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これからのトレンド(10)社会変化と売り方 ③番外編

ダイヤ魚画像1.JPGどの業界も大資本が参入すると、底引き網を引いた漁場の様に、お客)をごっそり持って行かれる。資金力の限られる中小零細は、大手が参入できない分野や売り方を考えなければならない。

 

国内農業は完全自由化に移行すれば、安価な農産物が流入し、国内農業が更に衰退するという議論がある。しかし、国内で生産する農産物については農地の売買規制に守られて、他産業の様に国内外資本が参入する可能性は低い。参入してもハイリスク、ローリターンの実情では、投資メリットは無いだろう。外国人や企業が農業に参入?・・・というニュースも流れるが、農業で収益を上げる目的よりも自社原料の調達や別な思惑がある例が多い。自由経済下では何が起こるか予測できないが、流れが速いから常に社会変化に注意したい。

 

技術革新や社会変化で新規資本が参入し、深刻なダメージを受けた業界は数多い。その一つに寿司屋がある。

バブル全盛期の頃、当市(東京都東村山市)寿司商業組合に37店が加盟していた。現在残っているのは僅か7店(80%減)しかない。

原因は色々あるが、最も影響が大きかったのは回転寿司である。握りのロボット化でチェーン展開が容易になり、食材の大量安価仕入れが可能になった。寿司屋とは全く異なるビジネスモデルが誕生した。ファミレス、ハンバーガー、牛丼、ラーメン、軽食、珈琲-・・・あらゆる飲食業がチェーン化、株式上場し、資金を集めて更に成長した。一方、職人の手に頼っていた寿司屋は出遅れた。主食材である魚の安価、安定仕入れが難しく、繊細な日本人の味覚や食感のこだわりもあり、精々、暖簾分け程度のチェーン化しか進まなかった。

 

1990年代に寿司ロボットが普及し始めて様相は一変した。現在は回転寿司、宅配寿司、コンビニ、スーパー、デパートにまで寿司と名の付く商品がひしめき合っている。ある地方都市の老舗経営者は「うちは回転寿司とはネタが違う・・・味の分かる客はいずれ戻るさ」とタカをくくっていた。しかし、周辺に回転寿司が進出し、客が急減。値下げなどで対抗したが及ばず、次々閉店に追い込まれていった。鮮度勝負の商売は回転が止まると加速度的に客足が落ち、立て直しが難しい。私も寿司が好きで出張先で食べ歩いたが、凋落の早さは全国に共通していた。

 

技術革新、経営革新によって寿司単価が下がり、従来型寿司屋のビジネスモデルが通用しなくなってしまった。握り方やネタの講釈が通じる客が次第に減る中で、職人対握りロボットの勝敗は決まったも同然である。日本の自動車産業が一時、世界を席巻したのは、ロボット化による人件費削減、部品在庫を持たない合理的経営(カンバン方式)と言われている。寿司屋業界にも同じ革新が起こったのである。

 

単価が下がり、誰でも気軽に寿司を食べられる時代になって、マーケットは飛躍的に拡大した。その流れを受けて食材仕入れ等のコスト削減が加速した。まぐろ、鯛、ハマチ、カンパチなどの養殖や冷凍技術が格段に進歩し、調達先は海外に広がった。今まで寿司ネタに使わなかった魚や食材が登場し、アイディアを競う時代になった。

 

ロボット技術は日進月歩で、例えば海苔巻きロボットは、専用の長尺海苔ロールをセットすれば高速でロスなく巻き寿司が出来る。無洗米をそのまま自動炊飯器で炊き、調合された酢と合わせてシャリを作り、ロボットで成形、ネタを乗せ完成。ネタを切る職人1人いれば、特別な技術は不要、パートで充分という。シャリ米は基本食材だが、コストを念頭に、旨み、粘りなど各産地米の個性を生かしたブレンド技術が収益を支えているという話しもある。

