

大型連休に入ってやっと天候が回復してきた。長期間の日照不足で根が弱っているから生育は急速には回復出来ず、相場は高値が続いている。4月24日の日経新聞夕刊はトップで「野菜高騰 売れ筋変化」と報じた。生鮮野菜が高いため冷凍野菜や野菜ジュースが人気と書いている。一方で、大手量販店が一斉に特売に走り出したと書いている。数日前のラジオ番組でこの種のニュースが流され、早速ブログに書いてアップした。夕方のニュースで各局の内容が微妙に異なり事実確認のため一旦、削除したので書き直す。
さて、書きたかったことは、天候により収穫量が減少し、高値相場が続くと必ずこの手の「高騰下の特売商法」が登場する。私も消費者の一員、自由競争だから安売りは否定しない。しかし、生産者の心中は複雑である。
天候不順の年は、余分な手間や資材費をかけて一生懸命管理しても大幅減収は避けられない。当然、出荷量が減り相場(平均単価)は平年より44%も高いと報道されている。日照不足と気温が乱高下すると、生育遅れのみならず病気や生理障害が発生しやすくなる。一昔前ならば農薬をこまめに散布して被害を最小限に抑えることが出来た。しかし、今は安全性第一、農薬の種類、散布濃度、時期、カウント(回数)が厳格に決められ、栽培管理履歴をキチンと記入するよう義務付けられている。防除基準を守ると病気が発生して収穫減になる場合もあるから農薬にカウントされない葉面散布材(活力材)などで対応する。農薬散布回数が慣行比の半分以下に制限されている特別栽培は尚更、発病リスクが伴う。
熊本でミニトマトを特別栽培している生産者グループは、年明けからの天候不順を何とか凌いできたが、先々週から一部の生産者に葉カビ病が多発した。本来ならば6月中旬まで収穫する予定だったが見切りを付け、泣く泣く切り倒した。大幅な減収が続いていた上にこの事態で万事休すである。彼らは量販店や生協と値決め契約しているので、収量減は自分の責任、仕方ないと割り切れる。市場が暴落しても同じ単価で買ってもらえるからである。
相場次第の大多数市場出荷者は、収量減を価格上昇で補う。しかし今年の様な大減収でまともに出荷できる商品が激減した場合は高値でも全く追いつかない。長期で収穫する果菜類(トマト、胡瓜、ピーマンなど)は病気が出て暫く収穫出来ない事態となれば深刻である。
例え少量しか取れなくても今の様な高値があれば、生産者は本能的にやる気が起こり、頑張れる。だから農業を続けられる。
しかしである・・・
リスクにまみれて黙々と働いている農家の感情を逆撫でするのが、高騰時に登場する大手量販店の「特売」いや「安売り」である。サプライズは「生活者の味方」。実態は自ら傷つかない弱者(業者、生産者)押しつけにはなっていないだろうか。「高すぎて売れないから特売」と言うが、市場のメカニズムから言えば高いと感じ需要が減れば相場は自然と下がる。何もマーケットを支配している大手量販店が、品不足で騒いでいる時に、ここぞとばかりいい顔をして「安売り」するのは如何なものであろうか。安売りする方は例え野菜で利益が取れなくても客寄せすれば他の商品が売れるからダメージは少ない。問題が生じるのはそれしかない商売道具の数量不足で汲々としている業者、生産者である。
契約産地云々と言うが、どういうメカニズムで「不足時の安売り」が罷り通るのかの詳細は解らない。勿論、日本を代表する立派な企業であり、種々の事情を考慮してのイベントとは思いたいが、中小を含めて全体に与える影響は大きい。苦境に喘ぐ農家に希望を与え、育てようと努力している者として大きな違和感を感じる。
天候が回復して潤沢に出回る頃には、相場急落の恐怖が待っている。消費減時代に沢山取れたからと言って「安売り」かけても必要量以上は売れないことは証明済みだ。
自給率向上などと立派なお題目を唱えるよりも、農業人が納得して頑張れる心遣いの方が先である。
