン富豪が沢山住むこの街は「ドンペリ」を飲むにふさわしい三つ星レストランや高級ホテルがある。
ここは五つ星を持つホテル。宿泊するだけで最低€800(ツイン1室)は覚悟しなくてはいけない。夕食、朝食を含めたら€1200以上(約15万円)は飛ぶ。
我々にはガーデンカフェで喉を潤すのが精一杯の贅沢だ。
友人の口利きで、特別にレストランやバー、ゲストルームを見せて頂いた。仮に宿泊するチャンスがあっても私には落ち着いて時を過ごせそうにない・・・
3月のブログで1月に訪ねたノルマンディーのオーガニック(BIO)「ハローウィン農場」について紹介した。訪ねた時期が冬で作物は無く、農場の概略を聞くにとどまった。やはり、作物の生育している時期に現場を見なくては理解出来ない。こんな思いで5月2日、再び農場を訪ねた。
新緑のノルマンディーは目を見張るほど美しい!白いマロニエ、紫色のリラの花・・・春を待ちわびていた生命が一斉に動き出した感がある。
今回は「ハローウィン農場」のマダムに案内して頂いた。
マダムは弁護士、地方議会議員の肩書きを持つインテリ女性。日本に3年近く滞在された経験があり、日本語も少し話す。自然界の営みについて大変勉強されており、この分野にも詳しい。理論的でチャレンジ精神旺盛だ。
「この仕事は奥が深く、知れば知るほど興味が湧く」と、案内に熱がこもる。
農場は有機農業と言うより、自然農業に近いが、放任栽培ではない。観察や科学的根拠に基づいて人工的に多様な環境を作り、自然界の営みを創る。それぞれの環境に対応して生物の多様化が進み、全体の共存関係が築かれている。
農園の周辺には推定500種類以上の植物が共存しているが、食用は50種類位。作物を大面積植えると生物バランスが崩れて病害虫が増える。これを農薬ではなく、自然界のバランスの中でコントロールしている。
マダムに農場が目指している未来像について聞いてみた。
通常、食の安全や環境問題の観点からオーガニックを目指す人が多いです。私は将来、予測される人類の食糧危機に対応できる「最も効率的な農業」がオーガニックだと思います。オーガニックは単位面積当たりの収量が少ないと言うのが従来の共通認識ですが、私はその考えは間違いだと思っています。オーガニック農家をもっと増やすには、政策的な食の安全や環境保全だけでは限界があります。現在の化学農業より省資材型(低コスト)で、しかも品質や収量が上がり、農家の収益向上に結びつかなければなりません。
最大のポイントは化学資材を使わないで、自然界のあらゆる要素、土、太陽、雨、風、微生物、植物、昆虫、動物などを総合的に利用して作物の能力を最大限に引き出せば、高収量を実現できると考えています。従来の化学肥料、農薬、遺伝子組み換え種子等を使った農業は環境破壊が進んで、ボツボツ限界でしょう。循環可能な自然力を総動員して単位面積当たりの収量を現状より増やすことが私の目標です。まだスタートして5年目、試行錯誤中ですがご案内しましょう。
ここは元々、乾燥しやすい場所で、雨が少ないと作物が良く育ちません。乾燥地は生息できる植物や昆虫の種類や数が限られます。作物を植えると生態系が狂い思わぬ虫害に見舞われます。作物を作っても効率が良くないので、池を掘って環境改善を図りました。園内には山から注ぐ小川も流れていますが、予想通り全く異なった生物が住み始めました。水が流れている川と静止している池では微妙に異なります。ここでは藻(アオコ)が大量発生し、定期的に取り除いて乾燥させると大変いい肥料になります。また、葦類は他のハーブ類と発酵させると虫や病気除けになります。蛙やトンボも育ち、虫を食べてくれます。乾燥地に水を用意してあげただけで多様な生命が育つことを実感しました。
果樹園の傾斜地にも雨水の水道を調べて、溜池を掘りました。しかし、水が直ぐに無くなってしまい、ここはまだ成功したとは言えません。もう少し考えないと・・・(笑い)
単位面積当たりの収量を上げるため、生育の早いモノとゆっくり生育する作物を混植しています。これは生育の早い葉菜と生育の遅いエシャロットの組み合わせです。混植のもう一つの目的は害虫対策です。
果樹園は100種類近く植えていますが、成育中の樹木の高さを考えてバラバラに植えています。この方が単位面積当たりの収穫量が多くなり、虫も付きにくくなります。
どの圃場も、畝毎に作物が異なります
両側は背丈のあるグリーンピース、中央部は大根、人参の混植です。
この植物はアブラムシが好んで集まり、ビッシリ付きます。アブラムシが増えるとそれを食べる天敵のテントウムシが増えます。頃合いを見てテントウムシを捕って他の作物に移します。移転作業が終わったらこの株は焼却します。あちこちに植えておけばアブラムシの被害は殆どありません。
害虫対策植物はカモミールやミントなどの混植も効果があります。葦などの発酵液も良いです。
畝間には亜麻の滓や落葉樹のチップを敷き詰めて、草の生育を抑えています。根の保護や乾燥防止にも効果があります。プラスチックフィルムは使いません。
どうしたら単位面積当たりの収量を最大に出来るか試行錯誤した結果、この円形、盛り土に行き着きました。この形は平面より植え付け面積が増え、栽植本数が増やせます。緯度が高いので夏の日照時間が長く、太陽の位置も高いので日照が十分確保できます。作業もしやすいです。
当然、植える作物は諸条件を考えて植えますから、まだら模様になります。
マダムの意気込みは凄い!