ノウハウの蓄積とロボットの進化で握り加減も職人技に近づいている。数年前、パリのホテルラウンジでオードブルに握り寿司が出た。日本から送られた冷凍ロボット寿司を解凍したものだが、結構美味しかった。先週訪ねたパリ市内には寿司屋(和食屋)が増え、スーパーでは冷凍寿司が売られている。南フランスのモンペリエ市の飲食街に回転寿司があり、フランス人がベルトコンベアーの前に座り、寿司を楽しんでいた。技術革新や社会変化でモノや文化の伝搬速度は我々の認識を超えている・・・

 

回転寿司や宅配寿司に客を奪われた従来型寿司屋は生き残りをかけて様々な取り組みをしている。

寿司は日本人に馴染みが深く、中でも職人が握る寿司は贅沢なご馳走である。ロボットが限りなく進化しても握り寿司はモノと言うよりも文化であり、寿司屋が絶えることは無い。回転寿司は気軽に食べに行く大衆レストラン、寿司屋は多面的なサービスを提供する贅沢な空間」に変化している。客はカウンターに座り、職人がプライドを賭けて仕入れた旬の魚を目前に並べ、部位や調理法、ワサビの好みなど細かな注文に応じ、最高の味を演出する。手の届く範囲、約6人がサービスの限度と言われる対面販売である。天然魚は季節や天候によって価格が大きく変動するから、時価が普通だった。価格を聞くのは野暮、一般的にはお客と店の信頼関係で成り立っていた。

低成長経済が定着し、こだわりを持つ客が減り、価格優先客が増えている。寿司屋は手作りが基本、量産して価格を下げることはできない。モノやサービスの価値が分かる客に的を絞り込むことが大切。これは大量生産出来ない小規模農業にも共通している。

 

東京都東村山市にある「ダイヤ寿司」は創業40数年、カウンター6席、椅子6席、2階に会席用12席のこじんまりした店である。新青梅街道に面し、周囲に飲食店が立ち並んでいる訳でもなく、駅から乗降客が流れてくる立地でもない。まさしく「味」で勝負である。席数が少ないため景気の良かった頃は予約しないと座れなかった。周辺は住宅が多く、出前も繁盛していた。

ところが、2000年代に入り、周辺に回転寿司や宅配寿司が進出し、度重なる金融ショックによる景気後退、住民の高齢化など外部環境の変化も加わり、頻繁に通っていた常連客がポツリポツリと姿を消し、出前も減った。同業者が減り、一部は流れてくること期待したが、現実は甘くは無かった。客全体が雪崩が起きた様に新しいビジネスモデル、回転寿司や宅配寿司、他の安価な外食に向かってしまった。

しかし、こだわり客も残っているからここでこだわりを捨てるとお客は益々減り、長年築いてきた信用(財産)は回復困難になる。

店のスタッフはベテラン店長と二代目若手経営者Kさん、パート1人。この3人で如何に顧客満足度を高めリピーターを増やし、売り上げを伸ばすかの取り組みが始まった。

 

1.  価格の明示

以前の寿司屋は価格を表示しない店が大半だったが、客席から見やすい位置に表示した。これでお客は安心して注文できる。本日のおすすめ料理もメニューを作り、価格の透明化を図った。商売として当然だが、寿司屋は長年の習慣で勘定の透明化が遅れていた。

2.  ランチ

寿司屋のランチは一般化しているが、夜の売り上げ減をカバーするために始めた店が多い。夜の価格とのバランス、地域事情、内容など価格付けが難しい。

ちらし、炙り鉄火丼、穴子丼などもあるが、人気は握り寿司セット(税込み1.000円)。

■野菜サラダ

 新鮮な旬の野菜5種類をミックス、オリジナル和風味噌味仕立て。包丁手切りで美味しい。

■味噌椀

 魚のアラや海老の頭を天日干しにした出汁を地味噌仕立。群馬産野菜のけんちん汁の時もある。

■お新香

 胡瓜、カブ、茄子、ハヤトウリ(秋限定)など自家製糠漬け。

■握り寿司

 マグロ、鯛、鮃、スズキなど白身、海老、小鰭(こはだ)しめ鯖など青魚、穴子、いくら、卵焼き、芽ネギ・・・店長お任せで合計7貫。 鉄火巻き、カッパ巻き各1巻の豪華版。