国産マンゴは沖縄県が先輩格だが、宮崎ブームに乗って「太陽のたまご」にお株を奪われた感がある。1玉5.000円超という高値で売られているケースもあり、関心を持たざるを得ない。「太陽のたまご」は何度か頂いたことがあり確かに美味しいが、気軽に口にできる代物ではない。
「太陽のたまご」以外は1玉1000~2.000円台で店頭に並ぶ。一昨年、リーズナブル価格という視点で宮崎産の後に出る熊本産を販売してみたが好評であった。先週、生産者を訪ねてみた。
訪ねたKさんは最盛期より減らしたとは言え8反歩のハウスでスイカを作り続けている。需要低迷が鮮明になった十数年前、知り合いの薦めでアップルマンゴの株を3反歩植えた。苗木代もかかるが収穫迄に4年くらいかる。しかし、当時はまだ経営に余裕があったから出来た。ハウスで冬期でも最低室温20℃以上保つ必要があり、寒い年は燃料代だけで反当100万円以上かかる。いつも原油相場には関心を持たざるを得ないという。
訪ねた日は4月24日。一枝に数十個着果した実が次第に落果し一円玉くらいの果実がパラパラと付いていた(画像参照)。最終的にこの中の1個を残し、保護ネットを被せ完熟し自然に落果するまで待つ。小玉、虫キズ、変形などを除くと規格品として出荷できるのは40~45%程度という。規格外品は道の駅で売るか、ケーキなど洋菓子の材料になる。
通常は反当100株くらい植えるが、Kさんは味にこだわって太陽光線が十分当たる様に70株しか植えていない。成木1株に50個くらい収穫できるから反当3.500個。規格品として売れるのは精々1.500個くらい。
売り値から栽培経費を引くと採算は厳しいが、お客さんから「美味しい!」と言われる言葉を励みに作り続けている。
周辺に7戸くらいの生産者がいるが、燃料費の高騰が売値に転嫁できず、仲間が増える状況にはない。
(3)でEU圏と日本で起こっていることを記し、今後の日本の進む道はグローバル化を前提として、アジア経済圏の中で何が出来るかを考えるべきだと書いた。何でも作るのではなく、互いに得意な分野の選択と集中であり、その資源は大規模化と効率化だけではなく、それに外れた所にもあると指摘した。
以下、もう少し具体的に書いてみよう。
ヨーロッパは色々な民族、文化、思想、宗教が混じり合い、時には戦争し、離合集散を繰り返し、今もなお互いに不信感と嫌悪感を抱いている面がないとは言えない。日本と中国、韓国の関係も好転してはいるが然りである。しかし、大都会では既に世界中の人々が集まり混じり合って、東京もパリも上海も何でもありであるが、やがて混合物ではなく、その国の本質、文化を知りたくなる。
食で言えば確かにパリには伝統的なフランス料理、東京には日本料理、上海には上海料理がある。パリのフランス料理店で出てくる料理が本当のフランス料理かというと「そうだ」とも「違う」とも言えない。フランス北部にあるパリと中央部にあるリヨン、南部地中海に面したニースでは食材も調理法も味付けも異なる。ニース周辺では「プロヴァンス料理」とも言い、イタリアンと言っていいかも知れない。そのイタリアの代表的食べ物「ピッツァ」は、北部のミラノはパリパリ食感、南部のナポリはモチモチ食感、円い形は同じでも厚みや焼き方は別物である。ヨーロッパの料理は○○風と土地の名前を冠して、似て非なるモノも多く、興味津々の世界である。
ワインに至っては葡萄の品種、赤、白、ロゼ、発泡、貴腐、国、地方、地区、村、果ては生産者の畑、生産年、熟成の仕方まで限りない講釈の世界である。
前置きが長くなったが、豊かな時代は「食」の提案が国境を越えて最大の武器、資源となる。「食」は文化、アナログであり、際限なく奥が深い。人間の本能的な部分であるから、これに嵌ると「金」を使う優先順位が上がり、糸目がつけられなくなる。日本は豊になって「グルメブーム」が起きた。
人間は飽きやすく、探求心が旺盛だから、豊になればいろいろな美味しいモノを食べてみたくなる。世界の三大美食は日本、中国、フランス料理と言われているから、グローバルな視点で見ても日本の「食」つまり、四季折々の「野菜や魚」には大きなチャンスがあると思わねばならない。
