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ブログ: 2012年10月

再び有機農業を考える(8)経営改善へ道

 

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なるべく有機主体の農業に切り替えたいと考えている農家は少なくない。しかし何とか取れている間は腰が重たい。「コストがかかる・・・」「収量が心配・・・」「供選、市場出荷ではメリットが無い・・・」いろいろな指摘がある。化学合成資材中心では何処かでツケが回ってくるが、中途半端に有機を使ってもコスト対効果が見えてこない。しかし、気が付かない間に地力を失い、収量、品質低下が進み、連作障害が顕在化する例は多い。異常気象や価格低迷を受け、経営が厳しくなると消極的になり悪循環にりやすい。度々書いているが、生産者は農産物メーカーであり、なにはともあれ売れる品質、売れる価格(再生産価格)で確実に収穫することが前提になる。これを継続的に実現するために、有機主体農業の活用がある。

 

 

(改善例)

今春、北海道南部で経営改革に取り組むFさんから、「知り合いGさんがハウスホウレン草の連作障害で困っている・・・」との電話を受け、早速、現地を訪ねた。

(1)        栽培経過

Gさんはホウレン草を始めてから今年で25年、45㌃のハウスで年間44.5回転で連作を続けている。既に通算100連作を越えるハウスもある。10年数前に訪ねたことがあるが、当時はまだ順風満帆の時期で順調に取れていた。各地から視察者が相次ぎ、品質、収量共に自信満々であった。今考えればその頃がピークに近く、その後次第に生育のバラツキや土壌病(立ち枯れ、イチョウ病)がポツリ、ポツリと出始めたらしい。土作りは町営堆肥場から出る堆肥と、化成肥料を使ってきた。十数年、ずっと順調に取れてきたため、多少病気発生やや収量減があっても「天気の関係かな・・・」と余り深刻には考えなかった。たまたま農業新聞で土壌消毒で土壌病に成果を上げている産地の記事を読んみ、早速、岩手県と岐阜県の夏秋作先進産地を視察してきた。現地で素晴らしいホウレン草を見せられ、自分達も早速、土壌消毒を取り入れた。期待した通り、気になっていた立ち枯れは止まった。雑草も生えず、草取りは殆ど不要となった。しかし、毎年土壌消毒を続けて行くうちに、土と作物に異変を感じ始めた。土に弾力が無くなりサラサラ状態になり、潅水すると以前のようにスッと浸み込まず、水道が出来てしまう。乾燥しやすく、成長力が弱く、葉肉が薄く、株張りが良くない。当然、収量は落ちてきた・・・表土30cm下は耕盤層が形成され、カチカチになっている。ホウレン草を抜いてみると本来は直根がスッと長く伸びるが、耕盤層で生育が止まり、肥料濃度障害で根が褐変している。土の老化現象の始まりであり、根本的な再生策を実施しないと解決しない状況だ。しかし、気になるのはコスト対効果。しかもGさんは70歳を越えており、今後、どの位農業を続けられるか解らない・・・・

彼は「ハウスは25年間も化学肥料主体で使い続けてきたから、土にはもう栄養分が残っていない。一応、堆肥や土改材は入れていから何とかなると思いながら毎年同じパターンでタネを蒔いてきた。しかし、土壌消毒を始めて無菌化し、全く土壌の税体系が変わってしまった。

「百姓はモノが取れなくなると終わりだね・・・やり甲斐、生き甲斐も薄れてきた」と言う。

しかしこのまま終わるのは悔いが残る。自分のプライドを賭けて、以前の葉に生き生きした元気なホウレン草を作って、スッキリして幕を下ろしたい。必要なお金は用意した。簡単ではないことは承知しているが出来る限り短期間に元の土に戻してもらいたい・・・出来ますか?