実施している事は日本でも昔から行われていた事が多く、特段、珍しいことではない。効率、コスト優先の日本の農家から見れば「?」が付く。しかしハローウィン農場が目指している「単位面積当たりの収量増」への努力は評価に値する。実現できるかどうかは別にして、国の支援から「自立」への道を探る姿勢が素晴らしい。
円形土盛り方式には新鮮みを感じた。効率追究の日本人には考え付かない。マダムに「この形はパリの街(広場を中心とした円形放射状、渦巻き型)の様に美的感覚で作ったのですか」と聞いたら、「いや、理論的に考えたらこの形しかありません!」と自信満々に語っていた。
しかし、我々にはどう考えても手作業ばかりで効率を無視した農業に見える。これで飯(パン)が食えるのだろうか・・・マダムは、固定客が増えて、週で約100個の宅配を確保しているというから、一応の目処は付いている感じだ。売店の販売も順調な様だ。1月には貯蔵野菜や加工瓶詰め品の在庫がギッシリ並んでいたが殆ど売り切れていた。ご主人は前回、「現状は厳しいです」と話していた。10年単位の仕事として捉え、今後、新植した果樹類が収入に加わってくるから経営は安定するとも語っていた。
数キロ先の山の向こうは効率を追求している大規模農業地帯。こちらは人間、環境重視のオーガニック農業・・・豊かな緑と修道院のある良好な環境に恵まれた「ハローウィン農場」は、訪れる人々の心を癒し、ここで採れた野菜や果物は明日への鋭気を養うことだろう。。
フランス人は「食」と「バカンス」にお金を使う。残念ながら日本人は「食」も「バカンス」も使わなくなってきた。いや、使えなくなってきたのかも知れない。
フランスに行っても個人農家を訪ねる機会はなかなか無い。(2)で書いた日本人農家Yさんは当時パリに住んでいた知人に紹介して頂いたが、典型的なフランス人農家にお会いしてみたいと考えていた。その土地に生まれ、育ち、そして農業を続けている土着農家にである。
「どんな環境」?「どんな考え」?「どんな農業」?「どんな生活」?・・・直接会って聞いてみたい。この思いを1月に訪仏した折り、案内して頂いた留学生H/A子さんに伝えておいた。
3月上旬、A子さんから「知り合いの村長さんのお宅で『どぶろく』を造る事になったので一緒に行きましょう!村長は170㌶の農地を持ち、小麦などを作っているから、いろいろお話しが聞けると思います」。願ったり叶ったり!チャンス到来である。
5月1日(日)、車でパリを出発、広大な農地が広がるシャンパン街道を東進、昼前に村長宅に着いた。

回りは殆ど麦畑(画像上)・・・所々に菜種畑(画像左)と土が露出した圃場が見える。畝が作ってあるからホワイトアスパラ?かも知れない。
村長宅はここで代々農業を営んでいる名門。村の発展と環境問題に特別関心が深い。
