

今年も世界的に色々な事件や異変が起こり、波乱に満ちた1年であった。国内では大震災、津波、原発事故、記録的大雨、日照不足、気温変動など、人間の知恵や力が及ばない自然の猛威に翻弄された。考えてみれば毎年、大なり小なりこの繰り返しである。近年、地球温暖化が気候変動の原因とする共通認識が定着したがCOP17の結末が示す様に人間のエゴ、目先の利益追求は容易に止まらない。
日米欧先進国の財政危機も、国内外の利害が複雑に絡み合って、的確な対応策は打てず、世界経済の先行きは未だ不透明である。
日本の経済が良くならなければ消費は停滞し、農業も盛り上がらない。農家も世界経済の動向に関心を持ち、グローバルな視点で未来を考えて行きたい。
11月下旬から青森(津軽)、北海道方面を歩いてきた。これらの地域は国内でも経営規模が大きく、基本的に稲作、畑作中心の農業だが、減反政策で、トマト、メロン、スイカなどの果菜類や大根、人参、長ネギなど露地野菜が増えた。現地で聞いた話しを書く。
(果菜類)
トマト、メロン、スイカなど果菜類は、春先の天候不順で生育出遅れが目立ち、一部大雨などの被害もあって切り上がりも早かった。従って通期で品薄傾向となり、例年の様に盆前の暴落場面もなく、全体的に高値で推移、総じて生産者の顔は明るかった。高騰したトマトなどは、天候異変で品質が低下した産地は市場で買い叩かれたという話しも聞いたが、今年の様な品不足の年は、品質は二の次、出荷した者勝ちの様相は否めない。
メロンはギフト需要の低迷が懸念されたが、出荷量が限定的だったため、まずまずの価格で推移した。スイカも高気温に支えられて好調だった。
この所、余り元気の無かった胡瓜やピーマン、茄子の産地も息を吹き返した。全国的な収量減と東北主力産地(福島、岩手)の出荷減で需給が締まり、堅調相場が続いた。但し、需要が伸びている訳ではないので、来年もこの状態が続くか否かは定かではない。
果菜類は管理に手間がかかり、ハウス用パイプや被覆資材が値上がりしているため、新規投資して規模拡大する生産者は余り見かけない。今後の栽培面積は現状維持か暫減傾向。高齢化で減反、廃耕する生産者もじりじり増えているが、品種改良や栽培技術の向上で、面積減分をカバーしている。出荷減は頻発している気象災害の影響が大きい。
経営規模としては、家族労働中心でトマト50㌃、メロン1.5㌶、スイカ2.5㌶、パート雇用でトマト1㌶、メロン3㌶、スイカ4㌶が目処である。一時増えた大規模企業化農業は、収量や価格変動が大きい上、収穫期間の短い北国では採算的に難しい。特に有利販売を目指すトマトは、安定した高品質が求められるため、大規模栽培すると管理が行き届かず、ロスが多発して、収益が伴わない事例が多い。
メロンは品種改良が進んで春から秋まで栽培できるが、大規模栽培すると適期管理と労働力の配分が難しい。ブランドメロン産地夕張市のKさんは4㌶のメロンを作っているが、2月頃から11月迄外国人労働者を雇用するため、メロンの後作として、ホウレン草を作り、収入を確保している。
富良野でスイカを主力に経営している農業会社T社は、パートでは微妙な管理が行き届かないと、正社員を年間雇用し、プロの農業人育成に取り組んでいる。4~5年前、スイカ15㌶に挑戦したが、まだ管理技術が伴わず、病害が大発生して一旦縮小、メロンやアスパラガス、スイートコーンなど多角化に取り組んだ。 しかし、品目を多くすると労働力が分散して効率が悪く、販売も思っていたほど簡単ではなく、忙しいばかりで収益は上がらなかった。スイカのプロが育ってきたので来年は再び15㌶に挑戦する。品質については市場から高く評価されており、特に品薄になる9月出荷を要請されており、勝負をかける。接ぎ木ロボットの導入を含めて、徹底的な省力、低コスト化を図る。スイカは作柄、需要とも天候に大きく左右されるが、夏から秋にかけての高温化が定着し、この時期はライバル産地が限られるため成功する確率は高まっている。
(南瓜)
定植遅れと日照不足、大雨などが影響して全体的に品質不良、大幅減収の地域が多い。病害も多かったため貯蔵や輸送中の腐れが目立ち、特に道北産地では苦戦した。数年前より果皮にイボ状の突起がでる病気が増えており、出荷歩留まりに影響している。ボルドー液などの散布で対応出来るという話しもあるが、元来、防除回数は1~2回が限度。今後は防除対策を再検討する必要がある。
南瓜は5~6玉中心に仕上げないと農家は収益が上がらない。今年は品種にもよるが栗系は7玉中心の産地が多い。不作の割に相場は低迷し、一部のブランド南瓜を除いて厳しい年であった。九州で抑制、貯蔵南瓜がジリジリ増えており、今後、道産、西南暖地、輸入品の棲み分けが課題となりそうだ。
量販店は11月以降の道産品は傷みが早いので、今年度は早めに見切りを付けて、輸入品にシフトしたという情報もあった。
また、今年度の小玉傾向と、店頭価格を大幅に下げるため、7・8玉サイズを主力に販売する量販店が増えているという(産地業者の話)
(玉葱)
主産地空知、富良野は定植遅れと大雨の被害で大幅減収、北見、斜網地区は雹の被害が懸念されたが平年作に近いという。不作の割に相場は上がらず生産者の表情は厳しい。
JA担当者の話では「昨年は異常な高値、今年は昨年に比べると安いが、平年並みの値段です」と話していた。玉葱は納入価格がある程度決まっている加工向けが多いため、昨年の様に暴騰すると業者は赤字となる。その為加工用として、産地と数量と価格を事前に決めて、毎年、国産品を一定量供給、輸入品の突出流入を防ぐシステムが構築されている。しかし、昨年の様に極端な減収、市況暴騰があると、取り仕切っているJAに対し生産者の不満が強まり、安定集荷が難しくなるという。
加工業者は昨年の暴騰に懲りて、一部輸入品を増やした様だ。
(馬鈴薯)
昨年に引き続き不作だが、青果用は販売不振で相場は低迷している。量販店売り場では、馬鈴薯は惣菜に使う業務用が拡大している。「買い」の問い合わせは殆ど業務用で、価格の安いSサイズやB、C品。青果販売用の馬鈴薯はブランド品を別にして苦戦が続いている。
(人参、大根、牛蒡)