 

消極的な農家が増える中でGさんの「夢よもう一度」の決断に動かされ、問診と土の状態を調査しながら対応策を考えた。投入資金、コスト対効果は問題無いが、労力、設備(農機具)などで出来る事、出来ないことがあるから近所仲間と一緒に考えることにした。

 

【結論】 短期間に成果を出すため、多種多様な養分と菌体を含む肥料を使って栽培しながら土を発酵させるため、下記の方法を実行する。

(ハウス1棟80坪当たり)

   耕盤層を部分的でも良いから破る(但し、地層による)

   土作りは省力化のため堆肥散布は入れない。

   1作目は下記資材を全面散布し土と混和し、潅水して発酵させる。

■根づくり名人・・・3袋(60kg)、

■スーパーランド(743)・・・3袋(60kg

■ミネラルPK・・・1袋(20kg) 燐酸、加里過剰圃場は不要)

(低温期にスタートする場合は、化学肥料を20kg程度併用する)

 

   1週間寝かせて播種する。

   潅水時にハイパー酵素1㍑を混合して散布し、初期生育期から発根を促す(通期3回程度)

   病害虫忌避と葉肉を厚くするため、ネマコートS1000倍液を1週間間隔で葉面散布する。

 

上記の栽培基準で4月からスタートした。

5月に入りFさんから「今までとは全く異なる草姿だが大丈夫ですかと電話してきた。葉が広がらず天を向いて生育しているという。品種にもよるが一般的に健康な個体は天を目指して生育する。日照不足、水分や養分バランスが狂うと葉が広がり垂れてくる。力強く生育している作物は更に沢山の日照を得ようと立葉となる(画像参照)

 

気候の関係で収穫が少しずれたが、1作目から従来とは見違える程の株張り、葉肉となり、収量は20%以上増えた。ただ、未だ土が完全に回復していないため、部分的に生育のバラツキが出たが、期待していた以上の品質と収量に仕上がったので初回作で資材代が出たと喜んでいた。

2作目以降はスーパーランド(743)を2袋(40kg)だけ撒き、同様に栽培した。

毎年出るダニも見当たらず、病気も気にならなくなった。ダニは根が弱いと土壌からの水分吸収力が落ち、、樹液濃度が上昇し、ダニが付きやすくなる。根張りが良くなると充分吸水出来るので付きにくくなる。土壌病も根が活性化して根酸を充分分泌していれば感染しにくいが、化学肥料主体では菌相が貧しくなり防御力が低下して感染しやすくなる。

 

結果としてGさんは1年で好循環パターンに入り、品質、収量共に回復軌道に乗った。成功の秘訣は総合的な対策を立て、手を抜かず、確実に実行した点にある。本人の希望で具体的な数字は書かないが販売金額が急上昇し、コスト対効果が大幅に改善した事は言うまでもない。

 

 

再び有機農業を考える(7)これからの方向

 (画像)有機トマト・茨城県水戸市

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 一般的に有機農業と言われている栽培は幅が広い。自然農法、オーガニック、JAS有機、特別栽培、果ては身近にある厩肥を堆肥化し、ふんだんに使って有機と名乗る生産者もいる。JAS有機が無農薬で安全性が担保されていると思う消費者は多い。しかし先に書いたように実は状況により農薬の使用が認められており、無農薬を期待していた消費者は釈然としないだろう。一方、自然農法は近隣にある稻藁など作物残渣、枯れ草、落ち葉など、植物由来有機物を循環利用する事が基本であり、域外から資材を持ち込まないのが前提である。勿論、化学農薬や肥料は使用しないから理解しやすい。日本でも以前から取り組んでいる農家もいるが、1月に訪ねたパリ郊外の葉菜類農家はこれに近い。

 

 http://www.e-yasai.com/blog/post-75.html

 自然農法は気候に恵まれ、近隣に化学農法の農地が無く、豊かな自然に囲まれていることが前提であり、日本での適地は限られる。しかし、中山間地の小規模農業には適している。表示は化学肥料、化学農薬不使用栽培で、事前に圃場の残留農薬検査をしておけば、JAS有機よりレベルは高いと言える。肥料養分は限られるから収量は余り期待できないが、抗酸化物質などの機能成分は高いと専門化は指摘している。

 