作物は殆ど麦、トウモロコシ、菜種で170㌶経営している。政策的に保護されているので、生活は皆さん豊かだ。しかし、村長は「このままではいけない」と考えている。何故ならば、現状はもう機械化も収量増も限界に近い。メインの小麦は品質向上で収入増が期待できるか尋ねたら、品質価格差は余りない。天候により左右されるので難しいと答えた。収量平均は1㌶7㌧で北海道平均よりは多い。パリ近郊の地力のある土地では9~10㌧取れる所もあるという。これ以上収量を追究すると、残留硝酸窒素や病害虫多発による農薬汚染など環境リスクが高まる。遺伝子組み換え品種導入を別にすれば、現状の収量で、環境負荷は限界に近いだろう。
フランスの大型農業の将来については1月に訪ねたF教授のインタビューで指摘されておられたように、穀物農業は新興国との競争が厳しくなる。私の推測であるが、村長は村の将来像を描きつつ、大型農業一本槍から複数の道を模索し始めた様に見えた。冗談とも本気とも聞こえたが、日本から珍しい野菜のタネを持ってきて、自分の土地で作ってみないかと度々話していた。売る方はパリに知り合いのシェフが沢山いるから心配ないと・・・
流石、村長!チャレンジ精神旺盛である。当方も興味ある話である。
今、取り組んでいるのは自家製「マスタード」の製造、販売だ。2週間に1回、2.000個作って販売している。こだわりを聞いたらビネガー(酢)にあるという。自家栽培のからしの実と、村で採取した蜂蜜を発酵させて作ったビネガーを和える。奥行きのある味で、日本で販売されているマスタード(西洋からし)とは異なる。パリには老舗のマスタード専門店があり、フランス料理には重要な香辛料である。肉料理にお洒落なスプーンやミニカップに添えられて出る。
壁面にはツタが這わされ、風格のある佇まい。
フランス人は古いモノに価値を見出し、大切に保存している。村長は古い建物や景観の保存運動に、熱心に取り組んでいる。
フランス人好みの濃いローズ色の壁面は良き時代の雰囲気を漂わせる。
先代達はここでシャンパンやワインを飲みながら、充実した時間を過ごしたのだろう・・・
緯度の高いパリ周辺は冬が長く、底冷えして寒さが厳しい。
大きな薪暖炉が設えられている。
年代物の絵やグラスが並ぶ。
村長は若い頃から大のビール党らしい。ヨーロッパ中から名品を買い集め、近所の人達を相手にこのカウンターでビールバーを開いていた。
「こんな風にね・・・」とボーズ。
A子さんの提案で村長とフランス産「どぶろく」を仕込んだ。勿論、フランスには米麹は無いから、島根県出雲の酒蔵から取り寄せて送った。気温が上がると美味しい「どぶろく」が造れないので室温の安定した地下室で仕込みした。
瓶は運良く、地下室で見つけたと言う。昔、豚の塩漬けに使っていた瓶らしい。
予想以上に香り豊かで切れ味の良い「どぶろく」に仕上がった。
村長は3日位前が飲み頃だったかも・・・と言っていたが、充分に満足できる出来映えであった。
招かれた友人達が思い思いに食材を持ち寄ってパーティーの準備が始まった。男性達も参加して、お喋りを楽しみながら料理を作っていた。
今が旬のホワイトアスパラ、魚介類を使ったあっさりイタリアン系?料理、サラダなど・・・塩味が少しきついが、ハーブやスパイスの使い方は流石センスがいい!
お洒落で別荘の雰囲気!