青果需要は長期低落トレンド。伝統的な野菜であるから、業務用に活路を見出すチャンスはあるが、単価的には厳しい。いずれにしても大規模低コスト栽培か、小規模こだわり栽培が基本となっている。
天候不順で作柄、相場とも不安定で、技術のある生産者は契約栽培の道筋を付けたい。
世界競争の中で圧倒的に不利な作物は、土地利用型、つまり大規模低コスト栽培の穀物類である。自由貿易交渉でいつもこの分野が攻められる。穀物は自国の安全保障に係わる重要作物であり、簡単に譲歩することは出来ない。さりとて、3~5倍もある内外価格差は解決不可能な水準であり、自給も米以外はままならない。
米、麦、大豆、トウモロコシ(飼料)、菜種(採油)、甘味作物(砂糖)、芋類(澱粉)・・・昔から作ってはきたが、国際競争に耐えうる穀物は見出せない。。
強いて言えば、伝統的に慣れ親しんだ食味と品質、国産という安心感がある。効率化して生産コストを削減することは当然だが、方向性は「商品価値」の向上が基本であり、内需だけではなく海外需要を含めて新規開拓に挑戦したい。穀物は単価が安く、単位面積当たりの収入が低いから、投入資金は限られる、天候要因も大きく係わるから、大きな改善は期待しにくい。しかし、生産者としては現状に甘えず、最大限の努力が求められる。
(水稲)
安定した売り先があればJAS有機や特別栽培も選択肢であるが、近年の気候変動で病害虫リスクが高まり、防除について充分検討しないと収益向上に結びつかない。但し、安全指向に変化はないから、病害虫発生の少ない地域では、検討の余地はある。当社では生産者の状況をお聞きして栽培提案を行っている。創意工夫と販売先の開拓意欲があれば取り組みは可能である。栽培も販売も最低3年以上頑張らないと先が見えてこないから拙速は禁物である。本格的に取り組むには設備投資の問題が出てくるので、先ずは栽培技術をマスターしながら売り先を開拓するのが無難である。業務用(レストラン、給食、弁当など)は食味と価格のバランスが良ければ契約価格で安定した販売が期待できる。家庭飯米用は需要減傾向が止まらないから、小口客を深追いすると手間や送料が嵩み、採算が厳しくなる。
一般的には慣行栽培でコストを抑え、品質と収量を上げたい生産者が大多数だと思う。
品種選択以外は育苗と肥培管理がポイントとなるが、今後は更に大規模化が進むから細かい管理は不可能であろう。水稲農家は同じ土地で長年作っているから、水田の特徴を把握している筈だ。今までの状況と天気予報を勘案して元肥の量を決めるのが精々である。最近は蛋白値(食味値)により販売価格が決まる場合も増えているので、窒素成分を控える傾向が強い。昔は単肥配合で田により微妙に調整していたが、今は殆どが地域汎用配合で、施用量の調整が限度だ。使う原料は大体決まっているから、平年の天候ならば食味が云々という程の差はでない。但し、原料の組み合わせ割合と天候との関係で品質に影響する場合があるから、配合内容は見極めたい。
化学肥料をベースに食味を良くし収量も確保するには副資材が使われる。大きく分けると水質改善、菌体、有機質(アミノ酸)、ミネラルなどとなる。米の食味改善に関してはいろいろ研究されているが、圃場と天候次第という面もあるので決め手はない。農家で使われている資材は炭、嫌気性菌、ぼかし肥料、骨粉、魚粕、米糠、グアノ燐酸、貝化石、粘度鉱物、にがり、海藻・・・・など多様である。どの資材もある程度以上の量を使わないと実感できる効果は期待しにくい。一般的に使える副資材は反当3.000~5.000円程度と思われる。
副資材を使わずに一発施肥で効果を上げる資材はないのか・・・こんな思いで「PK配合」を企画し試験を始めた。
「PK配合」は燐酸、加里、苦土、石灰、マンガン、ホウ素、硅酸などを含む鶏糞燃焼灰、パームアッシュ(ヤシガラ燃焼灰)をベースに、窒素源として尿素、硫安、燐安、混合有機質肥料などを配合している。燃焼灰は酸処理で中性に近く、水溶性とく溶性溶性を含んでいる。
代表的な配合例(保障成分)は
窒素・・・12%
燐酸・・・18%
加里・・・10%
2011年度は北海道(空知、渡島)、岐阜県(飛騨市)で予備試験を行い、生育と収量は慣行と比較して遜色が無いことを確認した。食味については準備不足で、今回は結論が出なかった。試験してくれた農家は「充実が良いのでくず米が少なく収量もあった。食味も良いのでは・・・」と話していた。来シーズンの結果に期待したい。
(小麦)
コスト対効果を現状より上げるには「ミネラルPK」と硫安の組み合わせが最も良く、十勝では実用化されている。特に燐酸吸収係数の高い圃場にお奨めしたい。
(大豆)
有機成分(ぼかし)を含むPK配合(3-24-13)を作り試験した。試験区、対照区共に播種後雨続きで発芽がばらついたため、収量比較が出来なかった。順調に発芽し生育した株の状態を見ると着莢数が多く、期待できそうだ。
穀物はコスト最優先であるから、輸入化成肥料も選択肢である。ただ輸入は1コンテナ1000袋単位になるので、もう少し小ロットでと言う要望があり300袋(海上コンテナ)または250袋(JRコンテナ)単位で取り組む。
配合割合は生産者の希望により決められる。
(画像)
PK配合試験区・・・北海道樺戸郡浦臼町内
重要なのは成熟期に入った日本で、新規を含めてどの産業に重点を置いて「財政」を立て直し、増大する社会保障などの出費に備えるかである。戦後の産業発展で国や企業、国民の資産は確かに増えたが、バブル崩壊で縮小してしまった。年金、医療、雇用保険などの積立金、埋蔵金も減少しており、一部の企業年金、健康保険組合は破綻して政府管掌保険に編入されている。収支バランスを取るため、毎年大量の国債を発行し、低金利で国内販売し約90%が日本国民、企業が持っている。しかし、国内の預貯金残高は減少に転じており、あと数年で買い付け余力が無くなるという。その後は海外の投資家に引き受けてもらうしかないが、高金利になると金額が大きいので、借金は雪だるま式に増えて行くと専門化は警告している。
直近で深刻なのは雇用が縮小していることである。雇用されても正社員ではなく契約社員が多く、収入は限られ、公的年金、社会保険の納付額は大幅に低下する。契約社員の約9割が年収200万円以下という。生活保護世帯204万に急増、年金支給年齢68歳に引き上げ、増税の検討着手など、国の財政危機は目前に迫っている。この様な社会到来で、農家が作った農産物がまともな価格で売れる保障は何処にも無い・・・・