さて、各種有機(生態系循環)農業に携わっている生産者や流通関係者に現状と今後の展開を聞いて見た。JAS有機を取得した生産者は今更、錦の御旗は降ろせないから初志貫徹組が大勢だ。新規参入組も、より高い付加価値を求めるからJAS有機を目指す事に変化は無い。しかし、青果販売の全体を見渡せばJAS有機インパクトは以前より後退している。特に気候変動で安定生産がままならない生産者の経営が厳しくなっているためだ。作物によるが、人参や大根、牛蒡、馬鈴薯、里芋、サツマイモなどの根菜類は収量の変動はあるものの、地下部収穫のため病害虫痕が目立ちにくくJAS有機でも比較的作りやすく、貯蔵して安定供給がしやすいため、撤退する農家は少ない。防除が難しい葉菜や果菜類は中小規模農家が多く、減収リスクが高まっているため、多種化に動いており、面積は増える状況にはない。。

特に高温化で難敵病害虫が増えている西南暖地のJAS,、栽培は厳しくなっている。南九州で特裁パセリを周年栽培していたグループは病害(うどん粉病)が蔓延し、安定供給が困難になったため特裁に見切りをつけた。熊本ではトマトの難敵害虫シルバーリーフの防除回数が増え、特栽を諦めた生産者も出ている。通常は特栽基準で栽培し、多発の場合は特栽カウントをオーバーするが必要最小限の農薬散布で凌いで、無表示(慣行栽培)で出荷する生産者も増えている。これらの生産者の多くは「食味」を売りにしているため、売り場(消費者)の理解は得られている様だ。しかし、コストを下げるために包材を一括大量発注しストックしているため、両刀使いは在庫負担が大きく、悩みのタネという。

 

量販店などと値決め契約している生産者は、気候変動の減収リスクが高まる中で、数年来、市況が堅調なため、中小生産者を中心に契約栽培に迷いが生じている。パートなど人件費比率の高い大規模生産者は、一部は値決めをしておかないと価格低迷が長期化した場合、経営リスクが高いので安定価格の売り先確保は欠かせない。特に冬期の低温、日照不足で減収が続き、燃料代や資材費の高騰に苦しむ九州のハウス生産者の迷いが続いている。

 

特栽はいつでも慣行に戻れるがJAS有機は続けないと認証がリセットされてしまうので、転向には相当な決断がいる。しかし近頃JAS認証を諦めて特栽に切り替え、経営を立て直した生産者も出ている。多くは出荷先との話し合いで転換しており、軸足は化学肥料、農薬不使用栽培に置いているから実質的に品質、安全性レベルに大差は無い。一番大切な事は生産者と消費者の話し合い、相互理解である。複雑な流通経路では意思疎通が難しいから、なるべく必要最小限度、シンプルな流通体系を目指したい。

 

販売側の環境変化としてこの数年、農産物の表示に対する監督機関の監視が厳しくなり、店側がトラブルを恐れて「特栽」表示」に消極的になりつつある。また、認証機関の認証が無いと「特別栽培」として扱わない店が増えてきた。農薬散布回数(カウント)をラベルに明記した商品もあるが、農薬知識の乏しい一般消費者は、1回でも使用していると購入をためらう傾向が見られる。一層のこと、解りやすい「食味」で勝負するから無表示(慣行栽培)で十分と考える現場担当者も増えた。

 

有機への取り組みはJAS有機や特別栽培だけではなく、慣行栽培でも一般化している。有機(堆肥)を入れなければ安定した品質や収量が期待出来ないという認識が広まっている。必要なのは目先の計算ではなく、栽培に係わるすべての要素を含めて中期的な視点でコスト対効果の検証である。

足踏みしている既存生産者を尻目に、宅配、加工、外食など新規ルートを開拓して大規模有機農業を目指すチャレンジャーが台頭している。海外生産でJAS認証を取得する動きも活発化しそうだ。色々な意味で踊り場に来ているから、今後の動向に注目したい。

 

サイト管理者|日本マックランド株式会社
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