「大規模大量生産品」だけではなく、その枠から外れた「物語を語れる講釈の世界」にその資源がある。
外国人観光客は1回目はともかく、次第にその講釈の世界を求めて訪れる様になる。
アジア経済圏の主食は米。
「安全で美味しい米」は既に中国や台湾の富裕層に人気が出ている。「安全で美味しい米」の生産性向上に取り組み、徐々に供給量を増やし、アジアの成長に合わせてマーケットを開拓すれば展望が開けるだろう。数十年前の日本ではフランス産ワインやチーズなどは高嶺の花で高級店でしか置いていなかった。現在は量販店でも売られ、ワインは普通のレストランで気軽に飲まれている。高嶺の花「日本の米」がアジアの店頭に並ぶ日が来ないとは言えないのである。日本と中国双方の二大インターネット販売サイトが提携し、代金決済機能を含めて店舗網を構築する。「プライドを持って高品質なモノを作り、欲しい人に自分の価格で売る」時代が来ている。しかも、将来のアジアマーケットは20倍とも30倍とも言われ格段に大きい。
宮崎県内にある農業法人A社は、将来を見据えて自社生産した冷凍農産物を中国に輸出する検討を始めた。従来は安価な中国製品の攻勢で「安全」を旗印にして国内で守勢に立たされていた。しかし、構造的な需要減、デフレが続く日本ではなく、「安全食品」の需要拡大が期待できる中国に打って出る可能性を探っている。
A社は数年前、4億円を投資して冷凍工場を立ち上げ、ホウレン草を手始めに小松菜、大根菜、枝豆、インゲン豆、里芋など冷凍野菜の高品質、安定生産ノウハウを着々と蓄積してきた。冷凍野菜は、北海道十勝などでも作られているが、経済成長が続くアジア諸国と至近距離にある九州は有利な点が多い。
中国へは日本のコンビニエンスストアーや量販店が進出し好調、最近では外食チェーンの急拡大が話題となっている。日本企業の武器は色々あるが、食は「安全で美味しい」が一番解りやすい。
日本産農産物が将来的に日系ルートのみならず売れる可能性は十分にある。今は高嶺の花かも知れないが、アジア圏の経済成長が続けば、日本で世界中の食品が食べられているのと同様な現象が起こることは間違いない。
近頃、中国通の友人から耳にする冗談とも本音ともつかない話がある。
「中国の富裕層は、車も衣類も食品もすべて高品質な日本製で固める。それがステータス、金持ちの証」一方「自分の身の回りを見たらメイドイン・チャイナ・・・(笑い)」
「中国人に出産祝いを送るなら、日本製の粉ミルクが最高のお祝品」という話も聞いた。
宮崎県は冬~春にかけて野菜の供給基地として重要な役割を果たしている。中でも、胡瓜とピーマンのシェア、知名度は高く、地盤沈下しているとは言え、宮崎農業の基幹作物である。
2品とも価格変動が大きく、いろいろな安定化策の取り組みが行われてきたが、産地には以前の活気はない。経済連OB・M氏の話では胡瓜の中心的産地であるT町の生産者部会は130戸あったが、昨年は83戸、36%減になった。生産量は5.000トンから4.000トンに2割減少した。後継者のいる生産者は3割に満たず、農業法人への転換も積極的に行われているが、労働力の不足で減少トレンドは否めない。
数十年近くも連作している生産者も多く、土壌障害や天候不順もあって、近年、反収が低下している。一時的に沈静化したとは言え、再び燃料がじりじり上がる傾向にあり、収量減で市況が堅調とは言え採算は厳しくなっている。関係者は当面の打開策として、一段の収量向上に取り組み始めた。
2008年の化成肥料急騰を受けて、地元で豊富に産出される畜産加工残査の活用に着目し、有機肥料主体の土作りに動いている。従来、有機肥料は「高い」イメージがあり、消費地のデフレ圧力でコスト削減に迫われ、化学肥料の依存度が高まっていた。
高品質、安全指向、環境意識の高まりと、化学肥料の高騰で有機肥料との価格差が縮小し、風向きが変わった。有機肥料原料を製造しているN社は経済連、販売会社、農業法人等と連携し、自社原料をベースに費用対効果の優れた配合肥料を開発し、順調に販売量を伸ばしている。