この難局を乗り切るには先ず、ライバルが増えている従来型産業から未来型ハイテクに変えなければならない。人口減で内需では成長できないから、従来型はこれから成長する国々の需要を掘り起こし、取り込まねばならない。そのためには相互互恵の自由貿易で海外に出て行くしかない。しかし、農業の海外進出には食の安全保障を懸念して反対論が根強い。
今こそ大局観を持って小異を捨て大同につく英断が求められる。国際競争力が弱いと言われる農業だが、技術先進国であり、農業生産金額も世界5位の農業大国である。農民が自信を持ち、グローバルな視点で知恵を搾れば再生の芽は充分ある。例えば今まで多額の農業予算を使って育てた技術を国内だけではなく、海外の必要としている地域に提供し、収入源に育てる。技術を海外で生かすことは工業製品では常識である。相手国の経済発展に役立ち、日本製品の新規需要の掘り起こしにも役立つ。以前にも書いたが既に「日本食ビジネス」の海外展開が着々進んでいる。食関連企業はグローバル化を図らなければ、成熟した日本では成長出来ない。今後も投資は続くと思うから連携のチャンスはある。一筋縄ではいかないが、チャレンジ出来る人材の養成から始めなければならない。
「今の百姓にそんな事は出来ないよ・・・」という言葉をよく耳にするが、日本が発展できたのは「不可能を可能にした」先人達の情熱と、血の滲む努力があった。もう、ここまで来たら農業人は「甘え」「ぬるま湯」体質を捨て、今まで培った技術をフルに生かして国際競争に挑まなければならない。
先日、世界的指揮者小沢征爾氏が記者会見で「日本の若者はもっと積極的に海外に目を向け、出て行くべきだ。内向きは良くない」と危惧の念を述べた。一時、日本の若手音楽家の国際舞台での活躍は目覚ましかった。最近は中国や韓国など新興勢力に押され気味であることを懸念して述べたのだろう。
農業界は自分達の既得権を守るため様々な規制をかけ、新規参入をコントロールしてきた。そのツケが今、廻ってきたと言える。高齢化、過疎化、人材、労働力不足にやっと気が付いて政策が打たれつつあるが、対応の遅れは否めない。外国人労働者に来てもらうだけではなく、自ら相手国に乗り込むくらいの若手農業人を育てなければならない。
果菜類の多くは秋になると、割れやすくなる。いわば次世代に命をつなぐ生理現象で、種子が入っている果実を自分で割って地表に落とす。夏秋トマトは彼岸を過ぎる頃、割れが目立つ様になり、減収の原因となる。品種改良が進んで以前より少なくなってきたが、美味しい品種にこだわる農家は簡単には乗り変えられない。
特にミニトマトは、輸送途中も割れが発生しやすく、クレームが付き易い。品種格差はあるが、一般的に割れにくい品種は果皮が固い傾向があり、皮が口の中に残って食感が劣る。割れが多くては商売にならないから、色々な方法が提唱されている。
安直な方法は、サクランボなどに使われている割れ防止剤。ミニトマトにも登録があり、安心して使える。土壌潅水と葉面散布両用だが、割れ発生時期から大凡1週間位前から毎週1回継続散布する。発生してから慌てて散布しても効果は出にくいから、必ず継続的に散布する。コストは多少かかるが、収穫歩留まりが上がれば安い。いずれにしても割れの発生原因をキチンと把握して、対応することが肝要である。
【裂果発生原因と基本対策】
① 水分や肥料分を急激に吸収すると割れる。
秋になったら液肥や潅水は一度に多く施用しないで控えめにする。秋雨などが続いて過湿状態になると割れやすくなるから、外から湿気が入らない様に心掛ける。
② 日中と夜間の温度差が大きいと割れやすくなるから、日中は換気を十分にし、夕方は早めに閉めて夜間温度を保つ。
③ 秋に草勢が落ちると種族保存本能が働いて、果実が割れやすくなる。根張りが良く、草勢バランスの良い元気な樹は割れが少ない。長段収穫で秋まで安定した収量を上げるためには、やはり安定した土作りで草勢バランスを健全に維持する事が基本となる。
北海道後志の農業会社Y社の話しでは、今年も周辺では割れが多発しているが、自社の出荷実績を見ると土作り、施肥の仕方で発生割合に大きな差が出て、メンバー達の話題になっているという。
同社は割れに強く、作りやすいアイコを栽培している。初期は草勢が強く、大玉傾向になりやすく、糖度も上がりにくい。作り方によって果皮が固く口に残り、渋みを感じて食味が落ちる事が弱点とされている。中盤を過ぎると糖度も上がりやすく、収量があるので、急速に普及した。割れに強いと言っても、秋になり一歩間違うと、歩留まりが急降下する事もある。初期から終盤まで品質と収量を安定化する目的で、2年前に100%有機「バランス684」と「根づくり名人」の2点組み合わせに切り替えた。糖度は常時9度以上あり、果皮も気にならず食味が高く評価されて売れ行き好調である。割れの軽減は全く想定していなかったが、根張りが良く、水分や養分がバランス良く吸収されると樹が老化しにくく、果実が無理なく肥大して割れが少なくなる様だ。
割れを抑えて秋収穫にピークを持って行きたい生産者は、定植時期を遅らせて抑制型で作る。しかし、収穫期間が短く、収量は限定的となる。
長期収型では、夏休みで需要が減り、相場安となる7月末頃から花房や老化した葉を整理し、水をたっぷり与え一旦樹を休ませ、新たに脇芽を吹かせて仕立て直す方法がある。前半で疲れた樹や根を1月くらい養生しスタミナを回復させる。需要期に入る9月に再生した樹で、高糖度、玉肥大を狙い、病気や割れを防ごうとする考え方である。数年前から実践している空知のNさんは「今年は8月も価格が良かったから採算的にどちらが有利かは言えない。しかし、真夏の暑いハウスで収穫するよりも涼しくなってからの方が楽して頑張れる。割れは確かに少なくなく、作業効率が上がると話していた。
生理現象であるから、色々な要因が係わってくるから完璧は期待できないが、基本をキチンと整えることで、減収リスクはかなり軽減できる。上記は、大玉トマトにも共通する。