いよいよランチパーティーが始まった。先ず、型通りシャンパンが抜かれ『乾杯!』。すぐ隣がシャンパンの産地、シャンパーニュで兎に角美味しい。
絶好の天気、楽しい雰囲気も加わってあっと言う間にボトルが空く・・・シャンパン、白、赤と続いて、宴たけなわ。
残念ながら私はフランス語が解らないが、皆さん相当なお喋り好きだ。
柔道愛好家Jさんは「フランス人はみんなお腹が出ているが、僕はこんなにスマートだ!」とシャツ脱いで肉体美を自慢していた。皆さん、気さくで愉快な人達だ。
フランスは食事が終盤に近づくとチーズが用意される。
この日もチーズの仕事をしているというMさんが十数種類のチーズを持ってきた。大変美味しいが、満腹に近く、あまり食べ慣れていないので彼らの様に沢山は食べられない。ナイフで適当な大きさに切って、ワインを楽しむのが流儀だ。
チーズの種類によってワインの味わいが微妙に変わる。
奥さんやお子さん達も一緒に来たが、別のテーブルで食事をしていた。フランス人は躾けが厳しく、子供達が電車内や食事中に大声を出したり、走ったりすると直ぐ注意される。何処に行っても静かでマナーがいい。
レディーファーストは当然徹底しているが、ついつい日本流の地がでてしまい、恥ずかしい思いをする。
子供は色白でお洒落。お人形さんのように可愛い。
短い時間ではあったが、フランス農家の生活の一端を知ることが出来た。日本の農村と比べれば、他人の事は余り気にせず、マイペース派が多い。都会人と比べ実直で素朴なことは日本人と変わらない。ゴルフ場は沢山あるが、パチンコ屋や温泉施設など庶民の娯楽施設は見かけない。フランス人の娯楽は映画で、映画のTV番組は早朝から深夜まで非常に多い。高速道路、鉄道など交通インフラはよく整備されている。買い物、旅行などは何処にでも気軽に行けるが、自宅で気の合う仲間が集まって気ままに料理を作り飲むのが日常の楽しみ方なのだろう。昔の日本もこういう風景が見られた。今は便利になりすぎて居酒屋や焼き肉チェーンなどがあちこちに出来、「自宅で・・・」と言うのは敬遠される。高齢化や個人主義の高まりで農家の集まりが減っているが、お互いにもう少しコミュニケーションの機会を作り、刺激し合って意欲を高めたい。
パリにあるミシュラン「三つ星レストラン」と言えば、世界の富豪や著名人が利用する最高級レストランである。ここで使われる食材は、世界最高峰と言える。
パリ西部にあるノルマンディーは、豊かな農業地帯で、お洒落な農家の建物が点在する。霧に包まれた先には広大な穀倉地帯が広がる。この高台に世界最高峰レストランに野菜を納めている痛快な日本人農家Yさんが住んでいる。初めて訪ねたのは2004年1月。その時の様子はe-yasai.com「NEWS」で紹介したことがある。
Yさんは30数年前パリに渡り、盆栽を作って生計を立てていた。その頃は日本の絶頂期で日系企業の支店や営業所が次々と進出、盆栽がフランス人にも受け入れられて繁盛していた。ところがバブル崩壊で次々と日本人が引き揚げ、盆栽に見切りを付けた。次に取り組んだのは「おいしい日本野菜」。日本に帰国する度に種苗会社を訪ね、種子を手に入れてフランスに戻った。住宅付きで農地(約20㌃)を借り、小さなハウスを建てた。自然循環型有機農業を目指し、鶏糞堆肥を作るため地鶏を飼った(圃場画像手前)。当時約50種類もの野菜を試験し、土壌と気候に合う野菜を模索した。大根、人参、小蕪、聖護院大根、牛蒡、里芋、枝豆、トマト・・・色々なタネを蒔いて育ててみた。2004年に訪ねた時の状況を少し書く。
ハウスを覗いて強烈な印象が残っているのはこの塩ビ菅である。1月の寒さの中で牛蒡の双葉が力強く芽吹いていた。「なんで塩ビ菅?」咄嗟には理解出来なかったが彼の説明を聞いて納得した。この地は緯度が高く、雪が少ないので土が凍結し、5月下旬にならないと土が乾かない。土質も重く、とても牛蒡を作る環境には無い。しかし、日本の野菜に牛蒡は欠かせないと考え、長い塩ビ菅に細かく砕いた土を詰め、タネを蒔いた。太さはともかく、香り豊かな美味しい牛蒡が育った。
(土)(日)を利用して自分の作った野菜を使ってレストランを開こうと目玉になる野菜を考えた。時期は夏、フランスには枝豆は無いなと思い、タネを蒔いた。しかし、生育が悪く、莢が付かない。色々調べた末、ここの土には根粒菌がいないことを知った。そこで北海道から根粒菌を取り寄せ、タネに塗して蒔いた。効果は絶大、見事な美味しい枝豆が育った。彼はレストランの人気メニューと言っていた。
秋に収穫した大豆は日本料理店の湯葉や豆腐の材料として売った。彼が作った自家製味噌も試食させて頂いた。
伝統的な和食(煮物)には、里芋は欠かせない。多分、フランスで作っているのはここだけだろう。