■デザート

 珈琲付き

 

価格が安いランチは往々にして手抜きが多いが、味噌椀や野菜サラダにも職人魂が込められ評価は高い。土地柄、昼食1000円はきついが、ネットを見て来店する客も増えている。収益は?だが、夜の客寄せにつながっている様だ。持ち帰り巻き寿司や稲荷寿司もチャレンジしたが、1パック300円が限度。評判は良かったが忙しいだけで利益は上がらず中断。この分野はスーパーやコンビニの得意領域。味で頑張っても差別化が難しい。

 

3.  販促活動

顧客獲得のため、商店街(商工会)、食材メーカーなどとのイベント、スタンプ、マイ箸袋割引などきめ細かな販促活動をしている。日常的な人間関係が大切、努力は欠かせない。

 

4.  日本酒にこだわり、集客力向上

寿司を美味しく食べて頂くには美味しい日本酒が欠かせない。

金融ショック以降、客層に大きな変化が出た。不動産、土建、建築、商店主など主力だった接待関係の客が減り、最近はこだわりを求めて来店する個人客が増えている。コンピューター(IT)関係者が多く、地元だけではなく遠方の客もおり、ネットから情報を得て来店している。キーワード「おいしい日本酒」は戦力になる。

二代目Kさんは日本酒利き酒師、根っからの呑兵衛。各地の酒蔵から限定酒を手に入れ、リーズナブル価格で提供している。メジャーな酒も揃えてはいるが、「売り」はそこらでは呑めない「レアモノ」! お試し小グラス(100㍉㍑)から飲め、いろいろな種類が楽しめる。

 

蔵元の若旦那衆(後継者)が勉強のため試作した酒もある。仕込量が少ないから、運が良ければ呑める。採算無視で米を磨き、手間をかけて醸造している酒が多く、、杜氏の心意気が香りや旨みに伝わってくる。

私は発泡活性酒(にごり酒系)のファンで、開栓ガス抜きに30分もかかる元気モノに出会うこともある。地元酒蔵「金婚」の活性酒「あや」(季節限定)はお気に入りで勝手に「東村山のドンペリ」と呼んで愛飲している。生ビールは「上撰」、瓶は「ハートランド」、焼酎も各種用意され、「百年の孤独」もある。近頃、寿司屋でワインを置く店が増えているが、寿司に合うカルフォルニアワインを得意としている。

これだけ書けば呑兵衛達が集まってくるのも理解して頂けるだろう。中途半端なランクではなくオリジナルのこだわりレアモノを厳選し、値頃感のある価格で提供している。

「うちの店は寿司屋ではなく飲み屋になってしまった・・・」と店長は笑う。

 

5.  客層の変化で伝統の江戸前+創作料理

接待客が減り、身銭を切って本当に美味しい酒や料理を楽しみにくる個人、夫婦、家族連れが増え、以前の男性客中心から女性客が増えている。

女性客は健康指向で栄養バランス、特に野菜を気にする。イタリアンの定着で寿司一辺倒では女性客の支持を得られい。本来の寿司屋には野菜と言えば干瓢、胡瓜、端モノくらいしかない。メニューも精々海鮮サラダが一般的だ。しかし、水気が多い生野菜は寿司に合わない。和食で出てくる野菜は煮物、煮浸し、酢の物、和え物、天麩羅など火を通している。海鮮サラダは定番化しているからこの店にも勿論あるが、野菜料理のお奨めにタジン鍋がある。いわゆる野菜の蒸し煮。海老とギンヒカリ(群馬ブランドの鱒)が出汁として入る。水や調味料は一切使わず、土鍋で野菜(キャベツ、白菜、茸類、ズッキーニ、ネギ等)の水分を飛ばし本来の旨みを凝縮する。これをポン酢かお好みでオリーブオイル、塩、胡椒で頂く。刺身を使う寿司は温野菜が合う。生姜、お新香、端モノをつつけば野菜は十分取れ、栄耀バランス満点となる。

 

若い人向けにはカルフォルニアロール、アボガド巻き、牛刺、馬刺し握りなどがある。ただ、肉類の刺身は焼き肉店の食中毒事件以来、自粛している。

伝統の刺身がイタメシブームでカルパッチョになり、寿司飯を使ったソースドリアが登場し、お客の変化に合わせて二代目Kさんの創作料理が続々誕生している。お客の評価はかなり高い。

 

6.  究極の決め手はやはり魚!