時期にもよるが、量販店で販売されている一般的なトマトは5~6度、ちょっとこだわっている商品で6.5度程度、高級店で7度台か8度以上のフルーツトマトが一般的である。大玉で、通期7度台を維持し、収量減をなるべく少なくするには、かなり高度な技術が必要である。相場次第のレギュラー品から、再生産価格維持、安定経営への道筋を付けるには、消費者の糖度要求が切り上がっているから、技術向上が求められる。
大玉の作り方は各人各様である。レギュラー品では、品種改良が進んで普通に作ればあまり糖度格差は出ない。しかし、高糖度トマトでは、同じ条件のハウスで同じ管理をしても糖度は相当バラつく。交配種と言えどもストレスを与えると、樹による糖度バラツキが大きくなる。全体のレベルを嵩上げして7度台をクリアーするにはどの様な点に注意したら良いか高糖度生産者や指導者に意見を聞いてみた。
(品種)
ストレスを与えて糖度を上げる栽培では、市販高糖度品種ならば、管理技術のウェートが高いため品種優劣は付け難いという意見が多い。むしろ、品種の特性を徹底的に勉強して、その能力を引き出す事が大切と言う。糖度以外に酸度や食味、肉質、果形、サイズ、日持ち、耐病性、収量なども重要な要素であるが、消費者に価値を認めてもらうには、(糖度+酸度+食味)=美味しい事が最優先である。
高糖度、良食味、収量性を同時実現するために試みられているのが、大玉系と中玉系の交配であるが、地域ブランド産地は点在するが、今の所、決め手になる品種は見当たらない。
その中で、D社が家庭菜園用として苗販売している「ぜいたくトマト」(画像)は、作り慣れれば将来性がある。出荷用としてはまだ僅かの実績しかない様だが、黄化葉巻病感染リスクの低い地域では普及の可能性がある。北海道では直売場を中心に徐々に増えている。青果販売用として大規模に取り組んでいるのは後志のF社(1㌶超)だけだ。同社は数年前から試作を始めたが、今年は引き合いが急増し、数量対応ができていない。管理の経験不足で、まだ収量=採算性に課題が多い。通常の品種と比較して、耐病性などは特別問題は無い。水分が不足すると尻腐れがでる点は従来品種と同様であるから、水は余り絞れない。苗代が高価なので、黄化葉巻病(シルバーリーフ)多発地帯は経営リスクが高い。育苗時から徹底防除が必須である(後述)
関東以西では抵抗性品種への切り替えが進んでおり、従来の良食味品種は減少傾向にあり、防除をクリアー出来れば大きなチャンスがある。
(栽培環境)
定石通り、日当たり、風通し、水捌けの良い、雨水等が染み込まないハウスに限定する。泥炭地や肥沃な土壌は避け、堆厩肥、植物系資材も避ける。C/N比を整えるには、米糠(反当2000kg)を収穫後に入れる。
シルバーリーフ多発地帯は、夏期にハウスを密閉して、徹底防除する。
ハウス天井部分に循環ファンを設置して上部空気を循環し、冬期は省エネルギー、夏期は異常高温を抑制する。着果や糖度安定上昇、病気の抑制などの対策として是非お奨め。
高糖度栽培は植物体の生育限界近くで栽培することになるから、事前に栽培中のトラブルをチェックして抜かりなく対策を打っておくことが必須。通常の栽培と異なり、一旦トラブルと立て直しが難しい
(土作り)
(管理)
■育苗
ミネラルバランスなどを潅水して、軸太、発根に徹する。育苗初期には十分水を与え、中盤以降徐々に控えて行く。スタートの育苗で失敗すると、後に響くから手を抜かない様に管理する。
■定植
土地条件にもよるが、一般的には平畝にマルチして定植する。点滴潅水は生育ムラが起きやすいので不可。
■草勢管理
長段取りは品種や栽培環境にもよるが、定植後から潅水を控えて草勢を抑え気味にし、根張りを良くすると言うのが一般的な考え方である。しかし、この方法では高糖度、高収量の両立が難しいと指摘するベテラン指導者(肥料販売店)Tさんがいる。
「まさか・・・」と思いつつ、彼の経験と持論を聞いてみた。理に適っている面もあるので記しておく。要約すれば、植物生理から考えると草勢を作る栄養成長期に養分や水分を制限すると、根と葉がバランス良く発達しないため、収穫期に入るとスタミナ切れになる。この状態では本来持っている種の能力が十分発揮出来ず、糖度も収量も限定的となるという。草勢=根張りが最高になる2~3段目収穫までは十分に潅水して草勢を作り、糖度上昇期の水切りストレスに備えるべきと主張する。
もっとも、最近の高糖度品種の中には、水分の絞りに耐える様に初期から根張り、草勢を強くした品種が出ている。いずれにしても成長最盛期の2段目収穫までは高糖度を狙わず、栄養成長が一段落する3段目頃から水を絞って生殖成長に傾けて行く。この時期になると、水を絞ってもガッチリ根が張っているから肥効は落ちない。肥大急減速は勿論、着果不良や尻腐れの発生リスクも抑えられる。
但し、初期から水管理=草勢管理を失敗しないためには、土作りの項で書いた緩効性動物性有機肥料を施用し、堆厩肥、植物由来有機の使用は控える事がポイントと指摘している。
追肥は元肥と同じ(バランス684かエキスパート684の穴肥または潅水近くのマルチ下バラ撒きで良い。
草勢管理は品種や栽培環境により大きく異なるため、3年間位観察して自分なりの流儀を確立することが大切である。最初から草勢を抑えて作り、小玉、芯止まり、生理障害の発生などで収量がイマイチの生産者は、Tさんの考え方は参考になるかも知れない。
■防除
最も頭を悩ますのは、シルバーリーフ、オンシツコナジラミ対策である。防虫ネットが一般的であるが、防除の仕方にもポイントがある。愛媛県のあるグループは、農薬の耐性回避のためA.B2種類の農薬を用意し、A剤→B剤→植物エキス(ソフトパオ1500倍)のローテーションを組んで成功している。重要なのは展着剤で、マクピカを混用すると効き目が高いという。地域により、それずれの防除基準があるから参考にされたい。
通常栽培と同じ収量を確保して、高糖度良食味トマトを作るにはどの品種を使っても現状では難しい。収量減をなるべく少なくして高糖度を実現する方法があれば消費拡大につながる可能性がある。
作型にもよるが糖度8度以上を目指すフルーツトマトの総収量は通常栽培の50%程度(夏秋で5~6㌧/反)が目処となる。単純計算すれば、通常栽培の生産者手取り平均単価が250円/kg(4kg箱1.000円)とすれば500円/kg(同2.000円)となる。しかし、この金額で採算の採れる生産者は、直売を除けば少ない。