N社関係者から、胡瓜で既に反収30トンを上げている女性農業人が現れたと言う話を聞いた。品種や栽培条件、管理技術にもよるが、通常15~20トンが一つの目処であるからこの数字は並はずれている。時間が取れなかったので本人とはお会いできなかったが、ご主人の後を継いでハウス面積15㌃で出荷量45トンは素晴らしい。普通、この量を出荷するには2倍近くのハウスが必要である。簡単に言えば彼女のkg当たりの収穫前生産コストは半額に近い。
細かい数字はともかく、デフレ時代を生き抜くには限られた面積で如何に生産量を上げるかが問われる。今まで、面積拡大主義が巾をきかせてきたが、資源高時代を迎えて単位面積あたりの収量向上が競争力強化の原点となる。
21日夕方、宮崎空港に着いた。迎えに来たMさんから昨日、宮崎県内で口蹄疫の感染が確認され畜産関係者が対策に躍起だという話を聞いた。口蹄疫は人間には感染しないが牛、豚、山羊などの家畜に強い感染力を持つ恐ろしい伝染病だ。発生が確認されると半径20km以内の畜体は移動禁止になるから、生産者は大打撃となる。過去に台湾などで大発生し、輸出禁止になって豚肉相場が高騰したことを思い出した。
夜、畜産残渣処理会社の関係者から南九州の畜産業の現状について話を聞いた。南九州の畜産(ブロイラー)は大手商社が参入し巨大化、輸入穀物消化産業と認識していたが、中小飼育農家も結構頑張っているようだ。輸入品に対抗して一時、和牛種、黒豚、地鶏など差別化がブームになったが、不況の影響もあって下火となり、果てしない価格競争に戻った様だ。
養鶏の大半が餌代として消え、粗利益5%前後という。仮に年1億円売り上げても手取り500万円、ここから一般管理費を引くと殆ど手元に残らず、経営は非常に厳しいという。餌(飼料)が高過ぎるのか、製品が安すぎるのかは解らないが、多分、両方であろう。
一方、札幌で採卵養鶏(1.5万羽)をしている若手Gさんの話では、鶏卵は店頭価格10玉入り150円が定着している(1玉15円)という。1玉の生産原価が最低でも8円位かかるから、容器代、物流費を引いたら生産者の手取り分は残らないと言う。彼は親父さんから引き継いだ時「養鶏はどんなに頑張っても儲からないから無理して続けなくてもいい・・・」と言われたらしい。しかし自分なりに挑戦して駄目だったら諦めようと思いスタートした。美味しくて安全な卵を産ませるため、餌やストレスのかからない環境整備など色々工夫した。自分の思いを直接消費者に伝えるため、直売に切り替えた。しかし、どんなに講釈を言ってもお客さんには卵は卵、販売価格に敏感なことを肌で感じた。今はお客が付いて売れ残る心配は無いが、当初、鮮度を売り物にしていたので売れ残りの処理法を考えていた。色々、研究して到達したのがスイーツ「プリン」。産みたての卵で作ったこだわりプリンは人気を呼び、今では会社のドル箱、主客逆転し、経営は順調の様だ。
この例は誰でもできる事ではないが、逆風が吹いていても、ヨットの様に帆の張り方(工夫)によっては前進できることを示唆している。諦めるのは簡単、わざわざ風に逆らって進むこともないが、成り行き上、進まねばならぬ場合もある。
飼料の殆どを輸入に頼る日本の畜産業は、円高傾向の現在も苦しい。多分、この状況は当分、改善しないかもしれない。こだわりで勝負してきた生産者も売れ行き不振に喘いでいる。しかし、Gさんの様に工夫して最終商品に仕上げ、ネット販売等で成功している例も少なくない。
フランス中部の穀倉地帯(画像参照)や西北部ボルドーの葡萄畑を眺めても、規模が違い過ぎて日本の参考になる点は限られる。学びたいのは彼らの「食に対するこだわり」と「作り手のプライド」である。特に大規模集約化から外れ、伝統的な食文化を脈々と受け継いでいる、小村や山間地域にそれがある。
大規模大量生産の穀物や甘味作物は日本がどんなに頑張っても国際競争には勝てない。日本一の穀倉地帯十勝でさえ経営面積は1/5程度、価格競争力はない。小麦の国際相場は1俵(60kg)1000円台、大豆は2000円台。小麦の収量は平均すれば良くても反当10俵、大豆は5俵と言われている。同じ土俵で相撲を取ると生産者は反収1万円台で戦わなければならない・・・