訪ねたのはスタートしてまだ3~4年経った頃と思うが、大きな試練が待ち受けていたと言う。パリの街は駐在員や日本人観光客が減り続け、売り先の日本食レストランの閉鎖が相次いだ。市場流通や宅配もトライしたが、パリの交通渋滞は仕事にならず、継続は致命的と映った。日本の様に気軽に宅配便が使える便利社会ではない。
いろいろ作って行く中で「小蕪」がシャンゼリゼ-通り裏で日本人が経営するフレンチレストランで評判になった。あちこちから注文が舞いこみ、美味しい物を作れば必ず売れると自信を持った。しかし、この時点では採算の採れる販売方法については未解決であった。
それから、7年の歳月が流れた。
農園の回りの風景も畑の様子も殆ど変わっていなかった。ビニールハウスと鶏舎は以前より少し広くなっていたが昔のままの雰囲気だ。笑顔で迎えてくれたYさん(画像中央)は相変わらず若々しくお元気そうだ。
早速、質問してみた。
予約半年待ち、1年待ちとか言われるパリの三つ星レストランには関心はあるが一度も縁はない。こう言う場所に出入りできる客は稀な人達であり、非日常的な世界である。但し、チャンスを作れば、常人でも客としては行ける。しかし、ここに食材を納めようとするには常人では不可能である。品質の秀逸性は当然のこととして、食材を作る人にカリスマ性、オーラがなければ無理である。
Yさんのトマトにオーラがあるのは理屈、講釈ではなく、彼の盆栽師としての経験と感性が関係している。盆栽の事はよく解らないが、毎日樹と対話しつつ、折り合いを付けながら自分の描いた姿に導いて行く・・・彼のトマトは正にこの一期一会の世界で育てられている。私が知る限りでは北海道のTさんがいる。敢えて書かないが、農家哲学が共通している。
話に夢中になってトマトの画像を撮るのを忘れてしまった。
未だ50cm位で、特別な樹ではなかった。
それにしても、一度Yさんのトマトは食べてみたい!
フランスの「農と食」については日本にも参考になることが多いので度々紹介している。仕事の都合で、訪ねる時期がいつも正月明けだが、今年もTPP問題を絡めて関係者に取材し、ブログに書いた。しかし、肝心の圃場は、この時期は地中海沿岸を除いて荒涼とした冬景色で、現場の様子は見ることが出来ない。店頭の野菜は馬鈴薯や玉葱、人参など貯蔵品、地中海、アドリア海方面からの輸送品が多い。今回は、作物が生育し始めた5月の連休を挟んで、パリを起点に各地を訪ねた。
早朝、シャルルドゴール空港に到着、そのまま市内の友人宅に向かい、朝食を作って食べることにした。
先ずは買い物である。パリは朝早くからマルシェ(朝市)が開かれ、数々の食材や惣菜が並び、食べモノには不自由しない。勿論、カフェに入れば日本で言う「モーニングセット」がある。クロワッサンとトースト、オレンジジュース、紅茶か珈琲が付いて12.5ユーロ位(チップ込み1.500円)で高い。ホテルの朝食は18~20ユーロは覚悟しなければならない。紅茶は何処の店もティーパックでイマイチ。珈琲は美味しく、オレンジジュースはフレッシュ、搾りたてが多い。クロワッサンは当然美味しく、トースト付け合わせのバターやジャム(小瓶入り)も手抜きはない。
パリ市庁舎近くに大きな建物の中に入っている常設マルシェがある。付近は高級住宅街で、売られている商品レベルは高い。屋外広場にはテント張りの店も出ている。
EUは環境問題に真剣に取り組んでいるからご覧のように照明は日本と比べて薄暗い。
決められた曜日に歩道の両側で開かれるマルシェ。
この日は日曜日で、500m以上続く店は買い物客でごった返していた。アフリカ、中東、東欧、北欧・・・多様な文化圏の人達が暮らし、見慣れない珍しい食材も並んでいる。
食料品の他、低所得層向けの衣類や日用品も並ぶ。
世界のブランド店が連なる中心街との落差が、この国の格差社会を伝えている。
屋内マルシェ内には青果店が花屋を含めて10店くらい営業している。日常食べる野菜は、殆ど揃う。
生野菜はイタリアンというイメージが強いが、フランスでも健康指向で、サラダ野菜を沢山食べる様になった。春野菜のシーズンで品名はフランス語で解らないが、葉菜類が多種類並んでいる。販売は1株単位だ。
オリーブオイルをベースに塩、胡椒、チーズ、ハーブなどを使ってオリジナルのドレッシングを作って食べる。
調味料はそれぞれ種類が多く、作る人の腕が問われる。

名称は思い出せないが非常に美味しい。
店のマダムに聞いたら自家農園で栽培しているという。農園を見せて頂く時間が無かったので、栽培法を尋ねたら「砂栽培」でオリジナルの肥料で育てていると言う。
砂に含まれるミネラル分とアミノ酸肥料が独特の食味を実現している様だ。
赤カブ(レッドラディッシュ)は料理の彩りによく使われる。甘味があって美味しい。色も美しい。
最近の売れ筋商品「サラダ玉葱」
機能性成分が豊富で、生で簡単に食べられ、美味しいのが人気らしい。辛みは少ない。
日本には大玉はあるが小玉は?