糖度や外観検査をすると、フルーツトマトとして秀品販売できるモノは、地域、時期、気候、管理技術により異なるが通期30~40%位と推定される。光糖度センサーで8度を割り7度台に落ちると0.7掛け、6度台では0.35掛け程度の価値になる。仮に8度UPが1.000円/kgとすれば7度台が700円、6度台が350円程度となる。6度台は通常のトマトに近いから相場により掛け率が大きく落ちる場合もある。これに物流経費が加わるから店頭価格は、かなり高価になる。従って消費量も限られる。
生産者側からみれば管理に手間がかかり、リスクが大きい割に、秀品歩留まりが良くないから思った程、収益が上がらない。秀品歩留まりが高い生産者は魅力的な作物だが、毎年安定して収益を上げるにはかなりの技術蓄積が必要となる。
フルーツトマトの道に嵌ると、上手に出来た時の満足感と秀品の高単価が頭にこびり付き、チャレンジ意欲が湧く。継続的に失敗しない限り普通のトマトに戻れなくなる。気候、圃場条件の良い土地で技術を磨いた生産者は残れるが、一般人にはリスクの高い世界である。大規模養液栽培でチャレンジしている生産者もいるが、日本の消費者の様に糖度、酸度、食味、外観、サイズ、棚持ちなど・・・要求が厳しい国では品質競争力は限定的と思われる。
フルーツトマトは気温が低く晴天が続く冬期は比較的安定生産が可能である。埼玉、群馬、栃木など北関東、静岡、愛知、三重など東?、高知など南四国、塩害を利用した熊本などに産地がある。それぞれ糖度、食味を競い、価格は高い。しかし、品質と価格のバランスが良ければ「買う」消費者が増えており、機能性食品としての追い風もあり、消費拡大が期待できる。
フルーツトマトと普通のトマトの中間、即ち、糖度7度台で収量をある程度確保して再生産価格を下げ、固定客を掴めないか・・・5年前から取り組んでいる。
【北海道後志の事例】
画像はベテラントマト生産者Aさんが取り組んでいる圃場である。(7月14日撮影)
品種は「麗夏」、4段採り2期作。単条植え、畝間は広く取っているので栽植本数は通常より20%位少ない。ご覧の様に葉は少なく、小葉、果実がビッシリ付いている。「こんな少ない葉で収量が上がるの?」と疑問を持つ生産者がいると思うが、これが理想に近い草勢である。つまり、果実に養分が転流し、葉が大きくならないから、受光効率がよい。以前訪ねた、高糖度、反収20㌧採りを実現した埼玉のSさん(冬トマト)の草勢は更にコンパクトで、大袈裟な言い方だが果実ばかりで葉は驚くほど少なかった。見学に来た人が一様に首をかしげて帰ると言っていた。
Aさんはこのハウスは大作りの農家には見せないと笑いながら、下記の話しをしてくれた。
「糖度と収量の両立を目指した結果、この草勢になった。特に夏は葉を大きくすると、水分蒸散量が多くなり、潅水しないと萎れやすい。コンパクトな葉で必要最小限度の水分を与えて正常に光合成を行わせるのがポイント。通常葉サイズで水を絞るとコントロールが難しい。初期生育の根張りを重視し、草勢も途中までは強めに作る。土台がしっかり出来たら、摘葉しながらコンパクトな草勢に仕上げて行く。定植時期のずれやその後の天候も草勢に大きく影響するので、経験を積まないと難しい。なるべく草勢が変動しない様に、土作りは「スーパーランド673」反当9袋と微生物堆肥少々だけ。たまにミネラルPKを少量入れる程度。気温が高くなると蒸散量が増すから、天井にストレートファンをハウス1棟(100坪)当たり2基取り付け昼夜、回している。室温は4~5℃下がる。特に昼間、土に蓄熱された熱の輻射熱の影響を少なくして夜温を下げる効果が大きい。風を送っていると昼間は、光合成が活発になり、夜は湿度による病気の発生が防げる。根が深く張っているので、前作は殆ど潅水いない」
この5年間の経過を書くと、当初は6月10日頃~7月上旬まで収穫の一回戦(促成)で糖度7~8度台、(9月上旬~10月上旬迄の二回戦(抑制)で1・2段目6度台、3・4段目で7度台であった。しかし、一昨年辺りから天候が狂い、昨年も今年も糖度は0.5~1度程度下回り、7度は微妙なラインになった。「通常のトマトより糖度が高いから」と買ってくれた量販店に申し訳ないので出荷を見合わせている。Aさんは「これまでは9月の暑い時期は別にして、7度台は自信があったが・・・」と首をひねる。近くの漁港に揚がる魚の時期や種類も微妙に変化してきていると言うから、温暖化の影響が忍び寄っているのだろう。
【北海道空知の事例】
Tさんは5年前からフルーツトマトを目指していたが、フルーツの収量が時期により大きくブレ、販売先にも迷惑をかけ、経営が安定しないので3年前から売り方を含めて7度台トマトに転向した。糖度がぶれる原因はハウスの土層にバラツキが有り水分管理が一様に行えない事にあっが、土木工事をしてまでフルーツに拘るメリットは無いと判断した。
品種は当初から良食味品種「T-93」、施肥は「バランス684」反当10袋、ミネラルPK3袋を継続している。場所による土壌水分のバラツキは対策が難しいので、なるべくバラツキの少ないハウスに移した。3年目の今年は、こつこつ売ってきた顧客から食味と価格のバランスが評価されて、想定価格でキチンと売れる様になってきた。真夏は6度台も出るが、8度台はフルーツトマト価格で売れるので平均単価は通期では影響を受けない。収穫終了後、収益性を検証するが、固定客(量販店)が付いてきた様で、将来に希望が持てる。
【冬トマト】
冬トマト(高糖度大玉)の取り組みは4~5年前から始めているが、現状では難しい。大産地は熊本県八代海沿岸だが、7度以上のトマトが出来るのは2月からの塩トマトで、通期では厳しい。地元に密着している業者が、大潮の塩害で糖度が上がるハウスを事前に探し、契約している以外、大量には出てこない。通常のハウスで高糖度を作ることは採算的に非常に厳しい。原因は、冬期で日照量が限られるため、根本的に難しい。高糖度を求める生産者は、中玉系品種を作っているが、収量は限定的で高単価になる。
(コメント)