小麦の政府売り渡し価格は1俵3.900円位で例え全額生産者に支払っても反収3,9万円。輸入関税分に種々の名目で下駄を履かせ、何とか辻褄を合わせている。下駄がないと十勝でさえ経営できない。ちなみに平成19年度の農水省統計によれば、北海道小麦の生産経費は反当約6.2万円、1俵生産原価は7.300円かかっている。大豆も主食の米も事情は大同小異だ。
この現実から日本の穀物農業が如何に脆弱かあらためて理解できる。米国、豪州などの農業大国も国の補助金がなければ成り立たないとよく言われる。しかし、それらの国には資金を注ぎ込んでも国際競争に勝てる生産インフラがある。日本は残念ながら基本的に穀物では国際競争に参加できない。自由競争を前提とする企業ならば撤退しかない状況だ。
しかし、「食糧」となれば撤退も縮小も国の存亡に係わる。世界も日本も取り巻く環境が大きく変化している中で「自給率向上」錦の御旗を振りかざすだけでなく、冷静に将来像を描き、メリハリのある長期戦略を立てることが求められる。
EU統合は加盟国間協議で、競争力のある分野に企業を含めて統合し、地域分担で生産性を向上させ、米国一極支配に対抗した。いろいろ課題はあるが停滞していた経済が活力を取り戻し、リーマンショックまでは順調に成長してきた。ドイツやフランスなど主要国だけでなく、スペインや中欧、東欧周辺国に経済成長をもたらし、雇用を生み、需要が拡大、成長を享受した。
通貨、物流、人の往来に国境が取り払われ、高速道路、空港もEU間はフリーパスとなった。日本からの入出国手続きはEU圏内であれば1回で済む。細かい点はともかく、経済的には一つの国である。
今後はアジア経済圏統合が現実となるだろう。日本は貿易立国に拘わらず、常に農業問題が足枷となって自由貿易を躊躇し、国益を損なった面がある。莫大な農業予算を注ぎ込んで農業を守ってきたが、結果はご覧の通り衰退である。国力の源泉であった得意な分野も競争力低下が激しい。産業面で日本と競合している韓国は積極的にFTA(自由貿易協定)を結び、年10%もの成長率を達成した。既に日本を抜き去った産業もある。ヨーロッパ緒都市の看板や雑誌広告はアジア圏ではサムスン、現代など韓国企業が目立つのである。
農業をこれ以上保護しても最早、国の長期的メリットは無い。国力が落ちれば農も衰退する。
農民の高齢化と就農人口減少の現実を考えれば、競争力のある作物の選択と集中が必要である。競争力のない穀物は工夫しながらコツコツと生産性向上の道筋を作ればいい。無理しなくても既存インフラで生産性を少し上げれば需要減トレンドの中で自給率向上か、悪くても維持は可能であろう。ダム、干拓、農地造成、構造改善など農業インフラに使っていた予算を必要最小限度に減らし、将来性があり、競争力のある分野に投資すべきである。
最早、「自給率向上」にこだわって競争力のない低付加価値農業をしていたのでは競争力のある農業人は育たない。少数精鋭で急成長している国々をターゲットに高付加価値農業を考え、豊かな農を描かねばならない。
繰り返すが従来型の地域活性化と称して多額のインフラ予算を投じても「採算の合う作物がない・・・」のが現実である。広大な優良農地で耕作している生産者でさえ資材高騰の転嫁が難しく、経営が厳しくなっている。新興国需要増は一過性のものではなく、原油が上がり、化学肥料や他の資材もまた高騰する。このことを折り込んで将来を考えねばならない。今こそ、先を見据えて資材多投型・低付加価値農業から、多角的高付加価値を組み合わせた農業への転換が急がれる。
地域活性化=自給率向上=企業参入などの言葉は耳障りと格好が良い。しかし、現実は甘くない。