チコリは欠かせないサラダ野菜。サンドイッチや煮込みなどにも使われる。ベルギー産が有名。
トマトは生食でも食べるが、加熱調理が主流。
中玉、ミニ系が多く、日本の様に見栄えは良くない。
そのまま食べると糖度の高いトマトを食べ慣れた日本人には?・・・加熱調理すると美味しい。
房取りトマトも多い。

色々な品種が売られている。
ピーマンもバラ売り。

マッシュルームなどキノコ類はフレンチでよく使われている食材。ブラウン(左)とホワイト(左下)の2種類があり、日本で売られているモノより大きい。
ホワイトアスパラはフランス人が好んで食べる食材で今が旬。
日本の物より太くて立派なだが、表皮は紫外線に当たって少し紫色(アントシアニン)が出ている。消費者は日本人のように外観にはあまりこだわらない。こちらではアスパラガスと言えばホワイト。
計り売りで、日本の様に束ねて売っている店は少ない。。
グリーンアスパラガスも軸太で短い。
サヤインゲンは料理の付け合わせによく使う。
グリーンピースは5月が旬で、色々な料理に使われる。
ここでは日本の様に?いた物は見当たらない。
長ネギ?
ローズマリーなどハーブ類はよく使われている。フレッシュ、乾燥、粉末にした物など種類が非常に多く、専門店がある。オーブン焼き、煮込み、ハーブティーなど用途は広い。
ニンニクは地域により多少種類が異なるが、重要な香味野菜。

エシャロット
ヨーロッパで作られている人参は殆どこのナンテス型で小型。
千切りしてサラダや湯通しして食べるが、甘みがあって食味は良い。
1個か計り売り。
今の時期は収穫の秋でを迎えた南アフリカ産が多い。
マンゴはとても美味しく、デザートとして良く食べられている。
果実類は最もグローバル化が進んでいる農産物で、嗜好の差はあるが、先進国は何処も同じ様な種類が並んでいる。
主要な果実は大量生産した工業製品と同じで世界を駆け巡る。

イチゴは糖度と酸味バランスが良く、美味しい。
デザートによく使われる人気果実。
オリーブの果実(塩、酢漬け)はフランス料理に欠かせない。
商品が未入荷で撮影できないため、マダムの笑顔で・・・
マルシェの人達はみなさん愛想が良く、仲良しだ。

豚、鶏、牛、羊などがある。生肉よりもサラミ、ソーセージ、生ハム、コンビーフなどの加工品が多い。
日本ではコンビーフと言えば缶詰だが、ここでは自家製のコンビーフ。試食させてくれたが実に美味しい!
自慢の商品らしい・・・

美味しいワインに美味しいチーズは最高!
フランス人からチーズを取り上げたら生活できない?