販売ルートもいろいろチャレンジしているが、今の所、7度台トマトは中途半端な位置付けで、販売側はフルーツトマトか一般トマトか二者択一の感がある。消費者層が、はっきり別れている様だ。昨年、今年とトマトの相場は堅調で、味はあまり問われず、売れている。しかし、このデフレ時代にはしっかりした品質の商品を消費者が買える価格、しかも再生産価格で作らねばならない。需給関係で右往左往している関係者の体質は変わらないだろうが、全く白紙から組み立て直せば、次世代の答は見えてくる筈だ。
トマトの記事ばかり書いて恐縮だが、量販店バイヤーが最も関心を示すのは「美味しリーズナブル価格のトマトである。消費者の舌が肥えて、次第にハードルが切り上がっている。一方、価格に見合う価値があれば売れるという時代背景もある。今夏の様に品薄の年は糖度が低くても売るのには苦労しない。しかし、平年作であれば需給関係が狂うと買い叩かれる。特に最近出た黄化葉巻病抵抗性品種は食味が落ちるモノが多いと言われている。
おいしい大玉トマトの目安とされる糖度は、従来、6.5度位だったが、近頃は7度台にハードルが上がりつつある。このレベルを安定して保つには、品種選択、栽培環境、土作り、管理技術が伴わないと難しい。温暖化傾向が定着し、ゲリラ豪雨などが多発する環境では、栽培地はかなり限定される。日照があり、水捌けが良く、昼夜の寒暖差の大きい産地となれば、冬春はともかく、夏秋では冷涼な海風の吹く日本海、太平洋沿岸(北海道)か内陸の高冷地になる。水切りや塩分ストレスを与えて糖度を上げる方法もあるが、既に一般的に行われており、収量などを加味するとそれ程大きなメリットは期待できない。異常気象で天候の振れが大きい近頃は、水切りなどによる尻腐れの多発など減収リスクが高い。
糖度8度以上のフルーツトマトは、確かに1000円/kg以上の単価になり魅力的だが、管理に手間が掛かり、収量が限定的となる。土耕は当然として、遮根、養液土耕、樽、バック、塩水など色々試されているが、面積拡大には採算性などハードルが高い。
北海道西部にある農業会社F社は、昨年までフルーツトマトの大規模生産を目指し、試行錯誤してきた。いろいろ試してきたが尻腐れとの戦いに決着が付かず、「7度台良食味トマトの量産」に方針を切り替えた。美味しさは糖度だけでは決まらないが、最低7度台無いと競争力は劣る。味にコクを出すため酸味の強い品種を採用し、肥料は菌体入り100%動物有機「バランス684」を反当200kg施用している。昨年の試験結果から、従来の「麗夏」「りんか」を縮小し、一気に勝負に出た。苗代(接ぎ木)だけで反当50万円近くかかるが、7人でリスク分散して1.4㌶超植え付けた。A社長は、「普通の農家はこんな高い苗代かけて冒険しない。チョコチョコ作って様子を見ながら増やすと思う・・・。そこが狙い目!誰も怖くて出来ないから、チャンスがある。今の販売はある程度の数量を持っていないと認知インパクトに欠ける。欲しい時に出荷してあげないと、いつの間にか注文が消える。農家が「良さそうだな・・・」と気が付いて出荷量が多くなれば価格が下がり、先駆者の魅力が無くなる。ある年数がきたらそれより進歩した商品を出さないと収益は向上しない・・・」と話している。彼は新品種や新方式に飛び付き、リスクを取っても自分で試し、常に上昇指向だ!
このトマトの栽培指針はは「潅水は通常通りで糖度7度以上」。尻腐れを出したら負け」・・・従来の常識では無理である。収穫始め6月下旬に試食品を送ってもらったが平均糖度8.7度、最低8度、最高10.2度。7月中旬に訪ねて検査、平均7.5度、最低7.2度。8月に入っても最低7度は切っていないという。涼しくなる8月下旬から再び糖度は8度台上がる。
着果数は房あたり5果程度、果重は100~120㌘程度で1パック当たりの売れ筋価格が組みやすい。最も引き合いが強い玉サイズは32玉以下で、一般品の約2倍、1000円/kgの高値で取引されている。今年はおいしいトマトが少ないので想定以上の高単価で売れているが、育種元の話しでは収量は従来品種と比べて20~30%少ないが、市場価値は50%高を想定していると言う。収穫が終了しないと収益性は解らないが、品質が高く評価され、売りやすいサイズも将来に期待が持てる。西南暖地とのリレーで年間供給への検討も始めている。
今年も夏秋トマト相場が高値で始まり、北海道や岐阜高冷地など主要産地は元気が良い。特に促成で初期に加温した生産者は日照不足でも、そこそこの収量を上げており顔は明るい。スタートが遅れた生産者は着色が進まず、高値を横目に困惑している。
ミニトマトは例年なら、夏休みに入ると給食需要が落ち込み、7月下旬からお盆にかけて暴落する。今年は1箱(3kg)東京で3.000円近くの高値に張り付いており、お盆を控えていても暴落の気配は今の所無い。原因はいろいろ言われているが、需要が特段拡大している様子もないから、単なる供給減だろう。
九州(熊本、宮崎)が台風や大雨の被害で早めに切り上がり、日照不足で夏秋産地北海道の立ち上がりが大幅に遅れたことが主因と思われる。震災を受けた南東北の出荷減も考えられるが、全国的に果菜類の結果は良くない。
7月末、浜松市内の集まりで、直売場売りや家庭菜園のトマト、茄子が全く成らないと話題になった。露地栽培や家庭菜園は、7月中旬~8月中旬頃まで収穫最盛期。供給過剰で相場の下押し要因となる。今年はこれらの兼業やアマチュア的生産者の収量が減った事も供給減の一つとして考えられる。集まりの中に唯一の専業農家Tさんがやお立ち上がり「こういう年でも、収量を上げるのがプロの腕さ!」と胸を張っていた。
収穫が遅れていた分がこれから一気に出荷され、盆を挟んで市場に集中、その後は成り疲れで急減、急騰という昨年同様のパターンが予想される。
先日、飛騨に行ってきたが、JAでは出荷量の半分を再生産価格と思われる4kg箱1.250円(売り立)で先物契約し、生産者の安定経営を目指している様だ。品種は従来のエイトから堅玉で収量の上がる409等が徐々に増えている(地元生産者の話)
8画像)北海道ニセコ町リンカトマトの選果
フランスの農業を語るにはやはりワインについて書かねばならない。