時流に合わせてメニューの目先を変えても、お客は魚の質に回帰する。。

寿司屋はシャリと魚で勝負するのが本流である。この店の立地は郊外住宅地、庶民の街であるから自ずと単価に限界がある。都心の高級寿司屋の様に高価な食材は仕入れられない。

寿司屋のカンバン商品はマグロ。これを外すと評価が厳しくなる。ベテラン店長の吟味は厳しいが、自信を持って買い付けても、天然魚だから微妙なバラツキがでるという。だから、たまに?の時もある。他店では味わえない絶品の時もあるからマグロを食べるならこの店と決めている。マグロは本当に難しい・・・

鯛、鮃、鰤、カンパチ、鰯、イカ、蛸、穴子、しめ鯖、ウニ、赤貝、タイラガイ・・・旬の魚が並ぶ。特筆すべきは江戸前の流れを継ぐ調理品。タレ付き穴子、煮イカ、茹で蛸、コハダ、鯖などの締めモノ、鯛、鮃、鱸(スズキ)など昆布締め・・・納得の味が揃っている。

鰹食いには米屋に特注して取り寄せた稲藁で燻したタタキ!  いずれも職人の妥協を許さない逸品である。

 

魚は築地で仕入れたブランド品。調理にこだわりがあるとは言え、お金さえ払えば他の店で食べられる。

更に磨きをかけるため、二代目Kさんが探し当てた究極の魚は漁師直送品。新潟県村上市で底引き網漁船の漁師と懇意になり、網にかかった魚の画像を船上からスマートホンで送信してくれる。魚種は海底魚、クロソイ、クロムツ、コチ類、カサゴ、ホウボウ、メバル、アイナメ・・・など、庶民の口には滅多に入らない高級魚だ。これを発泡スチロール箱に入れ帰港したらクール宅配便で送ってくれる。市場も仲卸も経由しない漁場からの一気通貫。早朝網にかかった魚は翌日のネタに間に合う。活魚のいけす輸送を別にすればこれ以上の鮮度、贅沢は無い。締めて1日程度寝かせた方が味が乗る魚もあるから、最高の食べ頃となる。

送られてきた画像を見ながら魚種、形などにより料理を考え、「本日のおすすめ料理」としてメニューを作る。鮮度がいいため基本は刺身だが、魚によっては鍋、煮付け、焼き魚、昆布締め、酢味噌、なめろうなど最適な料理を決める。魚に精通している店長は、皮や肝などの部位を余すところ無く旨味を引き出し、お客を堪能させてくれる。

 

こう書くと随分高いだろうな・・・と思うかも知れない。

しかし、ここは庶民の街、いろいろ工夫してリーズナブル価格に抑えている。寿司は1貫単位で注文でき、料理も1品税込み840円が標準。このランクの店では口に出来ないおいしいお酒と魚が揃い、コストパフォーマンスは良い。ネットで本日のおすすめ料理を掲示しているので呑兵衛や食いしん坊の常連客が通ってくる。

魚は海が荒れると漁が出来ない。網を入れても獲れない事もある。残念ながらいつも旨い魚との出会いがあるとは限らない・・・

(ダイヤ寿司ホームページ)

http://homepage2.nifty.com/daiyazusi/

 

【結論】

ついつい長く書いてしまったが、小規模農家でも自分の持っている経営資源と知恵を生かせば、楽しい農業が出来る可能性はある。政策に大きく左右されやすい大規模農業を羨むことは全くない。自分のオリジナルを磨く事を心掛けたい。

 

 

 

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