場当たり的補助金に飛びつき、公共事業削減で仕事の減った建設業者が農業に参入した。私の知る限りでは成功している例は少ない。長年培った技術と経験があってこそ競争力のある農産物が作れる。先ず、土壌や気候の特性を把握し、病害虫、価格変動、採算性など様々なリスクを乗り超えられる強靱な農業人を育てなければ未来は無い。いろいろな例をみているが「農業は難しい。その割に儲からない・・・」撤退者達が一様に口にする言葉である。
既存農家と同じ土俵で作ってみても、新しい技がなければ期待した利益は上げられない。パイが縮小している社会では共倒れの危険さえある。
普天間代替基地で話題になっている徳之島に十数年前に冬メロンを作ろうと訪ねたことがある。あちこちに放棄された新品同様の豪華な耐風ハウスがあり、これを借りて作ろうという目論見であった。その時既に徳之島は65歳以上が6割を超える全国有数の高齢化社会に入っていた。地元の方と意見交換したが、結果は農作業が出来る人は限られ、見通しが立たないので、即、断念した。
農地をはじめ設備過剰はこれから全国で加速する。費用をかけずに既存設備を有効利用することが)容易になる。問題は時代に対応できる強靱な農業人の育成にある。この方面に思い切って予算を注ぎ込めば、次の一手が見えてくる。このハードルがクリアー出来なければ、農業再生は絵に描いた餅だろう。
モノではなく先ず人作りが鉄則である。
将来の日本農業を考える時、自給率向上、つまり効率優先大規模農業ばかりに目を奪われていては道を誤る。
日本が生き残る道はアジア経済圏統合を前提とした戦略であり、それぞれの地域が得意な分野を受け持つ。既に企業はその方向に動いている。FTA(自由貿易協定)交渉の足枷だった農業は、従来の固定観念を捨て、新時代の枠組みを作れば宝の山となる。地域分担してそれぞれの気候風土に合った農業を住民みんなで考え、発信すればいい。「自活」である。
日本が「中の下」社会に移行する中で、中国、韓国、台湾、ベトナム、インドネシア・・・アジア経済圏では日本の高度成長期に起きた「中堅所得層急増現象」が期待できる。
台湾、中国では既に日本に勝る高額所得層が生まれ、高品質、安全な「日本製ブーム」が起き、海外旅行ブームも起きている。国交省も漸く、羽田のハブ空港推進に舵を切り、離着陸回数が増える。韓国や中国に奪われた海運もハブ港湾を整備し直す。沈滞していた国際交通、物流インフラは格段に改善されるだろう。
近頃、北海道~九州に至るまで駅構内案内板は英語、ハングル、簡体漢字(中国語)で表示され、都下にある我が町の駅案内板も先週、ハングル文字が併記された。
これらの身の回りの動きを見れば、もう日本ではなく、少なくとも「アジア」という枠組みを念頭に今後の展開を組み立て直す必要がある。
今後の日本の資源は最先端技術は当然として、「美しい四季」世界に誇る「和の文化」「安全な社会」であり「感動の美」「感動の食」「感動のおもてなし」の提案であろう。これらの資源は大規模、効率化から外れた地方に眠っている。「我々の農業」に何が出来るかを広い視野でもう一度、考えよう。
ヨーロッパ人は自分たちの文化を大切にする一方、国境を取り払って互いに生かしあい交流して、広角視野で人生を楽しんでいる。
高度情報化社会は「守り」「受け」ではなく情報発信「攻め」である。
フランスはEUの農業優等生というイメージがある。規模も生産量も国の支援策もずば抜けており、農業自体が国家戦略産業と言っても過言ではない。日本が実施を決めた「所得保障制度」の話が出るとフランスの事例が登場するが、伝統的に「農は国力のバロメーター」と認知されており、政権が変わってもこの認識は変わらない。国土は森林、牧草地が多いが、肥沃な土壌が多く、地域の気候風土に合わせて麦類、トウモロコシ、ビート、ぶどう等の作物が栽培されている。EU統合に際し、競争力強化に取り組み、地域作物の選択、集約化、規模拡大を推進、量産技術と卓越した品質へのこだわりが競争力を支えている。
日本にいてマスメディアの一方通行の情報から得られるのは、全体の一部でしかない。「百聞は一見にしかず」五感で感じて脳を活性化させ、奥に仕舞いこまれた情報や経験から新たな知恵が生まれる。