フランスワイン生産量はイタリアに次いで世界第2位で重要な輸出産業である。しかし、葡萄の栽培や販売面で大きな変化が起きている。主要産地として西北部のボルドー、東部のブルゴーニュなどが知られているが、葡萄は水捌けと日当たりの良い南段斜面で昼夜の寒暖差が大きい場所が適地とされる。ところが、地球の温暖化で南部の地中海方面は高温障害リスクが高まり、適地では無くなってきたとの指摘がある。気象学者の予測では、2050年頃には平均気温が2℃以上上昇するというから、高品質ワインを標榜するフランスにとっては大問題である。一方、販売面では新大陸(オーストラリア、ニュージーランド、南米、北米)で安価で美味しいワインが台頭し、中ランク以下の産地は競合し、厳しい。若者のビール指向でワイン離れが進み、一人当たりの消費量は右肩下がり、この50年で半減している。ダブルパンチを受けて競争力の弱い低品質産地は高品質品種への改稙や減反が進められている。
しかし、フランスはワイン王国!高級品は健在である。中でも「シャンパン」(発泡ワイン)は、フランス独自のブランド(AOC:原産地呼称統制法)で保護されている。イタリアの「スプマンテ」、ドイツの「ゼクト」、スペインの「カヴァ」なども発泡ワインであるが、知名度、ブランド力において到底、世界に及ばない。
最近、日本でも美味しいシャンパンが店頭に並ぶようになったがワインと比べれば相当高価である。以前は高嶺の花。庶民の結婚式などで乾杯に使われたシャンパンはお世辞にも美味しいとは言えず・・・今、思えば全く別物、「シャンパンもどき」だった可能性が高い。本物のシャンパンは確かに美味しい。
高級シャンパンが注目され始めたのはバブル絶頂期。銀座のクラブや高級レストランで成金紳士や芸能人が1本20万、30万、いや尾ひれが付いて50万とかいう「ドンペリ」(ドン・ペリーニヨン)が登場してからだ。殆どの日本人は「ドンペリ」???であった。今でこそテレビなどマスコミに登場する機会が多いから庶民にも知られるようになった。しかし、実際に口にした人は極少数だろう。特別なプレミアムが付は別にして、赤ワインは「ロマネコンティー」、シャンパンは「ドンペリ」が最高級品と称されている。
価格はピンキリだが地元ランスで€126、ミュンヘンで€138、パリで€170の値札が付いていた。
「ドンペリ」の里はフランス北東部シャンパーニュの中心地、ランスにある。話しのタネに世界的な銘酒を育んでいる現場を訪ねなければなるまい。
ランスは歴史的にも重要な街で、有名な「ランス・ノートルダム大聖堂」や、フランスで活躍した著名な日本人画家、藤田嗣治画伯の眠る協会(礼拝堂)がある。パリからシャンパン街道と呼ばれている高速道路で2時間弱、鉄道で45分程度で行ける。シャンパン富豪達の邸宅や三つ星レストラン、五つ星ホテルなどもあり、如何にもリッチな雰囲気が漂う。
大聖堂広場前にはシャンパン専門店があり、ビンテージ2002年の銘柄が並んでいた。蘊蓄を語られたら、好き者は財布が空になる。
1743年に創業したモエ・エ・シャンドン社が経営するシャンパン博物館。ここでシャンパンの由来や製造、発酵、熟成などの講釈が聞ける。1500エーカー(600㌶)もの葡萄畑を所有し、毎年200万ケース以上のシャンパンを出荷している。
玄関を入ると巨大な発酵タンク(展示用)が目に飛び込む。
収穫された葡萄は搾られてタンクで一次発酵させ、シロップ(砂糖)、炭酸ガスなどと共に瓶に詰められ二次発酵させる。
普通のシャンパンは色々な年の原料が混ぜられるが「ドンペリ」はビンテージ年ワインに限定して作られる。
エレベーターで40~50m降りると、連結型電気自動車が待っていて、貯蔵庫を案内してくれた。ここは石灰岩の岩盤を格子状に洞窟が掘られ、年間を通じて室温と湿度が一定に保たれている。ここで7~8年間じっくり眠りにつく。
シャンパンは白葡萄シャルドネ種、黒葡萄ピノ・ノワール種など8品種をブレンドして作る。
この会社では1500エーカー(600㌶)の葡萄畑を持つ。
ワイン用葡萄は樹が若くては良い味や香りが出ないとされる。一般的に石灰岩土壌、ミネラル分が豊富で肥沃でない土壌が適する。品種にもよるが本来の特徴は数十年生にならないと出ないと言われている。
この株は何十年生か解らないが世界最高級品を作る樹にふさわしい。貫禄がある。
シャンパンは「ドンペリ」が一番美味しいかどうかは、色々飲んでいる訳ではないから解らない。左の画像は1811年に創立されたペリエルジェ社の2002年ヴィンテージである。アネモネをモチーフとしたデザインで中身もボトルも芸術的な逸品である。このヴィンテージ年の様子を同梱冊子から引用させて頂く。人間の技よりも、自然の技であることを記している
2002年、それはコントラストのある豊かな年
「シャンパーニュ造りにおいては、その気候条件が大いに影響しています。2002年もその例に漏れてはいません。温暖な春から割合に湿度の高かった8月にかけて、この年もブドウの生育に必要なものが自然環境から与えられます。さらに9月は乾燥し、日中は太陽が照り、また、夜温は冷え込みがありました。つまりこのコントラストが、素晴らしいブドウができるために理想的な方程式なのです」
ランスに行ったら立ち寄りたいのがレオナール・フジタの礼拝堂である。藤田嗣治は1886年生まれ、パリで活躍した著名な画家。フランスに帰化し、本人の遺志により、このランス礼拝堂に埋葬されている。
シャンパン富豪が沢山住むこの街は「ドンペリ」を飲むにふさわしい三つ星レストランや高級ホテルがある。
ここは五つ星を持つホテル。宿泊するだけで最低€800(ツイン1室)は覚悟しなくてはいけない。夕食、朝食を含めたら€1200以上(約15万円)は飛ぶ。
我々にはガーデンカフェで喉を潤すのが精一杯の贅沢だ。
友人の口利きで、特別にレストランやバー、ゲストルームを見せて頂いた。仮に宿泊するチャンスがあっても私には落ち着いて時を過ごせそうにない・・・
3月のブログで1月に訪ねたノルマンディーのオーガニック(BIO)「ハローウィン農場」について紹介した。訪ねた時期が冬で作物は無く、農場の概略を聞くにとどまった。やはり、作物の生育している時期に現場を見なくては理解出来ない。こんな思いで5月2日、再び農場を訪ねた。