牛乳、山羊、水牛乳など各産地から集まった100種類位のチーズが並ぶ。

フランスパン、ドライフルーツやチーズパン、クロワッサン、パイ、タルトなど流石にパン文化の国だ。
10数年前からフランス、イタリア、スペイン、ドイツ、オーストリアなどEU各都市のマルシェ(朝市)を訪ねてきた。イタリアやスペインなどの地方都市はともかく、主要都市で売られ日常的に食べられている農産物はグローバル化、共通化が進んでいる。日本でも既に海外の農産物がブランド品を含めて多数上陸し、手軽に買える。日本ほど多様な食文化を持つ国は世界でも珍しいかも知れない。
今回は市民が気軽に日常の買い物をするマルシェを訪ねたが、パリには高級スーパーが沢山あり、また「ベルサイユ宮殿」近くにある旧貴族が暮らす街には、格別高級な食材が揃う市場があり、この記事は以前に少し書いた。
次回はこの格別高級な食材を作り、売る店を訪ねてみたい。
中国人はどの地域に行ってもよく飲み、よく食べ、食事を大切にしている。
一口に中華料理と言っても、地域により独自の料理がある。分類の仕方は色々あるが。日本では、西は四川、北は北京、東は上海、南は広東料理と分類するのが解りやすい。河南省は歴史上、都が置かれた都市が多い。中でも鄭州は東西南北に通じる交通の要衝であった。四川、北京、山東、上海(浙江省)など周辺地域からの往来が盛んで、多様な食文化が融合して、独自の河南料理が生まれた。
内陸のため、魚は地元産(黄河水系)川魚が多く新鮮。丸ごと油で揚げた料理はご馳走品。頭部を招待客に向けて出し、みんなで小皿に取って食べる。魚の名前は馴染みが無いので覚えていないが、蛙料理もあった。ウナギ料理は好んで食べられている。
豚肉が多く、羊、山羊、鳩、鶏、最近は高価な牛肉も比較的気軽に食べられている。冷凍品が少ないので臭みがなく、おいしい。
夕食会に招待して頂いたR社長の兄上が、洛陽最高の山羊肉を買って来てくれた。沖縄の山羊汁を想像して「やばい!」と思ったが、全く臭みがなく、非常に美味しく、あっと言う間にテーブルから消えた。。山羊は種類が多いらしく、新疆ウイグル自治区の草原にいる羊に近い種類だと言う。
世界遺産「少林寺」のある街に山羊鍋に麺を入れて食べる名物料理がある。恐る恐る食べ始めたが、美味しくて軽く食べ切った。肉や具野菜が新鮮で、麺も美味しい。スープにコクがあり、辛かったが山羊の臭みは全く感じられない。
何処に行っても出てくるのが大豆料理。湯葉料理は種類が多く、河南料理の代表的なメニュー。日本の湯葉より少しキメが荒い感じがするが、豆の品質が良いのでどこで食べてもハズレは無い。湯葉巻や揚げ物が多い。
豆腐は麻婆豆腐をはじめ、料理の種類が多い。豆腐自体が固く、内容が濃くて美味しい。
野菜料理は豊富にある。葉菜類は青梗菜をはじめ、香菜、ほうれん草など各種青菜類、ニラ、白菜、レタス、もやし、長ネギ・・・種類が多い。果菜類は胡瓜、トマト、茄子、ピーマン、パプリカ、南瓜・・・日本とあまり変わらない。今は鹿児島周辺でしか食べられない「ヘチマ料理」は目を引く。加熱調理が中心の中国だが、生野菜も随分、食べられるようになってきた。日系企業のコンビニやレストランチェーン、居酒屋などの進出、訪日観光客の増加などが、中国食文化のグローバル化を後押ししている様だ。
米と小麦だが、トウモロコシや雑穀も併用して食べている。米は白飯より炒飯や粥で食べるが、何処で食べても美味しい。ホテルの朝食は数種類以上の粥が用意されており、稗や粟など雑穀を混ぜて炊いた粥が美味しい。雑穀は量販店でも多種類売られており、健康維持に好んで食べられている。同じホテルに7泊し、朝食に雑穀粥を食べていたが、髪の毛に艶が出て、少し黒くなってきた。帰国後、家人が気付き、鏡を見てビックリした。通訳のCさんにどの様な食材が使われていたのかホテルに問い合わせてもらった。特別な材料は使っていないという回答であったが、毎日食べていた河南料理自体に血行をよくする薬膳的な食材が使われていたのかも知れない。
中国では髪の毛は「血余」と呼び、全身を巡って最後に余った血液が髪の毛に使われると考えられている。育毛剤でも効果が出てくるのは少なくとも3週間くらいかかると思うが、僅か1週間で目に見える効果があったのは注目に値する。
日本でも「長命食」など雑穀類や昆布を組み合わせた健康維持食品が売られている。「長命食」については自分で実験したが、黒髪効果は素晴らしい。