新緑のノルマンディーは目を見張るほど美しい!白いマロニエ、紫色のリラの花・・・春を待ちわびていた生命が一斉に動き出した感がある。
今回は「ハローウィン農場」のマダムに案内して頂いた。
マダムは弁護士、地方議会議員の肩書きを持つインテリ女性。日本に3年近く滞在された経験があり、日本語も少し話す。自然界の営みについて大変勉強されており、この分野にも詳しい。理論的でチャレンジ精神旺盛だ。
「この仕事は奥が深く、知れば知るほど興味が湧く」と、案内に熱がこもる。
農場は有機農業と言うより、自然農業に近いが、放任栽培ではない。観察や科学的根拠に基づいて人工的に多様な環境を作り、自然界の営みを創る。それぞれの環境に対応して生物の多様化が進み、全体の共存関係が築かれている。
農園の周辺には推定500種類以上の植物が共存しているが、食用は50種類位。作物を大面積植えると生物バランスが崩れて病害虫が増える。これを農薬ではなく、自然界のバランスの中でコントロールしている。
マダムに農場が目指している未来像について聞いてみた。
通常、食の安全や環境問題の観点からオーガニックを目指す人が多いです。私は将来、予測される人類の食糧危機に対応できる「最も効率的な農業」がオーガニックだと思います。オーガニックは単位面積当たりの収量が少ないと言うのが従来の共通認識ですが、私はその考えは間違いだと思っています。オーガニック農家をもっと増やすには、政策的な食の安全や環境保全だけでは限界があります。現在の化学農業より省資材型(低コスト)で、しかも品質や収量が上がり、農家の収益向上に結びつかなければなりません。
最大のポイントは化学資材を使わないで、自然界のあらゆる要素、土、太陽、雨、風、微生物、植物、昆虫、動物などを総合的に利用して作物の能力を最大限に引き出せば、高収量を実現できると考えています。従来の化学肥料、農薬、遺伝子組み換え種子等を使った農業は環境破壊が進んで、ボツボツ限界でしょう。循環可能な自然力を総動員して単位面積当たりの収量を現状より増やすことが私の目標です。まだスタートして5年目、試行錯誤中ですがご案内しましょう。
ここは元々、乾燥しやすい場所で、雨が少ないと作物が良く育ちません。乾燥地は生息できる植物や昆虫の種類や数が限られます。作物を植えると生態系が狂い思わぬ虫害に見舞われます。作物を作っても効率が良くないので、池を掘って環境改善を図りました。園内には山から注ぐ小川も流れていますが、予想通り全く異なった生物が住み始めました。水が流れている川と静止している池では微妙に異なります。ここでは藻(アオコ)が大量発生し、定期的に取り除いて乾燥させると大変いい肥料になります。また、葦類は他のハーブ類と発酵させると虫や病気除けになります。蛙やトンボも育ち、虫を食べてくれます。乾燥地に水を用意してあげただけで多様な生命が育つことを実感しました。
果樹園の傾斜地にも雨水の水道を調べて、溜池を掘りました。しかし、水が直ぐに無くなってしまい、ここはまだ成功したとは言えません。もう少し考えないと・・・(笑い)
単位面積当たりの収量を上げるため、生育の早いモノとゆっくり生育する作物を混植しています。これは生育の早い葉菜と生育の遅いエシャロットの組み合わせです。混植のもう一つの目的は害虫対策です。
果樹園は100種類近く植えていますが、成育中の樹木の高さを考えてバラバラに植えています。この方が単位面積当たりの収穫量が多くなり、虫も付きにくくなります。
どの圃場も、畝毎に作物が異なります
両側は背丈のあるグリーンピース、中央部は大根、人参の混植です。
この植物はアブラムシが好んで集まり、ビッシリ付きます。アブラムシが増えるとそれを食べる天敵のテントウムシが増えます。頃合いを見てテントウムシを捕って他の作物に移します。移転作業が終わったらこの株は焼却します。あちこちに植えておけばアブラムシの被害は殆どありません。
害虫対策植物はカモミールやミントなどの混植も効果があります。葦などの発酵液も良いです。
畝間には亜麻の滓や落葉樹のチップを敷き詰めて、草の生育を抑えています。根の保護や乾燥防止にも効果があります。プラスチックフィルムは使いません。
どうしたら単位面積当たりの収量を最大に出来るか試行錯誤した結果、この円形、盛り土に行き着きました。この形は平面より植え付け面積が増え、栽植本数が増やせます。緯度が高いので夏の日照時間が長く、太陽の位置も高いので日照が十分確保できます。作業もしやすいです。
当然、植える作物は諸条件を考えて植えますから、まだら模様になります。
マダムの意気込みは凄い!
実施している事は日本でも昔から行われていた事が多く、特段、珍しいことではない。効率、コスト優先の日本の農家から見れば「?」が付く。しかしハローウィン農場が目指している「単位面積当たりの収量増」への努力は評価に値する。実現できるかどうかは別にして、国の支援から「自立」への道を探る姿勢が素晴らしい。
円形土盛り方式には新鮮みを感じた。効率追究の日本人には考え付かない。マダムに「この形はパリの街(広場を中心とした円形放射状、渦巻き型)の様に美的感覚で作ったのですか」と聞いたら、「いや、理論的に考えたらこの形しかありません!」と自信満々に語っていた。
しかし、我々にはどう考えても手作業ばかりで効率を無視した農業に見える。これで飯(パン)が食えるのだろうか・・・マダムは、固定客が増えて、週で約100個の宅配を確保しているというから、一応の目処は付いている感じだ。売店の販売も順調な様だ。1月には貯蔵野菜や加工瓶詰め品の在庫がギッシリ並んでいたが殆ど売り切れていた。ご主人は前回、「現状は厳しいです」と話していた。10年単位の仕事として捉え、今後、新植した果樹類が収入に加わってくるから経営は安定するとも語っていた。
数キロ先の山の向こうは効率を追求している大規模農業地帯。こちらは人間、環境重視のオーガニック農業・・・豊かな緑と修道院のある良好な環境に恵まれた「ハローウィン農場」は、訪れる人々の心を癒し、ここで採れた野菜や果物は明日への鋭気を養うことだろう。。
フランス人は「食」と「バカンス」にお金を使う。残念ながら日本人は「食」も「バカンス」も使わなくなってきた。いや、使えなくなってきたのかも知れない。