薬膳的な調味食材を用い、多くの料理は画像の様に茶褐色系が多く、日本の中華料理のイメージとは異なる。説明不能だが河南料理独特の風味がある。唐辛子を多用した辛い料理も多いが、北京料理のように油っぽさはない。中華料理と言っても馴染みの薄い味付けだが、私には違和感はなかった。
中国の宴席は「乾杯」の繰り返しで、アルコールに弱い日本人が閉口したという話しは多い。実際に中国人は底抜けの酒好きである。最初から「酒は医者から止められている・・・」とはっきり宣言しないと大変なことになる。しかし、ここは中国。遠来の客は「友人」として盛大にもてなすことが伝統。多少無理をしても、これに応えないわけにはいかない。
河南省で飲まれている酒は、主に「白酒」でアルコール分は40度を超す。これをグラスに注いで「乾杯」して飲み干すのが礼儀。現在は半分くらい残しても良いルールになったと言うがそれにしても度々の乾杯は恐ろしい。スタートはビールで誤魔化していたが、段々盛り上がってくると相手に合わせて勝負に出なければ本当の友人になれない?・・・。白酒よりアルコール分の低い「紹興酒」(18度位)で勘弁してもらおうと聞いたら、ここではあまり飲まれていないらしく用意が無いという。しかし、いつの間にか瓶入りの紹興酒がどっさり用意され、30cmもある大きなドンブリ鉢に、ぬる燗を付けてテーブルに置かれた。酒飲みゲームの始まりである。
先ず、勝負する二人がグラスに並々酒を注ぎ、互いに見せ合う。「中国式ジャンケン」(出すと同時に二人の合計数を言い、当てた方が勝ち)があちこちで始まった。本来は負けた方はグラスを飲み干さねばなければならないが今夜は半分ルール。
途中で日本ではどんな遊びがあるのかと聞かれ、高知の「はしけん」を紹介した。後半は日本ルールで大いに盛り上がった。小生は15回戦までと区切って遊んだが、10勝5敗で切り抜けた。
日本もバブル景気華やかな頃、「○○盛り」や「△△△酒」など今思えばえげつないお座敷遊びが流行った。中国にも伝搬したらしいが、間もなく当局に禁止されたという。兎に角、中国人のエネルギーが盛り場にも溢れている。
宴会好きの中国には、会議や結婚式で大勢の招待客に対応できる巨大なレストランがある。
この庭園レストランは、鉄パイプ構造、太陽光線の通る屋根で覆われ、建物内で植物が育つ環境に設計されている。
建物全体が巨大な植物園と言って良い。
内部は広い通路を挟んで、すべて観葉植物で仕切られた個室になっている。
個室のテーブルには花が飾られ、専用トイレが付いている。他室の客と顔を合わすことなく、ゆっくり食事が楽しめる。部屋数はざっと100室位はある。
厨房は客室から50m位離れた巨大専用棟が2棟ある。画像は厨房と客室を結ぶ廊下でここを通って客室に運ばれる。
厨房で作られた料理は、冷めないよう直ちに配膳車に載せられ、スケート靴を履いたスタッフによって、フルスピードで客室に運ばれる。
「サービス」が劣る」と言われていた中国だが、すでにここまで進化している。
但し、このサービスは日本人には馴染まないエンターテイメント=米国流だと思うが・・・
中国には珈琲はあるが日本人のように日常的には飲まない。伝統的にお茶文化で、お喋りしたり、静かに一服する場所として中国茶館がある。
個室が主流で、料金は高いがゆっくり静けさと中国茶が楽しめる。
中国国内、台湾の厳選された銘茶が揃っていて、専任スタッフが伝統作法に則って、入れてくれる。
お腹が空いたら別階で、軽い河南料理が楽しめる。こういう場所でのんびり時を過ごすのも悪くはない・・・
古都にはよき文化を楽しむ場所がある。
本場の味と言うよりも中国人の味覚に合うようにアレンジしてある。中国人は食にこだわるので、チャイナ風イタリアンも結構いける。
都市開発が進んで庶民の買い物市場が閉鎖され、日常の買い物は量販店に移っている。店内は撮影禁止だから画像は無い。
住宅街近くにある台湾資本の量販店を覗いて見た。ハンバーガーなどファーストフード店がテナントに入っているのは日本と変わらない。売り場の規模と商品の種類、量の豊富さは、様変わりしている。バラ売りが多く、高級品から低価格品まで幅広い品揃えをしている。遠くの産地から運ばれてくる野菜も多く、日本と同様に旬が薄れてきた。価格は十年前と比べて随分高くなってきた。じわじわインフレが進行していることが窺える。
中国人がよく通う足マッサージも、80元=1.200円になり、10年で2倍近くになっている。